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ゆりたちの交換日記  作者: 日々一陽
第3章 優しさの伝え方
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第5話

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 絵里花さんは予鈴の直後に現れた。


 きっと、靴箱にあったたくさんの日記をどこかで読んでたんだろう。だけど決して嬉しそうには見えなかった。

 なんか気になる。

 こういう時、千鶴の中学じゃ「元気してる?」って感じのメモを回して探りを入れたりしたものだ。先生にバレないよう細心の注意を払って。スマホを持っている友達は、それを使ったりもしていた。

 けれど令女は、そんな雰囲気じゃなかった。そもそも絵里花さんにメモを回そうにも親交がない人を経由しないといけない。スマホなんて見つかり次第、有無を言わさず没収だと言うし。


 でも今は人のことまで心配している場合じゃない。

 放課後のこともあるのに――


 そう、千鶴にはまだ迷いがあった。

 私は万里子さんの期待に応えられるの?

 万里子さんは、賢くてとてもしっかりした人。

 それに比べて私なんて。

 万里子さんは買いかぶっているんだ。

 釣り合わない。

 私なんて――


 そんな心のわだかまりは何ひとつ解決していない。


 千鶴が物思いに耽っていると、前の結希さんが後ろ手にメモをよこしてきた。



  次の体育

  一緒に行こう



 元よりそのつもりだった千鶴は、そのメモに書き加えて返した。



  案内よろしく



 更衣室も体育館もとっくに覚えてるけど、嬉しい。

 つい先日までは、令女で友達が出来るのかなって、すごく心配だったから。

 1時限目の日本史が終わると、千鶴は教科書を片付ける。

 そうして結希さんが立つのを待っていると――


「千鶴さん、一緒に参りましょう」


 先に絵里花さんから声を掛けられた。


「あ、私が先約」


 結希さん、慌てて権利を主張。


「結希さんったら、ずるいですわ」

「これが証文よ」

「証文って、授業中に何してるのよ」

「物理的SNSよっ(ふんすかっ)」

「だったら三人で行きましょうよ」

「……」


 ま、そりゃそうだ。

 千鶴は体操着を入れた袋を持つと、3人で歩き出した。

 右の腕は結希さんに、左の腕を絵里花さんに捕まれて。

 更衣室に行くだけなのに、なんなのこれ。


 いやでも、ちょっと嬉しい。

 思い切って令女に来てよかったって思う。



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