お転婆姫アリシアさま
「ちょっとソーマしゃん!なんでかってにどこかにいっちゃおうとしゅるの!
アリシアのとなりにちゃんといなしゃい!」
これは一体どういうことだろうか?
俺は目の前でそう言ってぷりぷりと怒っている幼女(姫さま)を見てそう思った
「あ、あのアリシアさま?俺は…いや僕は前方の馬車で、周りの警戒をしなければいけないので…
ちょっと、一緒の馬車に乗って行くのは…」
俺がそう言って、やんわりとアリシアさま(4歳)のワガママを受け流そうとすると…
「いやー!やーなの!ソーマしゃんはアリシアのとなりにしゅわるの!
じいやひとりでまえにいけばいいの!」
そう言って、いやいやと首を左右に振って駄々を捏ねて、俺を含めマルスさんたちとアリシアさまのお付きの爺やさんまでを全員困らせるのだった
こうなってる理由は…30分前に遡る……
ーーーー30分前・街の外にてーーーー
「すまない、少し遅れた…アリサ、ヒナ長く待たせてすまなかった
それで…姫さまは今どこに居られるのだ?」
少し歩いたのち、俺たちは街の外、マルスさんの仲間であるアリサさん、ヒナさんのいる場所に到着していた
そしてそこで2人は初めて見たのだが、2人はマルスさんと違い普通に冒険者風の姿だ
アリサさんは、赤髪、黒目のロングストレートで少し気が強そうな女性だ
ヒナさんのほうは、黒髪、黒目のボブカットで大人しめの女性である
どちらもジャンルが違うが美人さんで、日本にいれば間違いなく芸能人なりアイドルなりにスカウトされるであろう美貌を誇っている
個人的には人付き合い的な意味で、男性の方がまだコミュニケーションを取れるかと思っていたのだが…
2人とも女性、それも両方美人とは気の重たい話だ
俺はとりあえずはマルスさんの指示を待とうと、マルスさんの後ろで3人の会話の様子を眺めていると
赤髪の女性、アリサさんがマルスさんの問いに答える形で話し始める
「ええ、それは予想していたことだし大丈夫よ
それにそれ程は待っていないしね…
それと姫さまの事なのだけど、今は馬車の中に居られるわ
休ませる意味も込めて、今はそっとしておいているの
……っで、本題に入るのだけど…その男は誰?
まさかとは思うけど、このお出掛けに連れて行くなんて言わないわよね?マルス」
「いや、お前たちに相談出来ずに決めてしまってすまないが…
彼、ソーマくんを今回、『目』の役割としてついて来てもらうつもりだ」
「どうしてよ!?『目』の役割なら私やヒナがやれば!私たちがいればそいつなんていらないでしょ!」
と、言った様子でアリサさんはいきなり不穏な発言をして、こちらをギロリと睨んでくる
怖ぇ!!!
普通の人に比べて、かなり美人なアリサさんに睨まれると、その怖さも1.5倍増しだ
他人に睨まれるだけで、蛇に睨まれたカエル状態になると思われる俺は、今現在、美人から睨まれ、蛇に睨まれたカエルならぬドラゴンに睨まれたカエル状態だ
そうして何も言えないで心の中でアヒアヒしていると…
「アリサさん、そんな態度では駄目ですよ
ほら、彼もあなたに睨まれて動けなくなってるじゃないですか
アリサさんは迫力のある方なんですから、無闇に睨んだりしてはいけませんよ」
そう言って、ヒナさんがアリサさんをたしなめる形で、助け舟を出してくれる
ああ!ヒナさんが俺を助けて?
俺にやっと味方が!?と思ってヒナさんの方を期待した目で見ると…
「まあ、でもマルスさん?
アリサさんの言う通り、私たちがいる事ですし
彼には帰ってもらいましょう
そもそも、唯の『目』というだけで、私たちの中に男を入れるなんてあり得ません
そのリスクはあなたも承知でしょう?マルスさん」
と言って、こちらをチラリと見たのちプイッとマルスさんの方を見て、アリサさんと2人でマルスさんに詰め寄る
俺の立場って…
俺は2人ともに嫌がられていることに気がつき、呆然としていると…
突然前方に止まっていた馬車、その扉がガチャリと開いた!そして中からは…
「こらー!いつまでわたちをまたちぇるの!
はやくあそびにいきましゅ!」
そう言いながらぷりぷりと怒っている、とても整った顔をした小さな女の子、おそらく姫さまと思われる人物が姿を現したのだった
俺はその突然の登場よりも先に、そのあまりの小ささに驚いた
おそらくは身長は100センチちょっと超えたぐらいで、ギリギリ馬車の扉に手が届くぐらいの身長だ
俺の勝手な予想だったが、姫さまは少なくとも中学校〜高校生ぐらいの年齢だと思っていたのだが…
まさかの幼稚園か小学校入るかぐらいの年齢だったということに驚きだ
そしてそんな思いの俺を余所に、姫さまはなおも怒った様子で続ける
「だいたい、みんなどこかにいきすぎなのでしゅ
『お出掛けなんて!』とか『お勉強してなさい』ってみんないいましゅ…
そうやって、いつもわたちのこと……」
最初は怒っている様子だったが…後半は勢いをなくし、声が小さくなっていき聞き取りづらかった
そして、少しだけしょんぼりした、どこか寂しげな表情を姫さまは浮かべる
姫さまと言っても、やっぱりまだ子供で……
そしてなんだか姫さまのそんな表情を見て、俺はもやっとした気持ちになる
「(………、なんだか小さい子供の、それも女の子のこんな顔は見たくないな…)」
そう思った俺はマルスさんの横を通り過ぎ、姫さまの近く、馬車の扉の前に立ち
「申し訳ありませんでした姫さま…
もうすぐ出発すると思いますので、少々お待ちくださいませ
そして姫さま、誤解がないように僕から言わせてもらいます
今回お出掛けの準備に時間が掛かっているのは、皆が姫さまのことを考えてのことです
そして姫さまが安全、安心であることがマルスさんたちの、みんなの願いなんです
ですから、どうか姫さまのことを真剣に考えている人たちがいることを忘れないでください」
俺がそう、扉の前で俯き加減でいた姫さまに伝えると…
ばっと姫さまは顔を上げ、俺の目をまじまじと見つめ「ほんとうでしゅか?」と尋ねてくる
俺は若干照れ臭くなって、少し目を逸らしそうになる
しかしこれで姫さまから目を逸らしてしまえば、胸を張ってニカさんに報告できない!俺はそう考えて、なんとか目を逸らさず姫さまの視線に真っ直ぐに目線を合わせる
そしてそのうち、照れ臭さも次第に薄れていって…まだ少し不安げだった姫さまに俺は笑顔で続ける
「ええ、本当です!姫さま!
みなさん全員が、姫さまのことを大切に思っていますよ
ですから姫さまは1人じゃありません!安心してください!」
俺はなるべくこの子が寂しくならないように、大切にされているということを強調するようにそう言うと
「そうでしゅか…わたちがたいせちゅ…
みんながわたちをかんがえてゆ…
うん…、うん!そうでしゅ!じいもまるすも
みんなが『大切』って言ってまちた!」
そう言うと姫さまは、大切に思われていることに嬉しさを感じたのか、その小さな体全体を使ってぴょんぴょんとその場で飛び跳ねる
そして、「ありがとうございましゅ」と言って、ヒマワリのような輝かんばかりの笑顔を俺たちに見せてくれるのだった…
そしてその後、出発前までずっと姫さまに俺は話しかけられていて、マルスさんたちとの話し合いどころではなくなってしまった
(それと、俺の参加の件は姫さまが俺を離してくれないことから、半ば強引に決定した)
そして、出発前にずっと話し合っていたことも相まってかなり姫さまに気に入られてしまったのだった
そうして出発の時間となり、冒頭の悶着が行われたというわけであった…
ちなみに、アリシアさまが俺のことを『ソーマしゃん』と呼ぶのは、『ソーマのお兄さん』と呼びたかったが、まだ舌足らずな所があり、『ソーマお兄さん』、『ソーマさん』、『ソーマしゃん』と変化していったという訳だ
まだまだ、幼いことから見ていてハラハラする事もあるが、とても可愛いので見飽きない
というか、見ときたい
(あっ、でも俺はロリコンじゃないので、そこんとこヨロシク…)
初のヒロイン候補、アリシアさま(4歳)が登場!
これを本当のヒロインにしたら、ソーマくんまじのロリコ……なんでもないです
次、ようやくお出掛けスタートです
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