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第12話 初めての再会

 今、僕は、アニキのいる大都市では無く、そこから徒歩1日の衛星都市に腰を据えた。

 ここで、下宿を借りて、毎日この街の冒険者ギルドに通っている。

 下宿の良い所は、毎日管理人さんが、食事付き、洗濯、掃除も頼めばしてくれる事だ。

 それも、家賃の内だからな。欠点と言えば、料理の素材をケチっている所くらいだ。

 当面の活動資金は確保した。が、ビーミーだけは、泣いて売られるのを嫌がったので、手元に置いてある。だから、物件選びには、馬小屋付き一択だった。

 そして、今日も今日とて、冒険者ギルドに通っている。

 最大の問題は、僕一人だけで、達成可能な冒険が、あるかどうかだ。

 追い打ちだが、僕には実績も無い。僕に仕事を任せてくれる物好きが、いるだろうか。

 こうなったら、どんなにショボい仕事でもこなして、実績を積み上げるしかない。

 そんな、考えを巡らしていた。すると……

「おっ……ニックじゃないか。こんな所にいたのか。」

「あれ、メイドさん……何故……。」

 こんな所に、そう言いかけて止めた。恐らく、大きな背嚢を背負ったメイドさんは、追手だ。

 つまり、何らかの方法で、僕が帰郷していない事を知ったのだろう。アニキがだ。

 下手をすれば、実家まで連行されかねない。逃げるか。だが……

 歴戦の強者共が、一斉に下がって、道を開けた。まるで、僕とメイドさんを包囲している。

 まずい、逃げ場が無い。どうする?

「良かった。無事だったんだな。ニックが、乗った駅馬車が、賊に襲われたって聞いてな。安否の確認に、走り回っていたのさ。良かった。本当に、良かった。」

「で、無事だったから、帰郷しろと言いたいのか。」

 そう言いたくなる気持ちを、ぐっと堪えるニックだった。

「あの、痛いんですけど……この抱き着きは、お仕置きっか何かですか。メイドさん。」

「おっと、いけね。力が、入り過ぎちまった。許してくれ。で、あの時何があったんだ。それに、今ここにいる理由も、くわぁぁぁしく、教えてくれよ。ニック。」

「……分かりました。場所を変えましょう。落ち着いて話のできる所に行きましょう。」

 そこで、鍵付き個室ありの飲食店に入り、僕から事情を説明した。

「で、賊に襲われた時、デキトーさんが、殿になってくれたんです。でも、僕デキトーさんを見捨てる事が出来なかったんです。だから、デキトーさんを助けに戻りました。

そしたら……デキトーさんの亡骸が……で、落ちていた剣で、側にいた賊を……刺しました。その後、デキトーさんに倒された賊の武器馬を運んで、街に戻って売りました。以上です。」

「なら、デキトーの長剣と、愛馬を持っているのは、ニックかい。」

「……はい。……」

 暫し、胸の下で腕組みをし、黙考する褐色肌のメイド服だった。ややあって……

「そうか、よくやったぞ。ニック。」

「……え、は。……」

「何、情けない声出してる。お前は、デキトーの仇を討った。一人前の男だ。立派な冒険者だ。ケヴィンも、こんな男気のある奴を、追い出すなんて、了見が狭いな。見損なったよ。」

「じゃ、じゃあ……。」

「よし! アタイは、決めたぞ。ケヴィンとは、縁を切る。今後は、ニックについて行く。」

「え! それは、願ったりですけど、いいんですか。」

「なあに、アタイにとって、メイドは趣味さ。本職は冒険者。バリバリの前衛さ。」

「ありがとうございます。お願いします。ええとぉ……。」

「ラージャーだ。宜しくな。ニック。」

 握手をした後、今度は今までの経緯を説明するのは、ラージャーだ。


 * * * 



次回予告

第13話 初めての説明

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