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第四話 勇気

 ゴブリンはセーラを押し倒し、服を剥がして犯そうとしている。

「(やらなきゃ、ヤられるっ!)」

 ヒイロは勢いよく立ち上がり、ゴブリンへと右手をかざす。

 魔力が集まっているのか、その手には光が集まり熱を帯び始めていた。

「今こそ力を示す時。醜い小鬼を焼き尽くせ、フレイムバーンッ!」

 その大きな声に気を取られゴブリンもこちらを一瞥するが、何も起きないのを確認し再度犯し始める。

「クソっ、何も起きねぇじゃねぇか!」

「嫌ぁぁぁ!」

 ゴブリンの薄汚れた手が、セーラの四肢を撫で回す。

 その感触が今から犯されるのだという事実を裏付け、恐怖し、セーラは泣き叫ぶ事しか出来なかった。

「て、てんめぇー!」

 震える足を抑えつけ、大振りで拳をゴブリンにぶつける。

 その怒りの鉄拳は無防備で体重の軽いゴブリンを押し退けるには充分だった。

「グギャっ!」

「やったか?」

 ゴブリンはすぐさま起き上がり、腰布の中から小さい棒を取り出した。(下ネタではない)

「フッ!」

 ゴブリンが握る小さな棒を見つめ、さっきまで犯されそうになっていたセーラが鼻で笑う。

「グ、グギャァ!」

 笑われた事に腹を立てたのか、ゴブリンが再びセーラ目掛けて飛びかかる。

 握っている棒は、先ほどよりも何故か小さくしぼんでいる様だ。(マジで下ネタとかではない)

 しかしそんなゴブリンの前に、ヒイロが立ちはだかる。

「させるかぁ!」

 言うや否や、ヒイロはゴブリンの頭を「パチーンッ!」と叩いて応戦する。

 ゴブリンの頭を叩いた瞬間、、手のひらが爆発する様に光り輝く。

 後にこの現象は、ビッグバンと呼ばれた。

 ワオ、ファンタスティックベイビー……。

 はたき落とされたゴブリンの体は、蜃気楼の様にあやふやな存在となり、最後には小さな棍棒へと姿を変えた。

「な、なんだ? 何が起こった?」

「何コレ、どういう事?」

 突如、棍棒へと姿を変えたゴブリンに二人は驚きを隠せない様子で、代わりに現れた棍棒を凝視している。

 すると突然、その棍棒がガタガタと動きながらひとりでに喋り始めた。

「クソクソクソクソーっ! なんだ、この変な姿はぁー! 呪いでもかけやがったのかぁ!?」

「「しゃ、喋った!?」」

 次から次へと事態が急変する中、ヒイロとセーラの声が重なる。

 ゴブリンである時には喋れなかったはずのソ《・》レ《・》は、どうやら棍棒へと姿を変えた途端に喋れる様になったらしい。

「おいテメェ、人間の女! オレの×××を笑いやがったな。絶対ぇ許さねぇぞ、ヤらせろ、ヤらせろ、ヤらせろぉー!」

「はぁ……。どうなってんだよ、一体」

 尚もガタガタと動きながら喋る棍棒に、気が抜けた様に腰を下ろし、ため息をつくヒイロ。

 そんなヒイロに顔を背け、破けた衣服で身を守る様にしながら、セーラは消え入る様な小さな声で感謝を述べる。

「あ、ありがと……」

 しかしその言葉は、喚き続けるゴブリンの声によってかき消された。

「オレの×××を喰らえーっ! 二度と立ち上がれないようにしてやるっつーの!!」

「は? おい、今何か言った?」

「アイツ、マジでうるさいんだけど」



──────────



 ヒイロが持つ強大な魔力、それはどうやら魔物を武器に変えれる力の様だった。

 実際にそうだと確定したわけではないのだが、現状そう考えるのが妥当だろう。

 その当事者であるヒイロはというと、喚き続ける棍棒となったゴブリンを黙らせるため、ブンブン振り回しながらさらに森の奥へと入っていく。

 どうやら、このゴブリンは群れから追い出されたはぐれ者らしく、洞窟にはロードと呼ばれる親玉が巣を作り、村から女を攫って来ては種付けしているらしい。

「ぐぇ、おぇ、うぷっ。やめ、オレを振り回すな。目が回オエェェェェ!!」

「やめろよ、汚ねぇなぁ……。まぁでも、棍棒からゲロは出てないみたいだから良いか」

「良いわけあるかぁー!」

 この棍棒はゴブリンの腕を模した形となっており、手首の部分を持ち手にして、二の腕部分で殴る形となっている。

 その為、はたからはゴブリンの腕をいで、それを振り回している異常者にしか見えない。

「それで、結局アンタの居た住処すみかってのはどこなの?」

 ゴブリンに襲われ、服をズタズタにされたセーラは今、ヒイロが着ていたスウェットを着ている。

 ヒイロがセーラを気遣って渡したのではなく、彼女自身が奪い取った戦利品である。

 その為ヒイロは、現在上裸で森の中を歩いていた。

「あっ、ヤらせろぉ! ヤらせろぉ!!」

 思い出したかの様に、同じ言葉を繰り返しわめくゴブリンクラブ。(以下、ゴブクラ)

「結構深いとこまで来てると思うんだけどなぁ……。はぁ〜あ、なんか眠くなってきたな」

 ゴブリンの腕を振り回しながらあくびをする異常者の背中に、セーラは蹴りを入れる。

「痛っ!」

「早く終わらせないと、いつまでも帰れないでしょ!」

「帰れないでしょ、って……。お前、アイツらのトコに帰りたいのかよ?」

 ヒイロには一つ、気がかりがあった。

 それはセーラがキケル達の言いなりになっている事に対してだ。

 十代の少女とは言え、平気で服を剥ぎ取るハンター気質な彼女が、なぜ彼らに従っているのか──。

 それが分からなかった。

「なぁ、なんでお前はアイツらの言いなりになってんだよ?」

「アンタには関係ない!」

 この通り、何度聞いても教えてはくれない。

 「何か事情があるんだろう」とは思うものの、それが何なのかは見当もつかない。

 やっぱり、お腹が空いてるのかな?

「着いたぞ、バカ共! ココがお前らの墓場だぁ!」

 シリアスムードで会話をしている時、ピタッと騒ぐのを止めるこのゴブクラは、案外マトモなのかもしれない。

「しかし耐えられるかな? 女が輪姦まわされ、ヒィヒィ言いながらオモチャにされてる姿にさぁ。お前も思わず勃起しちゃうんじゃねぇかぁ!?」

 訂正、コイツはクズでした。

「いでっ!」

 ヒイロはゴブクラを壁に叩きつけ、セーラへと視線を移す。

「なんなら、ココで待ってるか?」

「いい。ココに一人でいる方が危険だし」

「……そう、だな」

  二人は神妙な面持ちで、洞窟内部へと足を踏み入れる。

 ヒイロは自分にあると言われた強大な魔力を信じて、セーラは人としての尊厳を失う事を覚悟して──。

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