ep.6 祈禱所と老人
序章
「リピといったか。教えてほしいんだが、なんで君以外は俺のことをわからなかったんだ?」
少女は口早に言った。
「気にしないで。あなたはあなただから。そんなことよりもうすぐ祈禱所につくよ。」
「そうか。やっとおじいちゃんに会えるんだな。」
「うん。詳しいことはおじいちゃんに聞けばわかるから心配しないで。」
やはりおじいちゃんは俺について知っていることがあるらしい。
記憶喪失の原因など見当もつかない。目覚めたばかりなのだから当然である。
早くおじいちゃんに会いたいが、少女に歩幅を合わせる。
目の前に大きな建物が見えてきたときに少女の足が止まった。
「ここが祈祷所。さあ、中に入って。」
案内をもらい中に入る。なんだか身が引き締まるような雰囲気がある。陽の光が差し込むせいだろうか、どことなく荘厳さの中に温もりがあった。
中には大きな像が中央奥に座していた。女の像だろうか。所々欠けている判別できない。
その他にはおそらく礼拝用の椅子だろうか、綺麗に規則正しく並んでいる。
よく見ると像の前で屈んでいる人物がいる。
「あれがおじいちゃんか?」
「そうよ。でも祈りの最中だから静かにして。」
お叱りを受けてしまったが、おじいちゃんで間違いなさそうだ。
幾何の時が経った後、像の前で人が立った。
腰の曲がった老人はこちらを向き直して声を出した。
「ようやく目が覚めたか。ワクウス。」
老人の纏う雰囲気は祈祷所とは対照的に冷めていた。