第17話 初めての打ち合わせ
で、村長宅で、夕食をご馳走されながら、事件のあらましを説明される2人。
出された料理は、パン、野菜スープ、厚切り牛を焼いて、一口大に切ったものだ。
「いやぁーー、助かります。徒歩なら、3日はかかる所、わざわざ馬を飛ばして、1日で到着してくれたんですから。本当に、ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ、馬舎を貸して頂いて、急な申し出なのに恐縮です。」
話しを聞いているのか、いないのか。肉のおかわりをし、ひたすら肉を喰うラージャー。
「では、事件のあらましですが、事の起こりは、3日前。出荷を目前にした牛1頭を、盗まれました。状況から見るに、犯行は夜。牛舎出入口の閂を外して、中から牛を連れ出したのです。」
「そうですか。で、手紙に書いてあった『村の中に内通者がいる』とは、何を根拠に?」
「成程、そんな情報、掲示板に堂々と張り出す訳には、いかないからな。手紙は、いい手だ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「それは、『状況に鑑みるに』です。手際が、鮮やか過ぎる。それに、村の青年団も、交替で見回りをしています。彼らが、何も見ていないなど、有り得ない事。お恥ずかしい限りです。」
「身内を疑わざるを得ない事、心中察するに余りあります。が、おして子細にお願いします。」
「そうですな。3日前の朝、いつも通り、牛舎に向かいました。すると、閂が、外されていたのです。確かに、前日の夕方閉めたのに。そこで中に入ると、牛が、1頭消えていたのです。」
「すると、村長さん。あなたは、真っ先に、昨晩の見回り人を、疑った訳ですね。」
「はい。しかし、彼等は、『何も知らない』の一点張り。実際に、外された閂や、牛舎の空白を見せても、驚きはしましたが、『何も知らない』の一点張りには、変わりありませんでした。」
「では、見回りのスケジュールを、記録していますか。あるなら、見せて下さい。」
「分かりました。こちらになります。」
そう言って、壁に画鋲で止められていた紙を、持って来る村長だった。
それを、よく観察する2人。ラージャーが、肉をおかわりする時を見計らって話すニック。
「どう思いますか。ラージャーさん。」
「ん……アタイの『勘』は、『今晩』が、怪しいと思うぞ。ニック。」
「そう思いますか。……いずれにせよ、僕達も『不寝番』をしなければならない。」
暫し、黙考するニック。やって来た肉のおかわりを、喰らうラージャー。
「では、村長さん。今晩から僕達は、『不寝番』をします。それに当たって、用意して頂きたい物があります。宜しいでしょうか。」
「はい。何なりとお申し付けください。ニック殿、ラージャー殿。」
「まず、毛布を8枚です。これは、屋外で使う事を前提として下さい。最後に、梯子です。で、僕達が牛舎の屋根の上に昇ったら、外して下さい。降りるのは、こちらで何とかします。」
最後に、『ある事』を頼んでおく。これが、一番重要だらだ。
「どうした。ちゃんと、肉喰え。でないと、大きくなれないぞ。ニック。」
* * *
次回予告
第18話 初めての『不寝番』
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