ep.9 最初の一歩
序章
「魔法?」
聴きなれない言葉にワクウスは驚きを隠せない。
カミラはキョトンとした顔でワクウスを見ている。
不思議なものでも見るような顔だった。
「まさか魔法まで忘れているとは思いもしなかったわ。こりゃ大変じゃな」
カミラの言い分から察するにとても大事なことなのだろう。
「ハッハッハッ、まあよい知らずとも生きていける。」
「言いぐさから察するにとても大事なことなのではないか」
「大事じゃが無理に思い出す必要はない。きっと必要になれば思い出す運命じゃよ。」
特にお前はな、とカミラが真剣な表情で言うのを聞いてワクウスは追及をやめた。
カミラの言うように必要になればその時に知ればいい、とにかく今は現状で精いっぱいだった。
ワクウスの心配を察したのかカミラから問いかけがあった。
「さて、お前の今後を考えなければいかんな。ワクウス、お前はどうしたいんじゃ。」
今後のことはまだ何も考えていなかった。ただこの里にいるよりも外の世界を知りたいと思った。
目が覚めてから暗闇で過ごし、ようやく外の世界に出られたときは感情が高ぶった。
本当は今すぐに自分を知ることが大切なのかもしれない、がやはり外への好奇心は捨てがたかった。
しばらくの沈黙の後、まっすぐな瞳でワクウスはカミラと視線を合わせた。
「まだ目標も何もない。けど外の世界をもっと知りたい。曖昧な回答ですまない。」
「外の世界とはまた曖昧な。しかしいいんじゃないか。得られるものも多かろう。」
てっきり反対されると思いいていたワクウスはなんだか拍子抜けだった。
「ただあれじゃの。お前は世界のことを何も覚えてないんじゃろ。最初の行き先くらいは決める必要があるな。」
どこがいいかの~と考えるカミラはどこか楽しげだった。
「よし、最初だけはわしに行き先を決めさせてもらうがよいか?」
特に知識もないのでワクウスに断る選択肢はなかった。
「問題ない。というかむしろありがたい。」
間髪入れずにカミラは話す。
「そうかそうか!なら今は体を休めんとな。旅には体力が必要だからな。準備はわしに任せてくれ。」
それからとんとん拍子で話が進み、旅の出発は一週間後に決まった。
出発までは里の手伝いがてら里の営みを学ぶ時間になった。
一週間のうちに里の人やカミラと話す機会は増えたが、リピは姿を見せなかった。
マイペースですが濃い内容にできるように頑張ります。
以前までの話もすきを見て修正していきます。