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第22話 初めての洞窟

 森をかき分け、洞窟の近くまで案内されたニックと、ラージャー。

「あの洞窟は、熊が冬眠の際に、使う物です。こんな事になるなんて……。」

「貴重な情報、ありがとうございます。で、あそこに見えるのが、件の洞窟ですか。」

「はい。そうです。ニック殿。」

「では、この近くでお待ちください。帰りもお願いしますから。」

「お気を付けて下さい。ニック殿。」

 こうして、洞窟に入る2人。ニックの左手には、村長さんから貰った松明がある。

 静やかなりし、天然岩。ひんやりした空気。洞窟内は、独特の環境だった。

「狭いな。こういう場所では、長物は使いづらい。アタイは、手斧を使う。どうする。ニック。」

「僕は、予備の小剣が、ありますよ。ラージャーさん。」

 実の所、馬の売却益で、装備を一新させた。扱いが、難しいが、弓も買った。

「よし、進むぞ。お前は、アタイの後ろから、松明で照らせ。ニック。」

「はい。ラージャーさん。」

 暫く無言で、歩を進めるニックと、ラージャーだった。

「おい、見てみろよ。これ、骨と木で作った置物だぜ。お前は、何だと思う。ニック。」

「牛の頭蓋骨ですかね。ゴブリン・シャーマンが、作ったんでしょう。ラージャーさん。」

「只の、置物だ。先に行こうぜ。ニック。」

「はい。ラージャーさん。」

 またも、無言で、歩を進めるニックと、ラージャーだった。

「あれ? あそこ、天井が、高くなってますよね。ラージャーさん。」

「よく気付いたな。こういう場所は、待ち伏せの可能性が高い。気を付けろ。ニック。」

「はい。ラージャーさん。」

 今度は、更に慎重に歩を進めるニックと、ラージャー。そこに……

 ざっぱーーん……

 上から水をぶっかけられ、手にした松明の火が、消えてしまう。暗闇に包まれたニック。

 『麦踏』が、発動しました。……『不意討ち耐性』を獲得しました。

 『麦踏』が、発動しました。……『経験値』を獲得しました。

「ニック!」

「まだ、大丈夫です。それより、何か聞こえませんか。ラージャーさん。」

「まずい! 敵だ! 一旦ひくぞ! ニック。」

「あーーれーー…………。」

 ラージャーの手で小脇に抱きかかえられ、洞窟の入り口方面へ、運ばれるニックだった。

「チクショウ! こんな手を使って来やがるなんて! 連中、意外と賢しいな!」

「あれ、そう言えば、明りもないのに、どうやって見ているんです。ラージャーさん。」

「ああ、それか。アタイは、生まれつき、暗闇でも視えるんだよ。ニック。」

「ほへぇ……すんごいですねぇ……僕……足手まといですよね……ラージャーさん。」

「おひおひ……また、それかよ。兎に角、光の下まで逃げるぞ。って! まずい!」

 ラージャーの背後、地面に降ろされたニック。


 * * * 



次回予告

第23話 初めての挟撃

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