第1話 「死」が俺を食い尽くす
人はいつか必ず死ぬ。
たとえどんな凄いことを成し遂げても、どんなにいい仲間を持っても結局最後は死ぬ。そして、死んだ後のことは誰も知らない。
最近俺は、そんなことをベッドの中でうずくまって考えてしまう。とてつもなく怖い。「死」はいつも俺たちのすぐそばで潜んでいる。布団の中から暗い部屋をのぞき込んだら、「死」が俺を襲ってくるような気がする。
延々と誰も答えられない問いを続けながら、いつの間にか朝を知らせる鳥の声が外から聞こえてきた。朝になると、まだ気分が楽になる。ベッドからゆっくりと体を起こし、しばらくガラス戸から淡白い空を見つめる。
学校に行く支度を整えると、心に重たい「何か」を背負って俺は自転車のペダルをゆっくりと踏みしめた。
青い空はまぶしいくらいに太陽に映され、白い雲は一つもない。俺以外には絶好の通学日和だろう。通学路はゴールデンウィークの土産話で盛り上がる生徒達で溢れていた。俺はその光景を横目に、人と人の間をするすると通り過ぎていく。
「何でみんな笑っていられるんだろう」
不意に出た言葉が、俺の心をまた重くした。以前は、俺もあんな風に誰かと笑ったり、楽しい時間を過ごしていた。でも、「死」のことを考えると、あと何回笑えるんだろうなどと考えてしまう。そうだ、「死」のせいだ。「死」なんてなければ・・・。
(お前なんて、死んじまえ!)
あの時の出来事がフラッシュバックした。