第35話 初めての毒
「怒雄雄ぉっ!」
『濃霧』から飛び出して来た奴を、戦斧で叩っ斬るラージャー。
倒れ伏す『樹木型魔物』。当然、『戦闘不能』になった。
「死ぃっ!」
左右の手に装備した双剣を、振るうディジー。倒れ伏し、動かなくなる『樹木型魔物』。
当然、『戦闘不能』だ。
「射ぁっ!」
矢を叩き込むルプレ。風穴を開け倒れ伏す『樹木型魔物』。奴は、『戦闘不能』になった。
「Trew! Trew! Trew! Trew! Trew! Trew!」
襲い掛かる『樹木型魔物』共。狙いは、ニックだ。
『麦踏』が、発動しました。……『回避』のレベルが、上昇しました。
以下同文多数。
「くぅっ! おっ! とぉっ! はぁっ! えぇっ! ほぉっ!」
ひたすら、敵『樹木型魔物』の攻撃を、回避し続けるニック。
「視える! 避け筋は、視えた。が、避けてばかりじゃ、敵の数が減らない。何とかしないと。救いが、あるとすれば、後の3人が、順調に倒してくれている事くらいか……。」
「ちぃっ! きりが、ねぇっ! こうなったら、これでも喰らえっ! 『奥義:怒剛力』!」
「『奥義:怒剛力』の結果を説明しよう! 『奥義:怒剛力』とは!
『職業:蛮族』の『能力』だ。使用者の筋力を増強すると共に、最大で、使用者のレベル匹までの敵へ、攻撃可能になる。制限時間は、この戦闘中だ。以上である。」
「凄い……10匹の『樹木型魔物』を、一撃で瞬殺とは……流石、『蛮族』……。」
ここで、波が引く様に、包囲網を後退させる『樹木型魔物』共だった。そこに……
「何だ。あの花が咲いた『魔物』は。」
「まずい! あいつは、私に『毒攻撃』を仕掛けた『個体』です! 警戒して下さい!」
その言葉が、合図であったかの如し。色とりどりの花粉を、散布する『樹木型魔物』。
「気っ! こんなもんじゃ、アタイの肉体は、傷つかねぇっての!」
「先程、ニック様、プ・シェイさんと、一緒に飲んだ『肉体抵抗増強薬』のお陰で、平気です。」
「あたしは、さっき。そいつの抵抗に、成功しているわよ!」
「ゴヴォッ!」
『麦踏』が、発動しました。……『毒耐性』を獲得しました。
血反吐を吐くニックだった。
「ニック!」
「ニック様!」
「ニック君!」
「ゲベェッ!」
『麦踏』が、発動しました。……『毒耐性』のレベルが、上昇しました。
跪き、両手で身体を支え、ひたすら血液と共に毒素を吐き続けるニック。
「まずい。やっこさん、プ・シェイの言う通り知恵が回りやがる。プ・シェイさえ、倒せば、アタイらの勝ちがなくなる事を、知ってやがんだ。」
「それで、ニック君が、毒で倒れるのを、待っている訳! ラージャー。」
「最初は、30匹でした。私達が、1匹ずつ倒して残27匹。
更に、ラージャーさんが、10匹倒して、残17匹。ここで、毒攻撃に切り替えました。
後は、11匹をラージャーさんに回せば、1匹残りますから、足止め可能。
更に、私と妹に2匹ずつで、1匹倒されても、1匹残りますから、足止め可能。」
「! それじゃ、2匹も残るから、プ・シェイを直接攻撃できるじゃない! なら、ここで1匹でも多く、あたしが、倒してやるわよ!」
すると、波が引く様に、『濃霧』の中へと姿を隠す『樹木型魔物』共だった。
「ちっ! あいつら、知恵つけてやがる。アタイの『空間認識』の外へ出やがった!」
「射程まで、分かっているのでしょうか。ラージャーさん。」
「そこまでは、分からねぇ。が、アタイが、霧の中でも見通せる事には、気付いたらしいな。」
「ガヴァッ!」
『麦踏』が、発動しました。……『毒耐性』のレベルが、上昇しました。
「ニック! 男を見せろや! 踏ん張れ!」
「ニック様! 辛抱です! プ・シェイさんの『魔術』が、完成すれば、治療できます!」
「ニック君! 頑張って!」
「ぐぶぅ……………………ッ。」
地面に倒れ伏し、動かなくなったニックだった。
「ニック!」
「ニック様!」
「ニック君!」
「動くな! ルプレ!」
「でも、お姉ちゃん! ニック君がぁ……。」
「敵は、すぐに、包囲網を狭めます。持ち場を離れては、利敵行為です!」
「………………………………………………………………………………………………っ!」
「ラージャーさん、こうなったら、私達だけでも、『種』に切りかかりましょう。2人がかりなら、なんとかなりましょう!」
「いやなあ……アタイも、ヤりたいんだよ。それ。」
「まさか! 敵は、既に『空間認識』の『射程内』に、入った。と……。」
「こうなったら、ヤるしかねぇ。1匹でも多く、叩っ斬るだけよ。いいな!」
「『是非に及ばず』!」
3人の声が、唱和した。
* * *
次回予告
第36話 初めてのトリック
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