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第33話 初めての双子救助

「怒りゃぁっ!」

 戦斧で、『樹木型魔物』を1匹斬り伏せるラージャー。倒れ伏す『樹木型魔物』。

「その手は桑名の焼き蛤!」

 ニックの「同じ手は二度と通じない!」は、「その手は桑名の焼き蛤!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某駄洒落とも無関係に相違ない。

 倒れた所に、ニックの長剣を、喰らって成す術なく戦闘不能になった『樹木型魔物』。

「よぉっしゃぁっ! 分かって来たじゃねぇか。これが、コンビネーションだ! ニック。」

「1人では『火』でしかない。が、2人合わされば、『炎』になる。」

 ニックの「パーティーの基本ですよ。ラージャー。」は、「1人では『火』でしかない。が、2人合わされば、『炎』になる。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某ロボットアニメとも無関係に相違ない。

「まずい! アタイの『空間認識』に、入って来やがった奴がいるぞ。ニック。」

「え! まさか、村の人ですか。ラージャー。」

「違う。『2人』だ。しかも、1人が、もう1人を、おんぶしてるぜ。ニック。」

「助けましょう。プ・シェイ、ラージャー、協力して下さい。」

「ほな、あちきが、目くらまし、しとくさかい。運搬よろしゅう。ラージャーはん。」

「おっしゃぁっ! どんと来やがれ!」

 プ・シェイが、『魔術』を発動させると、周囲一帯を埋め尽くしたのは、『濃霧』だ。

 ここで、戦斧を既にしまったラージャーの左右の肩に、担がれて運ばれる2人だった。

「大丈夫だ。『濃霧』の中でも、アタイの『空間認識』は、機能してるぜ。いいか、あんま、じゃべんな。舌かむぞ。それに、追われてる。挟み撃ちを覚悟しとけ。二人共。」

「あら、どないな方法で、あちき達の位置を、把握しとるんやろ。」

「いや、闇雲だ。四方八方へ、『魔物』を放った。正解したのは、3匹って処だな。」

 ここで、立ち止まったラージャー。どうやら、例の二人が、近いらしい。

「お願い。お姉ちゃんを、助けて。『魔物』の『毒』に、やられたの。」

 女の声だった。そこで、『濃霧』を一部解除したプ・シェイ。台風の目の如しだ。

「あら、お久しゅう。ルプレはん。ほな、ディジーはんに、『解毒』使いまひょ。」

 ラージャーの肩から降ろされ、『魔術』を使うプ・シェイ。周囲の警戒をするニック。

「来たぜ、ニック。おい、ルプレ。お前も手伝え。」

「言われなくても、分かってるわよ。ラージャー。」

 弩を構えるルプレ。各々の武器を構えるニックと、ラージャー。戦闘態勢は、十分。

「雄らぁっ!」

 『濃霧』を切り裂いて、飛び出して来た『樹木型魔物』へ一撃を浴びせたラージャー。

「隙だらけだぜぇっ!」

「そりゃそうだ。『樹木型魔物』にとっては、『濃霧』のせいで、視界ゼロ。でも、ラージャーにとっては、『空間認識』があるから、丸分かり。アドバンテージか、違い過ぎる。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。

 草でも刈る様に、1匹、また1匹と『樹木型魔物』を斬り倒すラージャー。一方……

「射ぁっ!」

 矢をつがえ放つルプレ。『濃霧』を切り裂いて、飛び出して来た『樹木型魔物』に刺さる矢。倒れ伏す『樹木型魔物』。

「まず、1匹。」

 次の獲物を探すルプレ。そこへ伸びるは、倒されたふりをしていた『樹木型魔物』の枝だ。

「油断しちゃ駄目です!」

 ニックの長剣で、成す術無く、とどめを刺された『樹木型魔物』だった。

「『情報表示プロパティ』を使うんだ。まだ、生きている事も分かります!」

「おひおひ……随分、便利な『魔法』だよな。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。

「うっさいわねぇっ! 分かってるわよぉっ! そんな事!」

「アタイの『空間認識』の範囲内にゃあ、敵影無しだ。片付いたな。ニック。」

「お疲れ様です。ラージャー、プ・シェイ。で、あなた方は……。」

 跪き、頭をたれるディジー。慌てて並んで、姉に倣う妹だった。

「ディジーと申します。こちらは、妹のルプレ。此度は、私ばかりか、妹の命まで救って頂き、誠に感謝申し上げます。かくなる上は、この命如何様にも、お使いください。ニック様。」

 ラージャーから耳打ちされ、首肯したニック。

「顔を上げて下さい。ディジーさん、ルプレさん。……あなた方の事情は、概ね察しています。が、それより今は、『強敵』と『対峙』しています。協力して頂けませんか。」

「先程も申し上げた通りに、ございます。『この命如何様にも、お使いください。』ニック様。」

「……それも、改めて欲しい所です。が、今は、是非に及ばず!」


 * * * 



次回予告

第34話 初めての小出し

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