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逃れることはできない


「ソーマしゃんどこをみてるんでしゅか?

アリシアもいっしょにみたいでしゅ!」



現在俺は姫さまのお出掛け、その護衛…というより、危険が迫ってないかを警戒する『目』としての役割を果たすために姫さまたちについて来ていた


その後俺がどこに座るのかで一悶着あったが、アリシアさまの意向もあり、俺はアリシアさまの隣、マルスさんたちの対面に座ることになった

なったのだが……


「あ、あの?アリシアさま?

ちゃんとそちらの窓からも外は見れますよ?

だ、だから僕の膝に乗るのは…」



そう…アリシアさまは先程の『アリシアもみたいでしゅ』の発言から、俺の視線の先、俺側にある窓を見るべく、ぴょこんと俺の膝に飛び乗って、ニコニコしながら同じ窓から外を見ている状態なのだ


「じぃー………」



そしてさっきから、アリサさんからの視線が痛い

なんかもう目だけで、「死ねロリコン」と言われているみたいだ

俺としては、小さい子供の可愛い行動に思えて、あまり強く拒絶しようとは思わないが、他の、それも女性陣からは冷たい視線を感じるので、これはマズイ事なのだろう



そんなこともあり、一刻も早くアリシアさまに膝から下りてもらいたいのだが…


しかし当の本人、アリシアさまはどこ吹く風で、「ふん、ふふ〜ん」と鼻歌混じりに、外の風景を楽しんでいるのだった



これはどうしたものかと、俺が頭を悩ませていたタイミングで、場の空気を変えるかのようにマルスさんが俺に話しかけてくれる


「そういえばソーマ君は、先程のギルドで放った魔法以外にどんな魔法が使えるんだい?

見たところ、風魔法?を放てるその後ろの筒以外、ニカさんから貰った反射刀しか持ってないようだが」



マルスさんはそう言って、俺の背中にある『狙撃銃』と、腰に付けた『ニカさんからのナイフ』をチラリと見る


どうやら、先程の狙撃は風魔法として認識されたようだ

説明すると面倒なので、その認識のままで通させてもらおう



とりあえず、この場で女性二人から冷たい視線に晒されているのは居心地が悪いので、マルスさんの会話の方に意識を割くことにしよう


「えっと…お恥ずかしい話ですけど

俺…、その、か、風魔法ぐらいしか使えないです…

あとは少し目がいいぐらいで…」



マルスさんとは、直接目を合わせるわけじゃないため(鎧からは目が合わないため)、比較的キョドらず話すことが出来るのだが、少し嘘をついているという罪悪感から気弱そうに返事をしてしまう


するとそんな態度を見てか、マルスさんは「ああ、すまない」と謝罪をしてくれる


「いや、あの風魔法だけでも立派なものだよ

他が使えなくても、気にすることはないさ

私の場合は剣術以外はからっきしでね、逆に魔法が使える君の方が少し羨ましいよ」



と、少し苦笑しながら謝罪だけでなく、俺のことを気遣うような事まで言ってフォローしてくれる


マルスさんいい人だ!


俺はマルスさんの紳士っぷりに、たぶんこういう人が現実でも成功する側の人間なのだろうなと、そう思った



たぶんこんな感じで、マルスさんは鎧の下の素顔もイケメンな感じなのだろうけど、ここまで紳士的だと、そのことに嫉妬する気も起きてこない

ていうか、もし素顔がイケメンじゃなくても、雰囲気も態度もイケメンなので問題にはならないだろう


もしかしたら、アリサさんとヒナさん、二人はマルスさんの恋人なのかもしれないが、マルスさんほどの紳士的な方だったら、それも仕方ないと思えてしまう



俺が逆の立場であれば、間違いなく惚れているだろうと、若干変なことを妄想をしていると…



ぱっ!


そんな俺を現実に戻すように、急にアリシアさまが俺の膝から飛び下りる

俺はさっきまであんなに夢中で外を見ていたのに、どうしたのだ?そう思ってアリシアさまの方を見ると…


「ぷるぷるぷる………」



アリシアさまは、なぜか何かを我慢するかのように、スカートを握りしめて震えている


どうしたんだ?


俺は少し心配になり、何があったのかをアリシアさまに尋ねてみる


「あの…アリシアさま?どうかしました?

少し震えているようですが…」



そう俺が目線を合わせて尋ねてみたところ

なぜかアリシアさまは、顔を真っ赤にしてマルスさんたちの方をバッと見る


なんだ?なんだ!?と疑問に思っていると…


「あー、ソーマくん?少し休憩にしないか?

馬車も止めてみんなで休憩しようか

姫さまは少しだけ外の空気を浴びにお行きになるけれど……君は馬車の中で待っててね?」



そう言って、マルスさんたちは馬車を停車させるや否や、すぐに姫さまを連れて馬車の外に歩いていく

すると、ヒナさんが突然パッとこちらを振り返り…


「あなたは決して外に出てはいけませんよ?

もし、勝手に外に出たりなんかすれば……わかりますよね?」



と、先程の冷たい目よりもさらに恐ろしい目で俺を振り返ってから、それだけを言い残すとヒナさんは三人の後を追っていった



ぽつーん………


最後のヒナさんが外に出て、みんながいなくなった馬車の中で、一人になってしまった俺はというと…


「えっと…、よくわからないけど…

馬車の外には出ないようにしよう…」



そう一人寂しく、独り言のように呟くしかなかったのであった…





ーーーー道を外れた茂み・ヒナ視点ーーーー


「あなたは決して外に出てはいけませんよ?

もし、勝手に外に出たりなんかすれば……わかりますよね?」



私こと、立川たちかわ 日菜ひなはとある冒険者の男、ソーマという名前の男に向かってそう言い捨てた


もし外に出て来たらなんかすれば、この世に生まれてきた事を後悔させてあげる(まあ生まれてくるも何も、彼はこのゲームに出てきたただのNPCみたいなものなのだろうけど…)

私はそんな思いで、彼にそう言ったのだった


そしてそう言われたソーマはというと、少し気弱な顔で「はい…」と頷くのだった



私はそんな頼りない彼の表情と声に失望を隠しきれないでいた


「(大体、なんで彼がこのお出掛けについて来たのですか?

マルスさんには言わなかったけど、3人の共通認識として、女の子の『目』の役割を連れてくる筈だったというのに…

それを男の…それも頼りないかたを連れてくるなんて…あとで追いついたときに彼女には言っておきましょう)」



あの時も(ヒナ自身にとっては)やんわりと言ったのだが、彼、ソーマが今回の旅についてくるのに、私は反対だった

なぜかマルスさんは彼を気に入っているようだが…

私にはただの頼りない男にしか見えず、とても不満だったのだ



そもそも、私、いえ私たちが王城を出て…

冒険者紛いの仕事をやっているのは、男たちから遠ざかる為なのであった



私とアリサさん、それに後から知り合ったマルスさんは、『ガンソードオンライン』の新規アップデートによって、この国の王城に召喚されただけのただのユーザーだった

もともとアリサさんは、元の世界、日本でも同級生の知り合いで、アリサさんからの誘いがあり今回のアップデートを機に、初めてこのゲームをプレイしてみたのだった


初めは音ゲーなどを好んでプレイしていたため、あまりこののゲームには興味がなかったのだが、アリサさんの熱意に押し切られた形で『ガンソードオンライン』を始めてみた訳だ


そして実際に、この世界に召喚されて、皆が動揺している少しの間自由に体を動いてみると…まるで現実世界での自分がそのまま動いているかのような気分に陥った

そしてそんな感覚の中、実際の王城のようや風景が目の前に拡がっている事も相まって、まるでおとぎ話の世界に自ら入って行くかのような感覚になり、とても興奮したのを覚えている


そのため、この世界での貢献、そのためのミッションとなるものは、アリサさんと一緒に、おとぎ話の勇者たちのように頑張ってこなしていこうと、そう思っていたのだ



そしていざ初めてのミッションとも思われる、最初の姫さま(これは王国の長女さま)の言う言葉

それに従い、国を守る王国の騎士として頑張ろうかと思ったのだ…思ったのだが、現実はとても酷いものだった


「君可愛いね、騎士とはどんなものかについて僕が手取り足取り色々教えてあげるよ……色々ね」



「二人ともすごい美人さんだなぁ

も、もしよかったら訓練が終わった後にでも

一緒にお食事に行きませんか?もちろん俺の奢りです!」



と、こんな風に訓練が始まって早々、様々な男たち(ゲームユーザーの男性プレイヤーも含む)から私も、そしてアリサさんもかなり言い寄られたのだった


そのため、言い寄ってくる男たちをあしらう事に精一杯になり、初日からすでに訓練どころではなくなってしまったのだ


なぜこんなにも言い寄られてしまうのか?



それはこのゲームのシステム、キャラクター生成システム自体の所為なのであった…



このゲームは、VRゲームの最先端ということもあり、ゲーム内のキャラクターはとても繊細に作り込まれている

そしてそれは顔形、体の凹凸も含め、生身の人間にも引けを取らないレベルの作り込みで、リアルの世界からそのまま人だけをこの世界に合わせて連れてきたようなものなのだ


そのこともあり、このゲームでは倫理規定という観点から…

ユーザーのリアルでの脳波をゴーグルによって読み取って、それによってその人物のリアルでの性別を読み取り、この世界での性別を強制的に決定させるというシステムになっているのだ


そして、その読み取りはその人のリアルでの外見にも及んでいて…

それによって、このゲームには珍しい女性プレイヤー、それもリアルの容姿に似通った、(自分で言うのは少し恥ずかしいが)少し整った容姿をしたキャラクターが誕生してしまったという訳なのだ



そんな他のプレイヤーと少し違う私たちには、現実と同じ…いや現実以上に変な男たちが寄って来たために、私たちは途中で知り合ったマルスさんを含めて、任務という形で王城を抜け出して来たという訳なのだ



全身フルプレートの騎士、マルスさんがともに行動することになった話についても色々ありますが…

まあ、今は別にいいでしょう

今はそれよりも男…ソーマという人が今回の任務についてくる事になったことの方が重要です



そんなわけで私たちが彼の参加を反対したにも関わらず、それでも彼がついてくる事になった理由は…


「姫さまが彼から離れてくれないことですね…」



先程馬車の中であったように、彼になぜか懐いてしまった姫さま、アリシアさまは、父親である国王さまにも見せないような笑顔を浮かべて、彼と話したり、彼の真似をしたりしていたのだ

その小さな手は彼の体を掴んだまま離れず、やむを得なく彼を連れて行く事になったという訳だ


そして何よりも驚いたのは…


「まさか姫さまが、おトイレに行く事を彼の前では言葉にしなかったのは驚きました…

まあ、普通女の子は恥ずかしがるべきなのですが…

姫さまがあんなに恥ずかしがったのはビックリです」



そう、先程彼を馬車に残して外に出てきたのは、姫さまがトイレ、用を足しに行くためだったのだ


王族のそれも女の子が男の前でトイレに行くと言うのは恥ずかしい事だが、姫さまはまだ幼く小さい

そのため、いつもは「おトイレいきたいでしゅ」とよく言うことはあったのだが…今回は違ったのだ



今日の姫さまは、まるで、好きな人に自分の知られたくない秘密を知られそうになった女の子のような反応で、顔を真っ赤にしながら、目と仕草だけでトイレに行きたい事を伝えてきたのだ


それを見たマルスさんを含めた私たちは、姫さまをトイレに行かせるべく、馬車を停車させ、外に出てきたというわけだ



「(彼のあの様子なら…外に出てくるようなことはないでしょう…)」



私はそんなことを考えながら歩みを進め、もう1人の相方アリサさんを含む、姫さまたちが無事こちらに帰ってくるところを確認する


私は少し早いですねと思いながらも、彼女たちに声をかける


「お早い帰還ですね?その様子ならちゃんと間に合ったと見受けられますが…

どうかしました?何やら難しそうな顔をしていますけれども」



帰って来た姫さまは、尿意が収まったことにより、少しスッキリした顔でペタペタとこちらに歩いて来ているのだが、そのとなりを歩くアリサさんの顔が何やら優れないので、そう尋ねてみた


するとアリサさんは「ええ」と頷き


「何か嫌な予感がするのよ…何がどうとは言えないのだけれど…

外に出てからより強く感じるようになって…一体何なのかしら?」



アリサさんはそう言うと腕を胸の前で組み、その違和感について何かないのかと考えだすのだった



アリサさんのカン

それはゲームにおいても、現実においても妙に鋭いところがあり、なかなかその話を、アリサさんの嫌な予感をバカにすることはできない


もしかしたら何かあるのでは?と、その話を聞いて私も何かないのかと思い、私もその嫌な予感の正体について考えいると…



「おい!そこにいる奴ら!死にたくなかったら

その小さな女の子を置いていけ!」



突然背後からそんな男の声が聞こえたかと思うと…


ガサガサ!!!



他の木の陰、茂みの中からも盗賊風の男たちが突如続々と姿を現しだす

そしてその男たちは、驚きのあまり固まっていた私たちをその隙に一斉に取り囲む


これは一体どういうことですか!?

私が驚きのあまり何も言えずにいると、男は再び…



「聞こえなかったか?今すぐその子供を俺たちに寄越しな!さまなくば、お前たちの命はないと思え!」



先程、私の背後から声をかけて来た男が改めて、そう私たちを脅してくる

そしてその男の仲間、茂みから現れた奴らは皆一斉に武器を構え、こちらに狙いを定めてきた


私はその様子を見て、彼らが本気で私たちにそう要求してきていることを理解した

それと同時に、この人数からは姫さまを連れた状態では逃げることが出来ないことも理解した



こうしてアリサさんの嫌な予感は見事的中してしまい…

私たちは盗賊風の男たちと戦うことになってしまったのだった…


ちょっと、分量が多くなってしまいました…

そして、ソーマの活躍は次あたりですね


時間的矛盾から、第3話の一部場面を変更致しました


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