第6話 初めての追放 その2
ようやく、話しは現在に戻る。
「この一か月の訓練と、冒険に『荷物持ち』として参加する事で、『兵士』になったお前だ。で、どんなスキルを獲得した。ニック。」
「……うっ……うん、『棍棒』『小盾』『革鎧』『投石器』だよ。」アニキ。」
「レベルは、全て『1』だ。間違いないな。ニック。」
「……うん、アニキ。で、どうなのさ。その……『固有スキル』の方は。」
「いいか、お前の『固有スキル』は、『収納』だ。ニック。」
「え? 『収納』? 一体何なのさ。アニキ。」
「効果は、『装備可能重量を2倍にする。』以上だ。こんなもの、クソの役にも立たねぇ。残念ながらお前には、適性が無い。今すぐ、パーティーから出て行け。ニック。」
「そっ……そんな! そうだ! 『装備可能重量2倍。』なら、もっと役に立つさ。アニキ。」
「馬鹿かお前。そんなものアイテムで、何とでもなる。要は足手まといなんだよ。ニック。」
「そんなぁぁぁ……。」
この後、ケヴィンが呼び出した褐色肌のメイド服に追い出され、荷物をまとめるニック。
* * *
「まあ、あんまり気にしなさんな。……って、言っても無理かぁ。ま、道中気を付けるんだぞ。最近、新手のスリが、出るって噂になってるからな。」
「……はひ……にもつをまとめるの、てつだってくれて、アリゴトウゴザイマシタ。」
最後の挨拶をして旅立つニック。目指すは、駅馬車の発着場だ。そして……
「あれ、こんなトコロで、ダイドーゲーニンか。エキバシャが、シュッパツするまで、ヒマツブシに、チョードいいか。」
何処となく生気の無い貌で、人の環の最後尾について、ぼんやり眺めるニック。
「あれ、いつの間にか終わっちゃったのか。楽しい時間は、あっという間……早く行かなきゃ。」
慌てて目当ての駅馬車へ、急ぐニック。何とか間に合い、目的地に向かう馬車に乗り込む。
「お客さん、運賃は前払いです。よろしくお願いします。」
左手を突き出す御者。財布を探すニック。ややあって……
「無い……財布が無い……どうして……何時……何処で……まさか! 大道芸人!」
「お客さぁん、冷やかしなら、降りてくれない。出発が、遅れるんでね。」
こうして、来た道をとぼとぼと帰る羽目になったのは、涙ぐむニックだった。
* * *
「アニキぃ……財布スラれたぁ……。あうぅぅ……助けてぇ……アニキぃ……。」
結局、ケヴィンに、泣きつくしかできないニックだった。
「あれから、来た道をしらみつぶしに、探したけど落ちて無かったんだ。きっと、大道芸人を見てる時だよ。観客の誰かが、スリだったんだ。アニキぃ……助けてぇ……。」
「知っているつもりだったが、お前の馬鹿は、筋金入りだな。ニック。
そうは言ってもなぁ……先月、お前の訓練に付きっきりだったせいで、パーティーメンバーから、『甘やかし過ぎ』だって、突き上げ喰らってんだよ。うーん……。」
暫し、考え込むケヴィンだった。ややあって……
「そうだ。お前の装備だよ。お前が、買った武器と防具を、俺が下取りしてやるよ。ニック。」
「え! そっ、それは、親父から貰った大事な金で、買った物なんだよ。アニキ。」
「違うだろ、それでも金が足りなくて、俺が貸してやった。で、荷物運びの給料で、ようやく返したもんだ。それもこれも、訓練の為だ。それも『甘やかし過ぎ』の原因だよ。ニック。」
「うぅぅ……分かったよぉ……アニキ。」
「今日は、駅馬車の便がもう無い。今日は、いつも通りここで泊まって明日出発しな。ニック。」
* * *
次回予告
第7話 初めての帰郷
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