第8話 初めての実戦 覚醒! 『神聖スキル:麦踏』
『麦踏』が、発動しました。……経験値を獲得しました。
「ぺぷしぃっ!」
ニックの、転倒し顔を打った際の悲鳴は、「ぺぷしぃっ!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某炭酸飲料とも無関係に相違ない。
「痛た……一体、何事……ぉぉぉぉぉぉぉぉっ! デキトーさん! 喉に矢が!」
そこにいたのは、身体のちこちに、矢が深々とめりこんだ状態で、倒れたデキトーだった。
『麦踏』が、発動しました。……経験値を獲得しました。2レベルに上昇しました。
「うひゃぁっ!」
矢が飛んできたので、咄嗟に伏せると、そこに落ちていた長剣の上に手を置いたニック。
『麦踏』が、発動しました。……『長剣』を獲得しました。
「おっ……ガキが、いやがった。とりま、ありガネだして、もらうか。シタイからな。」
そこに、やって来たのは、馬に乗り、右手に矢をつがえたボウガンを持つ男だった。
そして、ボウガンから放たれる矢。場所は、長剣を持ち、膝立ちになったニックの喉だ。
『麦踏』が、発動しました。……『長剣』のレベルが、上昇しました。
「なっ! なんだとぉっ! このガキ、長剣を喉の前に構えて、矢を受けやがった! ちっ!」
等と言いながらも、急いで次弾装填する馬上の男だった。
「おひおひ……そりゃ、デキトーを殺した犯人が、コイツだから同じ個所を狙うって事か。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
その隙を逃さず、馬上の男の左側に回り込み、男の脇腹に長剣を深々と突き刺したニック。
「げびゅっ……。」
些か間抜けな断末魔の悲鳴を上げると、馬の右側に落馬した男……の死体だった。
死因は、落馬による脛骨骨折だ。
お陰で、刺さった長剣も抜けてくれた。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……うぅぅっ……うぅげぇぇぇぇぇぇ……。」
ひざまづき、その場で、胃に納めた朝食を、胃酸と共に地面へぶちまるニックだった。
『麦踏』が、発動しました。……『恐怖耐性』を獲得しました。
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……。」
口元を、ハンカチで拭い、何とか呼吸を整えるニック。そこに、デキトーの愛馬がいた。
「そっか、ご主人様の死を悼みに来たのか。よしよし……。」
そう言って、デキトーの愛馬を撫でてやるニック。すると……
「うわぁっ! 棹立ち! 落ち着いて! 落ち着いて!」
咄嗟に、馬の手綱を取るニック。
『麦踏』が、発動しました。……『騎乗』を獲得しました。
「ふぃ……っ……良かった。落ち着いてくれて。えっ? あれれ。どうしたの?」
ニックの顔に、自らの顔を押し当てるデキトーの愛馬。
返礼に、よしよしと、デキトーの愛馬の顔を撫でてやるニックだった。
「そっか、よしよし……お前、ご主人様の仇を討ちたいんだね。」
暫し、デキトーの愛馬の顔を撫でつつ、決意を固めるニックだった。
「僕も同じさ。デキトーさんの仇を討ちに行こう!」
一声、嘶くデキトーの愛馬。どうやら、同意したらしい。
「すみません、デキトーさん。武器と馬を頂戴します。」
デキトーの亡骸に、一言断わりを入れるニック。
ひらりと、乗馬するニック。乗馬の基本が、できている動きだ。
「ハイヨー! ビーミー!」
右手に長剣、左手に手綱を持ち、デキトーの愛馬……ビーミーを駆り、恐らく馬車を襲っているであろう賊本体へ向かうニック。それは、『恐怖』や『迷い』が、消え去った貌だった。
* * *
次回予告
第9話 初めての『強硬威力偵察部隊』
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