絶望
次に目が覚めたとき、目の前には中世ヨーロッパ(といっても実際に見たことはないのでイメージだが)のような町並みが広がっていた。
とりあえず、なぜこうなったかを解明しなければいけないので
ログアウトをしてみることにした
「システムにあるかな?」
目の前に画面が飛び出してきた
音声でシステムコンソールを呼び出せるようだ
その中から、ログアウトを探しだし
ログアウトすることに成功した
目を覚ますと、枕元に置いていたVRヘッドギアを頭にはめた状態でベッドに横たわっていた、おそらく寝ている間に奇跡的に装着されて電源が入ったのだろう、サイズ調整した覚えはないのだが、櫻さんが前もってしておいてくれていたのだろう
「育ー伸ー、ごはんよー」
下の階から、母さんの声がきこえる
時計を見ると18:30ちょうど夜ご飯の時間だ
「今いくよ」
廊下で伸に鉢合わせした
「育、もう始めたか?」
「キャラメイクだけは終わったよ」
「そうかそうか、なら始まりの町の中央の噴水で会おうぜ
おれの名前は、ストレだからな」
「わかったよ」
ご飯を食べ終わったあと、今度は自分の意思でヘッドギアを起動した
目を開けると、さっきと変わらない光景が広がった
伸は先に食べ終わっていたので、もうログインしているだろうと思い振り返るとそこには噴水があった
「噴水って、スタート地点だったんだな
そういや、俺の姿ってどうなっているんだ?」
噴水をのぞき込むとそこには現実と同じ容姿で、いかにも初期装備と言わんばかりの白い服を着ていた
「おまえ、育か?」
声の方を振り返ると、黒いコートを着て二つの刀を腰に指した人間が立っていた
「おう、そうだ
そういうお前は、伸いやここじゃストレか」
「そうだ、お前はキャラネームそのままなんだな」
「まあ、成り行きでな
ストレのその姿はなんだ?」
「これか?これはベータテストの特典で初期装備のグレードアップができたんだ、だから職能の双刀士に合わせて手に入れたんだ」
「職能?なんだそれ」
「職種得能のことだよ、長いからみんな職能ってよんでる
お前の職能はなんだ?初期武器がなにもないようだが」
「捕食者ってやつみたいだぞ」
「捕食者って、あの捕食者か?」
「どの捕食者か知らんがそうみたいだぞ」
「慎重にしろってあれほどいったのに、お前ランダムでキャラメイクしただろ」
「お、正解だ
なんでわかったんだ?」
「俺も詳しくは知らないが、捕食者はランダムでしか出ないレア種族とレア職種の組み合わせでしか発現しないんだよ」
「そうなのか、ラッキーだったみたいだな」
「アンラッキーだよ」
「なんでだよ、レアなんだろ?」
「捕食者は、モンスターの素材を食べてモンスターの能力を得ることが出来る職能なんだが、まず素材がまずくて食べられない、しかも食べたとしてもたいしたことない能力をわずかな時間得るだけだ、だから素材を得ようと戦えば戦うほど素材を消費して、最終的に戦えなくなる、しかも能力を得ることが出来るのは自分で倒して得たドロップだけ、つまり素材を売って金を稼ぐことも難しい、不遇中の不遇職なんだよ」
「なん…だと…」
「まあ、そういうことだ
不遇な兄のために狩り場の情報だけは教えといてやるよ
今いる噴水から東にいくと、ここらでは一番低レベルなエリアだ、ウサギとか鶏が歩いてる、こっちから攻撃しない限り攻撃はしてこない
西にいくと、すこし強いもぐらと、素早い動きのツバメがいる、レベルをあげてから行った方がいいと思うぜ
南は、虫と植物のエリアだ炎系の能力を持ってなければ近づかないほうがいい
北は、クジャクと次のエリアにいくためのボスモンスターがいるから行くのはまだまだ先だな
それじゃ、俺はベータのときの仲間が待ってるから行くわ、じゃあな」
意気消沈している俺を横目に、そそくさとストレが消えていく
「薄情者ー」