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第30話 初めての森(説明編)

 徒歩なら、3日かかる所、馬を飛ばして、1日で到着した目的地で、馬の世話をする2人。

「いやぁーー助かったよ。冒険者ギルドに、依頼してから、こんなに早く来てくれるなんてな。」

「こちらこそ、立派な馬舎を、提供して頂いて、ありがとうございます。村長さん。」

「なあに、こちとら材木扱ってんだ。輸送には、馬車を使う。行商人にも頼むが、ある程度は、馬も馬車も確保しなきゃならねぇ。要は、商売柄ってもんさ。」

 ニックの想定と、ほぼ同じ返答をする村長だった。

「話は変わるが、良いブラシ使ってんな。あんちゃん。」

「ええ、実は僕、馬は素人なんですよ。だから、道具に頼っているんです。」

「ほお、最近の若いモンは、背伸びばっかりだ。あんちゃんは、自分が未熟者だと認識してる。中々できるこっちゃねぇ。それに、街からここまで馬を飛ばして1日ってのは、すげぇぜ。」

 ニックと、ラージャーが、馬のブラッシングを終えた頃を見計らって声をかける村長。

「飼い葉と水を持って来たぜ。俺達も、メシにしよう。エルフの嬢ちゃんも既に休んでるしな。」


 * * * 


「こっちは、既に犠牲者が出た。村の者が、いつも通り森に入った所、木が動き出して、襲って来た。当然、全員逃げ出した。その内1人が、逃げ遅れた。死んだとは思うがな……。」

「遺体を回収する事すら、できていない。そう言う訳ですね。村長さん。」

「ニック殿の言う通りだ。実に、情けねぇ話だが、おやっさんの事を弔ってやれねぇんだ。」

「そのお気持ち、察するには、あまりあります。僕達は、明朝から行動する予定です。で、森の入り口までの道案内と、目印として木に傷をつける許可を頂きたいのです。村長さん。」

「そんな事しなくても、目印ならあるぞ。木の根元に、鳥の羽を刺してあるんだ。」

「それは、遺体のある場所までですよね。もっと奥まで行く必要があるのですが。村長さん。」

「そんなら、予備が、たんまりあるさ。好きなだけ持って行きな。」

 そう言って、一抱えはあろう箱を、出してくれた村長。

「成程、鶏の羽に、細長い木の棒を括りつけたんですね。これを地面に刺すと。」

「この村じゃ、何処の家でも、乳牛と鶏飼っているからな。そいつのだよ。これでいいか。」

「……ありがとうございます。では、道案内の方は、如何でしょう。村長さん。」

「そんなら、あの日森に入った奴が、明日の朝来る。手配しておいた。」

「何から何まで、ありがとうございます。では、明朝から出発します。村長さん。」

「こっちこそ、世話になる。何とか、『魔物』を、やっつけてくれ。ニック殿!」


 * * * 



次回予告

第31話 初めての森(探索編)

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