第23話 初めての挟撃
「え? 一体、どうしたんです。急に止まったりして。ラージャーさん。」
前から飛来した石礫を、ビキニアーマーや、力を込め固めた筋肉で、受け流すラージャー。
「だっ! 大丈夫ですか! ラージャーさん!」
「背中を丸めて、頭を庇え! 連中に正面を見せるな! しゃがむな! 動くな! ニック!」
言うや否や、手斧を手に、駆けだすラージャー。取り残された形のニック。
だが、ラージャーの心配などする余裕など無いニックだった。
「ぐぅっ!」
『麦踏』が、発動しました。……『経験値』を獲得しました。
「まずい、暗闇で背後からの攻撃! 何とか、耐え凌がなければ……ぐぅっ!」
『麦踏』が、発動しました。……『経験値』を獲得しました。
「これは、棍棒か……連中の背が低いお陰で、頭に届いて無い事だけは、幸いか。」
尚も、執拗に攻撃を加えられるニック。遂に、石器の短剣まで刺さった。右脚だ。
『麦踏』が、発動しました。……『経験値』を獲得しました。
「まずい! このままじゃ……後、何回か刺されたら、立てなくなる……っっっっ!」
股間に痛撃を喰らい、声にならない悲鳴を上げてしまった上、失禁までしたニック。
『麦踏』が、発動しました。……経験値累積でレベルが、上昇しました。3レベルです。
「あ……うぅ…………ぅ……ぅっ……膝に力が、入らな……ダメだ! 立て! 立つんだ!」
「伏せろ! ニック!」
言われるまでも無い。股間を押さえて、膝から崩れ落ち、地面にへたり込むニックだった。
「GooBwwww!」
ラージャーが、放った投石を顔面に喰らい、鼻を砕かれたゴブリンだった。
「せいやぁっ!」
そこに、襲い掛かるラージャー。ある者は、手斧で頭蓋骨を叩き割る。また、ある者は、石を握りしめた籠手で、肋骨を砕く。まさしく鬼神だった。気が付くと……
「今、助けるからな。もう少し、我慢しろ。ニック。」
「……すみません。本当に、迷惑ばっかりかけて……ラージャーさん。」
ゴブリン共を、全滅させたラージャーの手で、出口へと運ばれるニックだった。
* * *
寝袋を敷物代わりに、靴も鎧も全て脱がされて、全裸にされたニックだった。
更に、右手一本で、両腕を押さえ付けられ、股間にぶら下がった物を触られるニック。
「痛っ! ……強くしないで下さい。ラージャーさん。」
「ふぅ……良かったな。潰れてねぇぞ。あいつらが、雌だけで助かったな。ニック。」
「成程、つまり、雌は雄より非力だったから、僕でも耐えられた訳ですね。ラージャーさん。」
「察しがいいな。多分、雄は牛泥棒、雌は拠点防衛って役割分担してたんだろう。じゃ、両手は後頭部に回して、ガニ股になれ。応急手当してやっからよ。ニック。」
「え! そんなぁ……僕、もうお婿に行けないですぅ……。ラージャーさんんん。」
打撲痕、刺し傷、股間にそれぞれ軟膏を塗り、包帯を巻いてくれたラージャー。
「手際が、いいんですね。それに、薬も準備してたんですね。ラージャーさん。」
「アタイは、『魔法』使えねぇからな。これくらいの備えが、いるんだよ。ニック。」
「そう言えば、連中はどうやって、僕達を挟撃したんでしょう。ラージャーさん。」
「例の骨と木の置物だよ。あの陰に、横道があったんだ。そこに、潜んでいたんだ。ニック。」
「よく分かりました。本当に、助かりました。ありがとうございます。ラージャーさん。」
「手当は、終わりだ。おっ、アタイと同じ防水加工した背負い袋か。用意がいいな。ニック。」
「はい。少し高かったですけど、僅かなお金をケチるより良いと思いました。ラージャーさん。」
着替えが、完了すると、再度洞窟に入り、潜伏中の子供全てに、とどめを刺した2人だった。
* * *
次回予告
第24話 幕間4
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