戦況打開の一弾
「あれ?あの爺やさんどこに行くつもりだ?
ただ、外に出るだけならあんな風には…
なんか馬車から離れるにして挙動がおかしいぞ?」
俺は窓から見た景色に、不審な人影を確認してそう呟いた。
俺は女性陣+マルスさんたちが馬車を出てから五分
先頭の馬車の中で待機しているはずの爺やさんが、馬車から周りを警戒するように降りだし、キョロキョロと辺りを見回しながら、マルスさんたちが向かった森の方に歩いて行くのが窓から見て分かった。
俺はその様子を窓から伺っていたが、この後どうしようか?とそう考えた。
あの爺やさんの様子はただ外に出るにしては、不審な動きが多かった。
あんなに辺りを警戒しているなんて、不審ですと言っているようなものだ。
それにもしもの為に後をついて行くべきなのかもしれない。
「(でも俺は先程ヒナさんに、絶対に馬車を出るなって言われちゃったし…
途中でヒナさんたちに見つかったりなんかしてしまえば…)」
そこまで考えてどうしようか悩んでいると…
ニカさんに言われた「あんたはまだ初心者なんだから」という言葉を、俺はふと思い出した。
「俺はまだ"初心者"冒険者……ゲームに慣れてるって言っても、この世界の俺はまだ"初心者"なんだ…
まだこの世界のことを理解してない俺は、色んなことを警戒し過ぎるぐらいに警戒したほうがいいよな…
よし決めた!もしものときのために爺やさんの後を追うことにしよう」
俺はニカさんにかけて頂いた言葉の数々によって、後悔しない選択肢を選ぶためにそう決めると、不審な動きを続ける爺やさんの後をコッソリと追うことにしたのだった…
ーーーー道を外れた茂み・アリサ視点ーーーー
「おい!そこにいる奴ら!死にたくなかったら
その小さな女の子を置いていけ!」
突然ヒナの後ろの木陰から、1人の知らない男が現れた。
そしてその男は私たち、いえ…正確には私の隣にいたアリシアさまを見ながらそう言ってきたのだ。
私、新庄 亜里沙は、突然の男の登場に、驚きよりも戸惑いを感じていた。
なぜ?なんで今ここに、知らない男がいるの?
そんな疑問で頭がいっぱいになり、その男の要求に反応することが出来なかった。
「(おかしい…、私たちが通る道は、人通りの少ない比較的安全な道を選んできたはずよ…
それなのに、私たちが休憩するちょうどそのタイミングで盗賊が現れるなんて…不自然なことだわ…)」
もし、これがたまたま起きたことであれば、運が悪かったと思うだけなのだが……
これが本当は誰かの差し金であれば、誰が一体、どうやってこんなことを…?
そんな風に少しだけジッと考えていると…
ガサガサ!!!
そんな草を掻き分けるような音が聞こえたかと思うと、10〜20人の男、それも手に武器を持った男たちが続々と私たちを囲むように姿を現したのだった。
「(しまった!)」
そんなことを叫ぶよりも先に、男たちが完全に私たちを取り囲み、その中にいた先程話しかけてきた男が、なおも私たちに姫さまを差し出すようにとの要求を突きつけてくる。
「聞こえなかったか?今すぐその子供を俺たちに寄越しな!さまなくば、お前たちの命はないと思え!」
なぜという疑問で私の頭の中はいっぱいだったが…
今はこの男たちからアリシアさまを守ることが第一だろう。
私たちはアリシアさまの前に立ちはだかるようにして、男たちに応戦すべく武器を構える。
そして……
「姫さまには手出しをさせない!たとえ人数的に不利だとしても、私たちは最後まで戦い抜くわ!」
私がそう宣言すると、マルスたちと共に男たちの攻撃に立ち向かう。
キン!キン!ガン!!
私は男たちからの攻撃を、この数日で鍛えた剣の腕とシステム的アシストによって、それなりに応戦することが出来ている。
特に、敵の攻撃にアラームが鳴ってくれることが、かなり敵の攻撃への反応に役立っている。
人数差が凄まじいが、今のところ私たちはなんとか持ちこたえることが出来ている、出来ているのだが…
「(相手の数が多過ぎて、敵に致命傷になるほどの一撃を入れられない!
アリシアさまを守らないといけないって考えがあるせいか、敵への追撃に踏み込めない!)」
私は不安そうな様子で、後ろから私たちを見守っているアリシアさまを横目に、心の中でそう呟いた。
私たちが囲まれてしまっているというのも、現在この戦況を停滞させている原因の一つである。
逃げることが出来ず、かといって攻めることも出来ない私たち…このままではこちらの体力的にも状況はもっと不利になる一方だ。
そして、そのことを分かっているのだろう…
男たちは無理には攻撃せず、じわじわと攻め入ってくる感じで、私たちの体力切れを狙っている様子だ。
するとそんな緊迫した状況の中…
「くっ!アリサ!ヒナ!救援用の閃光玉を使ってくれないか!
もしかしたら、ソーマくんがそれに気づいて助けに来てくれるかもしれない!」
私たちよりも一歩前に出て、男たちと応戦していたマルスが、鎧に包まれた顔を少しこちらに向けながらそう言ってきた。
それだけ言ったマルスは、余裕がない様子ですぐに男たちの方に向き直り剣を振るう。
私はそんな風に余裕のない切迫した状況の中、マルスが連れてきた男、ソーマという冒険者について考えていた。
この世界、『ガンソードオンライン』のアップデートによって大きく変わってしまった世界で知り合った
おそらくCPUの一般男性冒険者、目が良いのと、風魔法というものを使えるらしいのだが…
ハッキリ言ってマルスから少し聞いただけの情報なので、強いやつなのか全くわからない。
なぜマルスがあの男をわざわざ選んで来たのかはわからないが、マルスが言うには使えるやつらしい…
しかし、私やヒナからのソーマを見た印象といえば
「(すごい弱そうで…気弱な、頼りない男
たまたまアリシアさまに気に入られただけの、そこら辺の男たちと変わらないやつ)」
それが私たちの、特に私からの印象だった。
馬車の中では、ソーマはこちらを変な目で見てくるような事はなかったが、それはアリシアさまが近くにいたからというだけなのだろう。
どうせ男なんてそんな奴らばかりなのだ…
そして今、そんな頼り甲斐の無いやつ、それも男の力を借りないとダメなんて!
私とヒナはどうしよう?と目だけで会話したが、マルスが言うなら…ということで、仕方なく閃光玉を投げる事にした。
バッシュ!!!
上空に打ち上げた閃光玉がそんな音とともに、閃光の如く眩い光を周囲に撒き散らす。
どうかお願い!誰でもいいから、今の状況を変える何かを起こして!
そんなことを思ったときだろうか?
「あっ!?」
そんな声が後ろから聞こえたかと思うと…
「じいや!?や、やめるでしゅ!
やめ!んん!むぅ!!ぅぅ!!」
閃光玉を投げ、なんとかその勢いで背後への退路を確保して後退していた私たちの背後から突然、アリシアさまのお付きの執事である爺やが現れた。
かと思えば突然、アリシアさまの口元を塞ぎ、自身の体の方に乱暴な手つきでアリシアさまを引き寄せると…
「お前たち!姫さまの身柄は無事確保出来たぞ!
作戦はこれで十分だ!あとは、この者たちを足止めしてワシが逃げる時間を稼ぐのだ!」
なんと爺やは、アリシアさまを片手に抱きながらそう宣言したのだ!
そして爺やは、その宣言に呆然としていた私たちの脇を通り過ぎ、盗賊たちの中に紛れるようにして奥へと走り去っていく。
「待て!」
マルスがそう言って、姫さまたちの後を追おうとすると…
「はっ!行かせるかよ!おい!お前ら!
こいつら3人を足止めするぞ!
何があってもターゲットの方に行かせるな!」
最初に私たちを脅してきた男がそう言うと、他の男たちは私たちに通せんぼをするかの如く、進路を塞ぐようにして立ちはだかる。
それには私たちも逃げた爺やの後を追うことが出来ず…
「邪魔しないでよ!早く行かないと!
アリシアさまの行方が!そこをどいてよ!」
ただそう叫ぶことしか出来ず、強引な突破を試みるも跳ね返されるばかりなのだった…
どうすればいいの!?
そんな風に、ただ走り去っていく爺やのことを、私たちが目で追うことしか出来ないでいると…
ズシュン!!!
そんな大きな音、どこか銃声に似た音が響いたかと思うと…
バタッ!
さっきまで目の前で私たちに話していた、盗賊の中のリーダーと思われる男が突然倒れ伏したのだった。
どういうことか分からず、敵も味方もその倒れた男を見て固まっていると…
バシュ!! バタッ! バシュ!! バタッ!
連続で背後から音が聞こえたかと思うと、その倒れた男の後ろにいた盗賊、2人並んだ男達も銃声のような音とともに倒れ伏したのだった
そんな突然の出来事に私は、思考が追いつかないでいると…
「悪い待たせたな…マルス、アリサ、ヒナ
あとの敵は、全部俺が狙い撃つ。
お前たちは敵の攻撃を受け止めるだけでいい」
またしても私たちの背後から突然現れたもの…
噂の男であるソーマが背後から私たちにそう言ってきたのだった。
突然現れたことに驚いていた私とヒナは、彼のその言葉がにわかに信じ難く、どうする?と二人で顔を見合わせていると…
「助かった!ソーマくん!危ない所をありがとう!
わかったよ、私たちはこいつらの迎撃だけをする
ソーマくんはどんどん敵を撃って欲しい!」
即断したマルスは、ソーマに感謝を伝えると、ソーマの指示に従うべく、敵の迎撃だけの態勢に戦い方をシフトさせた。
それはもう…完全にソーマが敵を全て倒すということを信頼しきったカタチだった。
それを見た私は、「なんでこんな所に一人で来たんだ」とか、「突然私を呼び捨てにするな」とか、色々言いたいことはあったのだが…
今はとりあえずというか、仕方ないことなので
「こいつらをなんとかしなさい!ソーマ!
これで上手くいかなかったら承知しないわよ!」
私はそう言って前に出ると、敵に向かって、手に持った大きな銃らしきものを後ろから構えるソーマの前に立ち
マルスとは横に並ぶカタチで、私たちを狙う敵の攻撃に対して迎撃し始めるのだった。
そうしてその様子を見ていたヒナも、ソーマの加勢が、戦況打開の一弾になると信じることにして
私たちに並ぶようにして、敵の攻撃を迎撃し始めるのだった…
ここでようやくソーマの参戦
次はソーマが頑張る回かも(おそらくソーマ視点)
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