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忘却戦記  作者: なすおた
6/34

2-5

 人影も見え始め安心しようとした所で、


 「ツカサ、わかるかしら?」


 またセレナが何かに気づいたみたいであった。

 今度はさっきの魔物のの気配とは違い人影もあるし、何に気づいたのだろうか?



 「ウテファとリーアナをつなぐ道で、武装している人間がいたとしたら護衛の人か傭兵だったりするものだけど、にしては武装してる人間が多いと思わない?」


 確かに僕たちの通ろうとする反対から来る人々はみんな武装をしている。


 「考えすぎなんじゃないかい?」


 「うーん、そうかしら?」


 自分で考えすぎと言っておいて、言われて見てると怪しいような気がしてきた。

 鍛えてるのか大きな男性何人かが、武装して近づいてくると怖く見える。

 どんどんと距離は縮まり、後一歩ですれ違うすんでのところ。



 「お二人は旅行ですかな?」


 前に立ちはだかるように僕たちの進路を妨害する。

 声をかけてきた人間がリーダーなのか、周りの数名はにたにたと笑っている。


 「ほらね、やっぱり」


 「いやいや! まだわからないって、単なる世間話かもしれないよ」


 「ツカサって結構お人好しなのね」


 呆れるセレナに、リーダーの人は返事がないので続けて話始めた。



 「このご時世、護衛一人で出歩くのはいささか不用心じゃないんですかお姫様?」


 「お姫様だってセレナ! これはナンパだよ」


 「おい! 護衛のお前、さっきからうるさいな!? 黙ってやがれ!」


 大きな声と共に、腰につけたソードを抜き僕に切りかかる。

 僕もソードを抜き軽く受け流し、切っ先を男に向ける。



 「ごめん。やっぱり僕が間違ってた」


 「でしょ? あーはいはい、お金目当てですか? それともお姫様って知ってるってことは暗殺か何かかしら?」


 「暗殺って、セレナは何か暗殺される覚えがあるの?」


 有名な魔法使いと自分で言っていたけど、暗殺されるようなことがあるのだろうか?

 不思議に思ってると、僕のソードの腕にびびりながらリーダーが言う。



 「お、お前護衛なのに何もしらないのか? この女はセレーナ・S・ミストアレア。ミストアレア王家の血を引く第三王女だぞ」


 「え!?」


 セレナの顔を見る。


 「本当よ。あんまり身分をひけらかすのは嫌だから言わなかったの、ごめんなさい」


 セレナがお姫様? そこで思い出す。

 魔法の腕より別のことで有名、実家がお金持ちと言われると、お姫様って言葉がぴったりと当てはまる。


 「そんな顔しなくてもわかってるって! 私でもお姫様って柄じゃないことくらい」


 「いや、別に僕は!」


 慌てる僕の切っ先をリーダーが弾き、距離を取った。



 「あっ、ごめん、見てなかった」


 「なんにせよお姫様を暗殺すれば大金が入るんだよ! 最初は不意をつかれたが二人程度、この人数でかかれば楽勝だ!」


 周りの連中も掛け声を上げる。


 「すとっーーーぷ!」


 それを制するようにセレナも負けずと大きな声を出し、何事かと相手も僕も止まる。



 「あなたたちねー、え? なんで私みたいに華奢で繊細な王女様が自由に出歩いてるか理由考えたことあるかしら?」


 「華奢で?」


 「繊細?」


 周りの子分AとBが顔を見合わせる。


 「良いツッコミね、はっ倒すわよ? そうじゃなくて理由! 王女でありながらミストアレア魔科学総合研究所で働いて、リーアナまで出張したり魔物の討伐に向かう理由!」


 みんなきょとんとして、子分たちは「そういえばなんでだ?」とか声が上がる。

 確かに王女であるならそんなことをせず安全なお城ですごせばいいはずなのに。


 「それは私がすごーーーーーーーーーーーく! 強いからよ! 一人でいても問題ないし、それこそあんたらが束になっても敵わない。一般の人間や盗賊なんてもちろん、王国の護衛隊ですら敵わない」


 続けざまにセレナは言う。


 「いい? 私は第一級高等魔導士資格を持ってるの! 二級までは知識と学術で取れるけど、一級は別物! 実戦経験と実力、それ以外にも特殊な実績がないと取れないの!」


 知らなかった者達がそうなんだーと頷いている。

 僕もそのうちの一人だ。



 「だから怪我をしないうちに帰りなさい! 今なら見逃してあげるから」


 リーダーは真顔になり子分達と軽く話し、


 「はいそうですかって帰れるか! こっちも大金が欲しいんだ! 一級だか二級だかしらねぇえがやっちまうぞ!」


 聞く耳を持たない態度にやれやれと頭を振り諦めるセレナ。



 「魔法を学んでる人間なら一級資格を持ってるって言っただけで逃げ出すのに、こういう輩はなんで馬鹿なのかしら……ツカサ?」


 「うん? なんだい」


 「今の資格の続きだけど、特殊な実績ってなんだと思う?」


 「特殊な実績? 何かの発明とかかな?」


 「おしい! 発明だけじゃなくて、発明を実戦で誰にも真似できない個人の力にできること。私の場合は魔法の式」


 「それってセレナにしか使えないの?」


 「似た魔法もあるかもしれないけど、火力も使い方も利用しやすさも全然違うわ。それを今見せてあげる!」



 セレナは腰のベルトについた小さな試験管を取り外し、何かを唱えてからじりじりとにじり寄ってくる連中の前にぽいっと放り投げた。

 投げた試験管は中に何かが入ってる訳でもない、そのままの試験管だ。

 それが放物線を描き地面にぶつかった瞬間! 凄まじい轟音で周りに衝撃を与える!

 僕は目を見張り、こんなことになるなら先に言ってほしかった! と地面に伏せるが。



 「あれ?」


 辺りを見回すと、盗賊たちの何人かは衝撃で吹き飛び意識を失ってる者もいるが、僕には衝撃が届かなかった。

 試験管が落ちた場所を考えると、僕の方が近いはずなのにときょろきょろする。

 「これが私の爆弾魔法。意志で爆風から衝撃まで任意で変えられる、私にしか使えないオリジナルの魔法よ!」

 すかさずセレナは追い打ちをかけるために試験管を取り出し投げた。

 盗賊たちは何が起きたのかわからない顔で砂煙のなか頭をふるが、試験管が危険なことだけはわかり着弾地点から逃げる。


 「無駄よ。爆発の方向を決められるってことはこういう事もできるんだから!」


 着弾した場所からまるで線のように逃げる盗賊へ衝撃波が飛び、逃げた盗賊だけが吹き飛んでいく光景は一方的すぎて、これならセレナが忠告した意味もわかる。



 「これが、第一級高等魔導士の力……」


 「凄いでしょ? 本来は国へのテロ対策として爆弾を研究していた私が、結局一番爆弾魔に近いっていう悲しい話なんだけどね」


 た、確かに悲しい。


 「くっ! すげー力かもしれないが、投げてる物にだって限りがあるはずだ! お前たち耐えるんだ! 耐えてぎゃふんと言わせてやる!」


 ここまで圧倒的なのにまだ諦めないリーダー格の根性には脱帽である。



 セレナも今日一で一番の、とてつもないため息を吐く。


 「ほんとーに! わかってないみたいね? あんたらが怪我しないように試験管使ってやってんのに。無しで食らったら簡単に死ぬわよ?」


 「うぐっ! くそ! ちくしょう!」


 セレナの言葉を聞いてようやく力量の違いを気づいたらしい。

 既に何人かは最初の爆発で逃げていたが、理解した者から順に逃げていく。

 見る見るうちに子分たちは逃げ出して、最終的にリーダーだけになってしまった。



 「くそっ! くそっ!」


 「ほらあなたも見逃してあげるから逃げなさい?」


 優しい言葉をかけるが、これは優しさと言うより圧倒的強者が弱者に全く関心がないのと同じ心情なのだろう。


 「あんたらみたいな奴等、毎度捕まえたりしてたら面倒なだけなんだからね? 今後は悪さとかしないで真面目に働きなさいよ? すぐとっ捕まえれるんだから」


 「嫌だ! お、俺は金が欲しいし!い、生きていたいんだ!」


 「は!? 殺さないって!」


 「くそっ! こ、殺されたくねぇ! 殺されたくねぇ!」


 なんだか盗賊リーダーの様子がおかしかった。


 「あ、暗殺を頼んできた男が、成功したら金を出すが、失敗したら殺すって!」


 「ちょっと! どうしたの? 詳しく教えなさいよ? そんな奴、私が倒してあげるから」


 「お前でも無理だ! 相手は国家だからな! くそっ! も、もらったこれを使って、お前を殺して! お前を殺して! 俺は生き残ってやる!」



 男はよくわからないことを言って懐から何かを取り出そうとした。


 「ツカサ! 止めて!」


 言われたのとほぼ同時にソードで懐の何かを弾いたが、男は何かを取り出そうとしたのではなく、自分の胸に突き刺していたのだ。


 「じ、自殺?」


 死にたくないと言ってた男が、自殺しようとするなどと誰が考えるだろうか?

 盗賊との戦いは後味が悪く終わった。



 「なに? これ……」


 終わったように思えたが、


 「嘘、こんなのあり得ない! この力って!」


 セレナが叫び訴える。それは僕にもわかる程の男にまとわりつく、とてつもなく嫌な空気に、戦いが終わってないことを理解する。

 僕は本能的に倒すべきだと察して、指示なしで男の首を切り落とそうとした。

 しかし首に刃が当たったが、男の首は切れることはなかった。



 「大きな魔力でいくわよ!」


 それはセレナが魔法を放った合図で、僕は後ろに飛びのき爆発の範囲から逃げる。

 さっきの盗賊を追っ払う爆発とは違い本気の爆弾だ。

 男は黒煙に包まれ、普通の人間だったら跡形も残らないはずだ。



 「一体これは何なんだい?」


 「私もわからない。こんな魔法見たことがないわ。でもこの魔力の流れ、いえ、ありえないわ、こんな魔法」


 理解はしているが認めたくないと否定していたが、意を決して説明をし始めた。



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