ep.4 知らない言葉
序章
「ワクウス?」
何のことかわからなかった。
俺の名前なのだろうか。
「どうしたの?」
一度確認してみることにした。
「すまない、それは俺の名前か?」
「ええー!!もしかして名前忘れちゃったの!?それじゃあ私のことも覚えてないの!?」
間髪入れずに発された少女の高い声が木霊する。
「ああーもう最悪!早くおじいちゃんに相談しないと!いくよ!」
「待ってくれ、何か知ってるなら教えてくれ。俺は誰なんだ。」
「ワクウスはワクウスなの!もう詳しくはおじいちゃんに聞いて!」
どうやらおじいちゃんという人物に確認するしかないようだ。
少女との問答をあきらめてついていくことにした。
足を踏み出す直前、ふと後ろを振り返ってみる。
そこには変わらず先の見えない暗い洞窟がある。
今にも吸い込まれてしまいそうな暗闇を纏うその洞窟は俺の目が覚めた場所だ。
記憶がなくなっていることに関係しているような気がしてならないが、
調べる手段は何もなかった。
おじいちゃんとやらに会えば、記憶のことも洞窟のこともわかるかもしれない。
そんなことを考えていると、
「急いで-!」
高い声が後ろから聞こえて我に返る。
今は洞窟のことを考えても仕方がない。
俺は極彩色の世界へと体を向き直し、少女に向かって走り出した。