7/35
第7話
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうだった? 姫さま可愛かった?」
教室に戻るなり結希さんが目を輝かせて迫る。
「結局、訊いてない」
「あの決意はどこ行った?」
「ゴミ箱」
「やっぱりクララ会は恐れ多かったでしょ?」
「うん、それもあるけど……」
「それもあるけど?」
「本人に訊くべきことじゃないかなって」
「まあ、そりゃそうだ」
あっさり納得した結希さん、机の中からいちごキャンディーをふたつ取り出すと、ひとつを千鶴の手の載せた。
「だけど返事はお早めにね。基本、翌朝には返事するのが決まりだから」
「どうして?」
「だって、ダメだったら他のノワールに申し込めるでしょ。安易に返事を引っ張っておいて、結局断ったりしたら可哀想」
「ああ、なるほど」
判断を延ばしている間はキープ状態になってるわけだ。それはずるい。千鶴はキャンディーのお礼を言うと、ぽんと口に放り込んだ。そうして甘酸っぱい味を舌で転がしながら、さっきの出来事をもう一度頭の中で反芻した。