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第六話 ヘルプ!

 ヒイロは涙をたたえながら、右手をゴブクラの方へと伸ばす。

 それに応える様に、ゴブクラはヒイロの手中へと納まった。

「オレはこの世界に選ばれたんだ! そんなオレが、お前なんかに負けるもんか。セーラも他の子も、みんなオレが助けんだよぉ!」

 子どもがグズる様に涙を流し、手に持つゴブクラで必死に何度も打ちつける。

 しかしその攻撃はまるで効いておらず、ゴブリンロードは笑いを浮かべる。

「フッ、泣くなよ……。まるでワシが弱い者イジメしているみたいではないか。まぁ、事実そうなんだがな。ワッハッハッハッハ──。!?」

 ゴブリンロードは足元で起きている異変に気づき、ヒイロを掴んだまま後退する。

「何だ、コレは……」

 先ほどまで、ヒイロを押さえつける様に群れていたゴブリン達の他に、同じ形をした黒い影で出来たゴブリンが、複数体存在していた。

 そして、その黒い影ゴブリンたちが他のゴブリンを襲い、混乱しているのか仲間同士でも傷付け合っている。

「離せっ! このっ、このっ! お前はオレが、絶対にブッ殺してやる!」

 その間もヒイロは、馬鹿の一つ覚えの様にゴブリンロードを殴り続ける。

「えぇい、鬱陶しいわ!」

 ダメージが無いとはいえ、いつまでも執拗に殴打してくるヒイロが煩わしくなり、思わず放り投げてしまうゴブリンロード。

 しかし、そこで改めて自身の失態に気づく。

 先ほどまで増え続けていた影ゴブリンが、ヒイロを放り投げた途端、増殖をやめたのだ。

「チッ、なるほど。あのガキが持つゴブリンの腕。理屈は分からんが、どうやらアレが黒いゴブリンを増やしている様だな……」

「ならばアレを──」

 言うと同時に踏み込み、瞬時にヒイロの方へと駆け寄った。

 対してヒイロは、未だ何が起こっているのか理解しておらず、すぐさま捕まりゴブクラを奪われてしまう。

「フンッ! コレさえ奪ってしまえば、もう何も出来まい」

「ぐっ、何言ってんだ……。そんなモン無くたって、お前をブッ殺すくらい余裕だ。このッ、このッ!」

 そう言いながら、今度は素手で殴り始める。

「フハハハハハ! 本当に哀れだなぁ、人間よ。まさか、自分で使いながらコレの力に気づいていないというのか?」

「力、だと……」

 ゴブリンロードは心底見下す様な態度で、退屈そうに口を開いた。

「一瞬でも後退した自分が情けないわ。いいだろう、貴様のようなマヌケにも分かるように説明してやる」

「お前の持つコレが、この腕があのゴブリンの影を生んでいたのだ!」

 ヒイロは指し示された方へと視線を向け、争うゴブリンたちを見て呟く。

「……何だ、アレ」

「何ぃ? ゴブリンの影にさえ、気づいておらんとは……。もうよい、説明するのも面倒だ。このままお前の頭を潰し、殺してやる」

 影ゴブリン達は、数を上回るゴブリン達によりその数を徐々に減らしていた。

 それをチラッと横目で確認すると、ゴブリンロードは徐々に手に力を入れ始める。

「あっ、あぁ……。ぐ、がぁぁ!!」

 ヒイロは何とかしてこの状況から逃れようと、自分の頭を掴み、今にも握り潰そうとしている手に攻撃を加える。

 それをゴブリンロードは、またもニヤニヤと下衆な笑みを浮かべ眺めている。

「ざまぁみろ! だから言ったろ、ココがお前らの墓場だってなぁ!」

 ゴブリンロードは左手に持つゴブクラが一人でに喋り始めた事に驚き、思わず右手の力を緩めてしまう。

「何だ? まさかコレが喋ったというのか? いや、そんな事より今の声……。ワシが追放したあのゴミ虫か?」

「お、お久しぶりですマイロード。コイツを殺した後でいいので、どうか助けちゃくれませんか? 私はこの棍棒に、どういう訳か封じられてしまったんです!」

 その言葉を聞いたゴブリンロードは、手の力を緩めるどころか、ヒイロを手放し怒りの矛先を棍棒へと向けた。

「ふざけるな! ワシの肉壺を勝手に使ったゴミクズめ。貴様をココから引きづり出して、八つ裂きにしてくれるわ!」

 そう言い終わると同時に、ゴブクラを力任せに床へと叩きつけ始める。

「ぁ痛っ! ひぐっ、あがっ! マイロード……。どうか、どうかお許しをっ!」

 それでも怒りが収まらないのか、尚も床へと叩きつける。

 しかし力一杯振り回しても、折れるどころか傷一つつかない棍棒を見て、諦める様にヒイロの方へと投げ捨てる。

「おい、人間。その腕に封じたゴブリンを解放しろ。そうすればお前の命は助けてやる」

 ヒイロの頭に未だ走る激痛が、考える事を拒絶する。

 そんなヒイロの事などお構いなしに、ゴブリンロードは頭を踏みつけ命令する。

「さっさとしねぇか、このグズがぁ!」

 ヒイロは何とか手を伸ばし、ゴブクラを手にする。

「……セーラ」

「セーラ? あぁ、あのメスの事か。アレはダメだ、まだ使うからな」

「フッ……。しかしまぁ、飽きて使い物にならなくなったらお前にくれてやる。その時には穴がいくつに増えてるか分からんがな。クックック……」

 ヒイロはゴブクラを抱え込み、力を振り絞る様にして声を出す。

「死ねよ、バーカ」

「お、お前──」

 ゴブクラでさえ恐怖を抱いたその瞬間、ゴブリンロードはヒイロの頭を潰す勢いで踏み付けた。

 ヒイロだけではなく、周りの地面を巻き込んで辺り一体が沈み込む。

 砂塵がゴブリンロードの視界を塞ぎ、ヒイロの死を確信して足を退かそうとしたその瞬間──。

「!?」

 逆に自分が壁の方へと吹き飛ばされてしまった。

「大丈夫ですか、旦那様……」

 何者かがヒイロを抱き抱え、離れた場所で仰向けに寝かせる。

「う、うぅ…………」

 ヒイロは朦朧とする意識の中、彼女の後ろ姿をぼんやりとだが捉えた。

 露出した甲冑から見える緑色の肌、盾を取る手には鋭い爪。

 そしてこちらを振り返り、鋭利な牙を覗かせてニコッと笑いかけてくる。

「そこで横になっていて下さい。すぐに終わらせますから──」

 彼女は大きな盾から剣を取り出し、ゴブリンロードへと構えを取る。

「さぁ、立ちなさい。この、グィグ・ナヴァが相手です!」

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