特別任務
特別任務に関わるクルーは、大きなプロジェクトになるため三つのグループに分けられた
艦船にて計画を立て指示するグループ
テラと同じ太陽系の金星と、衛星の月から支援するグループ
そして、直接テラで動く地上グループ
アルは希望通り、地上グループに配属された
艦船のグループにはターガも入っている
全てのグループの連携がプロジェクト成功の鍵だ
ここまで大きな任務は、アルにとって初めての試みだった
金星と月から支援するグループとテラの地上グループは艦船から出発した
中型の宇宙船で、金星近くのポータルへと高次元で移動する
高次元移動はテラのような低次元の星からは観測できないので、連合の宇宙船が目立つことなく動ける
金星のポータル付近で駐留して、計画の準備を整える手はずだ
ヴォーグ星人は人型宇宙人なので、地上グループのクルーもヒューマノイド(人型)が中心だ
人型のリンユーも、参加していた
あとは、アルのようにエネルギー体のカークトゥ星人
地上グループは、連合のクルーであることは隠し、ヴォーグ星人の住むネリシアという国に潜入する
金星から月のポータルへは、民間人に紛れて移動する
今や月は、テラへ行く宇宙人が行き交う拠点となっていた
移動送迎用宇宙船や宇宙携帯必需品の店、テラの土産物屋まであった
アルが初任務で来た頃は何も無かったテラ周辺は、様変わりしていた
それぞれ準備が出来た者から、ネリシア入りをする
アルは、金星付近で駐留する宇宙船で待機していた
カークトゥ星人特有の方法で、ヴォーグ星人の内部に入り込むためだ
かろうじて戦争は勃発していなかったが、小競り合いや拉致などでヴォーグ星人が亡くなる事件が相次いでいた
その被害者になり代わり、潜入する作戦だ
エネルギー体のカークトゥ星人は、危篤状態の身体に乗り移り、その人の記憶をそのまま受け継ぎ、その人になることができる
つまり、その人に代わって生き返ることができるのである
実際には何が起こるのかというと、被害者は九死に一生を得て、死ななかったという認識になる
危篤状態から息を吹き返したと周りは思い込み、命が助かったという事実になる
アルと数人のカークトゥ星人は、ヴォーグ星人としてネリシアへ行く
しばらくして、アルはローサというヴォーグ星人になり、ネリシアへ向かった
ヴォーグ星人は美しい見た目をしていて、陽気で平和を愛する宇宙人だ
楽観的で見た目通り美を好み、集まって楽しく盛り上がるパーティーピープル
ローサ(アル)は、美しく能力もある
ヴォーグ星人はテレパシーの能力があり、人の心を読むことができたり、自分の心を悟られないようにすることもできた
他にも癒しの能力やチャネリングなどの力を持っていた
そして、それが狙われる理由だった
ネリシアの隣国、カドラータに住むベネグ星人は何より力を欲した
権力を手にして、何事も思い通りにしたがり、ベネグ星人は他の星人より優れていることを誇示して優位に立ちたがる
そのために、ヴォーグ星人の能力を利用してのし上がろうとしていた
手段を選ばず、狡猾で、利用できるものは何でも利用する
派手好きで美しいものも好きだが、美しさよりもその利用価値に魅力を感じるような星人だ
まるで美しい花に群がる害虫
ローサの記憶を辿り、アルは気分が悪くなった
無いものねだり
自分に無いものを欲しがる
社交的なヴォーグ星人に近づいて、上手く利用する
そのうちにコントロールして支配してくる
本性を見抜かれて、離れようとするヴォーグ星人を無理矢理拉致する
あげくの果てに、命まで奪われたローサ
美しさも能力も無い方が幸せだと、ローサになったアルは思った
月へと移動して、テラ行きの宇宙船出発までブラブラと店を見て歩いた
ローサはギョッとした
リザギアンがいる
怪しげな土産物店で恐竜の剥製、牙や角を売っている
ライラ星で見た凶暴な感じはすっかり無く卑しげな爬虫類型宇宙人という印象を受けた
しかし、どう見てもレプリカではなく本物の恐竜である
これは、伏線回収かもしれない、とローサは思った
「Hi!私恐竜にはちょっと詳しいのだけど、これ本物よね」
ローサが話しかけると、店主はジロジロとローサを見て答えた
「見る目があるねぇ、その辺じゃ手に入らない代物ばかりだよ(カモがきた)」
心の声が筒抜けだ
「どこから仕入れてるの?まとめて購入はできる?」
「先祖の残したお宝でね、お望みならまだたくさん家に眠ってるよ(無許可で狩猟した恐竜だけどな)」
「Wow!是非見たいわ、テラへ行った帰りにまた寄るわ」
恐竜が生きた時代のテラへは、連合の許可無く行くことはできない
アルのテラでの初任務で起きたハプニングの原因と関連がありそうだ
ローサは連合へと連絡して、リザギアンの店を通報しておいた