約束を果たすためには
「さて、手始めにマルスの方から片付けるとするか」
俺は現在、マルス、アリサ、ヒナを挟んで、盗賊風の男たちに、前方を塞がれる形で対峙していた
先程の爺やを追いかけてから数分、爺やを追いかける進行方向の先で、何やら眩い閃光を確認した
そして俺はそちらの方に向かうと、マルスたち三人が盗賊風の男たちに道を塞がれていたというわけだ
そこで俺は彼らを助けるため、とりあえず前列にいた男を狙撃して、彼らに加勢したという状況だ
戦況的には、流石に20人以上対3人ということもあって、少しだけ押され気味である
その中でも、比較的上手く戦えているマルスの方を殲滅して、後の二人の方に早めにフォローにまわるという作戦だ
「マルス、今から5秒後に、前にいる五人程度の奴らを一気に俺が片付ける
その隙に、お前は近くにいる残りの数人を、防御から攻撃に転じて倒してくれ
で、そのあと二人の方に合流して援護を頼む!ある程度取りこぼしても、俺がちゃんとフォローするから」
現在のやられない事を第一に考えた、敵の攻撃を受け流すことで防いでいる守りの態勢を、どこかで攻撃の態勢に転じなければならない
そのため、まずはマルスのところから攻めに転じる事で、この戦況を変化させたい
マルスは俺の指示を聞いて、守りをメインに考えていたために横に構えていた剣を、敵の攻撃を横に薙ぎ払うと同時に剣を縦に持ち替えた
「ソーマくん!準備は出来た!頼む!」
マルスはそう言うと、いつでも敵に攻撃できるように足を少し引き、敵を威嚇する構えで剣を鎧の肩辺り、胸の少し下ぐらいの位置に構える
しかし敵も馬鹿ではないため、俺の話を聞いてか先程よりも少しラインを上げて、マルスが攻撃の態勢に入ることを阻もうとしてくる
「へっ!鎧の野郎にこのままやられは…「振り向くな!」
うわっ!なんだ!?」
前にいた盗賊の男がマルスの剣をはたき落とそうと、一歩前に踏み込んできた瞬間
俺はマルスたちに後ろを振り向かないように指示すると同時に、ボックスに入っている閃光弾の弾を自分達から一番近くにある木の幹に着弾させたのだ
ピカッ!!
閃光弾から放たれた眩い閃光が、俺たちの背後から目の前にいる盗賊たちを襲い、それを受けたことによって彼らの攻撃の波が一時的にストップする
そしてその隙を見逃さない俺とマルスは
「撃つ」「そこ!」
俺は比較的威力の低い跳弾を数発、男の利き腕、武器に地面を跳ね返させる形で打ち込む
前方に立つマルスによって、俺からの狙撃が見えずに死角から撃ち込まれた銃弾によって、未だ目の視力が回復していなかった男たちは次々と倒れこんでいく
そしてそれを追撃するかのような形で、マルスが男たちに鋭く斬り込み、そいつらを戦闘不能(武器破壊や利き腕の損傷)にすることによって無力化していった
「マルス、そのまま二人の方を援護してくれ
俺は隙を見て敵の数を減らしていくから」
マルスにそう短く指示を出して、アリサとヒナの方、二人の方向に目を向ける
「はぁ!」「えい!やぁ!」
俺が見た先では二人は何とかお互いをカバーする形で、戦線を下げないで迎撃していた
しかし、その二人の戦い振りはというと…
アリサの方はまだ敵の攻撃をよんで、それをはじき返しているのだが…
ヒナの方は来た攻撃一つ一つに、なんとか反応する事で敵の攻撃を受け止めていて、反応がギリギリなときなどは、特に危なっかしい
それは少しだけ敵の攻撃が収まったタイミングだろうか?ひと息付くほどのない一瞬であったが…
アリサはフッと気が抜けたかのように剣の構えを下ろしてしまう
しかしそれは敵が溜め攻撃を繰り出すまでの一瞬の間だったようで…
「ぅらぁ!余所見してんじゃねーぞ!」
そう叫んだ男は、下から振り上げるような形で、アリサに剣で斬り込んだきた
咄嗟のことに反応出来ずにアリサは「あっ!?」っと呟く事しかできない
そしてそれを見ていた俺はもちろん…
「ほら、ボサッとしてる暇はないぞアリサ
ちゃんと戦ってる最中は敵から目を離すなよ」
俺はそう言うと、腰に巻きつけていたポーチから、狙撃銃とは別の予備用の近接用の銃を取り出し、それを敵にの男に撃ち込む
その予備の銃から放たれた弾丸は、アリサに襲いかかろうとしていた男の武器を、剣の持ち手と刀身を真っ二つにする形で撃ち落とす
ついでと言ってはなんだが、その撃ち込んだ弾はゲーム内での特別仕様の弾で、主に硬い金属などに当たると、それを当たりどころによっては粉々にする『硬化弾』というものを使用している
そしてその弾が当たったとき、とてつもない衝撃がその着弾した物体に生じるという仕様であるため…
アリサに剣を構えていた男の腕は、その衝撃の余波をモロに受けたために、現在利き腕が震えて動かせない状態になっている
そしてその後、再びハッとした様子で剣を構え直したアリサは…
「……ありがと」
そうボソッと俺を振り返りついでに呟いて、また敵を押し返すべく戦線に復帰する
そうしてマルス、アリサがヒナの方に合流して、残り数名になった敵を三人の連携によって無力化していく
そしてそんな三人の後ろにいる俺はというと…
「マルスは前からの攻撃をガード、それからアリサはガードされて仰け反った敵を攻撃してくれ
そしてヒナは攻撃後のアリサの隙をカバーだ」
俺は冷静に戦況の変化を捉え、三人の連携のための指示を後ろから、それぞれに向けて送っていく
そしてそれは、それぞれの特性と戦闘能力を考慮した結果の指示内容だ
まず比較的戦況の判断が出来て、フルプレートによって防御力が三人の中で一番高いマルスをガード役に
次に攻撃力は少し物足りないが、相手の行動をよんで、隙を見て攻撃を入れてくれるアリサをアタッカー役に
最後に三人の中で一番周りを見ることが出来ていて、冷静なヒナをフォロー役に、といった配置で戦ってもらっている
防御、攻撃、フォロー、三つの要素が組み合わさった編成で、安全かつスムーズに敵を倒すことが出来る良い組み合わせだ
そしてその三人を援護する形で俺も敵に狙撃を当てていく
最初は二十人以上いた敵も今では数えるほどになり、最後にはマルス、アリサが同時に攻撃を入れたことによって、最後の一人まで無力化する事が出来た
「よし、これで大体の敵は無力化する事が出来たな
ひとまずコイツらを縛って、全員動けないようにしておこう
……、そういや爺やはどうした?最初は俺、そいつを追ってこっちに来た訳なんだが…」
敵がいなくなったことにより、三人に話しかける余裕が生まれたので、先程から疑問に思っていた爺やの所在について、三人にそう尋ねてみる
戦いに夢中で気付かなかったが、三人と共にいたはずのアリシアの姿も見当たらない
するとそれを聞いたアリサとヒナが…
「攫われたのよ…、その爺やって人に…さっき」
「私たちも、まさかそんなことはないと油断してまして……
追いかけるにも先程の男たちが邪魔になり…」
そう二人は言うと、アリシアを守る事が出来なかったことを悔やんだ様子で、俯き加減になりながら小さい声で呟くように「「…ごめん(なさい)」」と謝罪するのだった
二人の深刻そうな顔は、ここがゲームの中であることを忘れるぐらいに真に迫った表情で、俺は改めてこのゲームのリアリティーの高さに驚いたのだった
そして馬車の中では、あれほど俺に高圧的だった彼女らがここまで落ち込んでいることに驚き、そのためそんな二人の様子に何も言えないでいると…
「んん、二人とも、姫さまが連れ去られてしまった事は仕方のないことだよ
それよりも今は、姫さまをどう取り返すのか?ということの方が重要だと思う
だから、今は二人とも落ち着いて…ねっ?」
三人の中でも一番冷静だったマルスが、二人を気遣うようにそう話しかけ、アリシアをどう取り戻すのかについて、落ち着いた二人と話し合い始める
「ここは、一度王都に戻って…」「でもそれじゃ間に合わないんじゃ…」「いえ、あの口振りですとすぐに殺されるなんて事は…」
三人はそんな風にして、とりあえず馬車の方に歩き出し、アリシアをどう取り戻すかの話について熱心に話し合っている
そしてその場で突っ立っていた俺は、助けるならもっと簡単な方がいいなと考え、ポーチの中から探索用の発信機を取り出す
「とりあえずは、あの爺やの背中にはGPSを取り付けているし…さっさとアリシア返してもらうか」
俺は馬車に乗る際に、不必要なほどに飲み物をアリシアに渡し、それを飲ましていた爺やを元から少し疑いの目で見ていた
そこで馬車に乗る直前で、爺やに挨拶するふりをして近づき、もしもの時の保険として爺やの背中に探査用のGPS装置を引っ付けておいたのだ
そして手元の発信機を見ると、ちょうどこの先にある草原の方角、遮蔽物の少ない見通しの良い場所の方向に、その反応は遠ざかっていく
「距離としては1.4…いや、それより遠い…
敵まで大体1.5kmってとこか?」
俺は大体の経験則上の感覚から、敵との距離を発信機の反応から導き出す
そして、揺れ動く微かな敵の動きから、敵の男、爺やが抵抗するアリシアを抱き上げているか担いで運んでいると予想し、敵の狙撃位置とそのタイミングを計算する
「…大体15秒後に狙撃可能ポイントに到達するな」
俺は遮蔽物が少なく、草原が広がる地面の柔らかい位置に対象が到達するタイミングで、狙撃を行うことを探査機による反応で確認した
そして俺は目標を狙い撃つため、ギリギリ草原が見える位置、対象が通過すると予想される位置に腰を下ろし狙撃銃を構える
そして、ふと狙撃を行う手を離し、少しだけこれまでの事を思い出す
これまでずっとお世話になってきたこの『狙撃銃』
コイツを手にとって、敵と対峙する時間、その時間だけはありのままの自分、他人の目や期待を気にして踏み出す事が出来ない…そんな自分の殻を脱ぎ捨てて、自分がしたいように出来る、そんな自分になれるような気がした
そんな俺はアップデート前の『ガンソードオンライン』では、一人、ソロプレイヤーとしてゲームを楽しんでいた
「自分一人でも戦っていける」「他人と関わらなくても楽しむ事は出来る」と…
でも、そんな考えの俺を変える、そんな出会いが半日だけでも確かにあったのだ
この世界に来て、右も左もわからない俺を心配して応援してくれる人
この世界で初めて俺の力を認めてくれて、一緒に来ないかと声をかけてくれた人
何故だかわからないけれど、俺に懐いて声をかけてくださった人
渋々ながらでも、よく知らない他人の同行を認めてくれた人達
そんな人たちに今日一日だけでも出会い、触れ合って、何でもないような、でも大切にしたいような何かに出会えたような気がした
この世界はゲームの中の世界だけど…、その世界にいる人たちの気持ち、その温かみのようなものは、紛れも無い本物の温かさとして感じる事が出来た
だだのNPCとの出会い、それでも大切な出会い
俺はそんな一つ一つを、ゲームの中であっても大切にしたいと、そう確かに感じる事が出来たのだった
だから今は相棒を手に取る
大切な人たちからの期待、そして寂しかった女の子のワガママに応えるために
そうして回想を終えて我に帰った俺は、再び狙撃銃の引き金に手を戻し、対象が到達する位置に向けて狙いを定める
「(5…4…3…2…1…)」
心の中でゆっくりと、その来たるべきタイミングまでの時間を一つ一つ刻む
そして最後のカウントが終わったそのタイミングで
「みんなとのお出掛けのために…狙い撃つ!」
そう言った刹那に放った弾丸は、キレイに一直線に飛んでいき…その対象の下半身、その脚部を見事に撃ち貫く
そして俺が確認のため、自らが狙撃した場所、その周辺を念入りに視認していると…
その場から動けなくなった爺やの背後からは、泣きながらも安堵した様子のアリシアがパタパタと走ってくる様子が、スコープ越しのレンズを通して見えていたのだった…
戦闘描写メッチャ難しい…
でも、今後もっと頑張っていく予定です
次は主人公以外の人たちの視点かも
少しでも面白い・続きが読みたいと思って貰えたなら、ブックマーク・評価をお願い致します




