狙い撃つ
「おや?アンタ見ない顔だね…アンタ新入りかい?」
俺が冒険者ギルドに到着して、どうしよう…とギルドの掲示板を眺めていると、後ろから中年ぐらいの女性、ギルド職員と思われる人に声を掛けられた
俺は突然話しかけられたので、とても驚いてしまったが、こんな所で訳もなく一人でキョロキョロしていればそれは不思議に思うだろう
「あっ、はい。その…まだ新入りにすらなれてないんですが…、冒険者になるにはどうすれば?」
俺は少しキョドリながらも女性にそう答えると
「なるほどね、アンタ新しく冒険者登録しに来たってところかい。
よし!じゃあこっちのところに来な。このギルドの看板娘のニカさんが案内してやるよ!」
と言ってニカさんはニカッと笑い、俺をギルドのカウンターに案内してくれる
ニカさんって本名なのか?と多少疑問に思いながらも、とりあえずは彼女に着いて行く
そして言われるがままに、彼女の待つカウンターの前の椅子に腰掛ける
「じゃ、今からギルドのことについて説明するよ
それで、アンタが言ってた冒険者についてだが…」
そう言うと、ニカさんはギルドについて、中でも冒険者の基本や依頼の受け方や報酬についてなどさまざまな内容について、見た目にそぐわぬ、丁寧な説明で俺にしてくれた
そして、話を聞き終えて大体の内容を俺なりにまとめてみた
①冒険者の登録は、冒険者ギルドで行う
(冒険者になれば、自分で依頼を受け、それを達成し、それをギルドに報告して報酬を獲得するようだ)
②ギルドの依頼には、各ランクごとに受けられる依頼が違い、初めての冒険者はFランクからのスタートらしい
(これは変わったシステムなのだが、この世界のギルドランクアップは全ギルド内での、依頼成功率、その依頼の質などを評価して、月一であがるらしい)
③依頼を受けていない状態での依頼達成でも、ランクなどは関係なく報酬などは貰えるらしい
(ただし、正式な手順ではないため、月一の評価の対象には入らないらしい)
といったところが大体の大まかな内容だ
他にも、どこに何があるのかという簡単な説明を受けることができ、大概の場所と位置は確認することが出来た
俺はニカさんに「ありがとうございます」と言って、席を立ち上がろうとすると
「ああ、ちょっと待ちな…、えーっとなんだっけ?アンタの名前は?」
「そうですね…俺の名前は…宗馬、
ソウマと言います」
一瞬この世界でも、『ガンソードオンライン』に引き続き同じ名前、『S』を名乗ろうと思ったが、ゲームの中とはいえ、こんなに親切にしてくれた人に意味のわからない名前を名乗のるのはどうかと思い、本名の宗馬と名乗った訳だ
俺がニカさんの問いにそう答えると、「おお!ソーマって言うのかい」と気のいい返事をして、徐に机の下から何かを取り出す
「ほら、見たところソーマはその後ろのよくわからない黒い筒しか持ってないみたいじゃないか
こいつは初心者のソーマへのささやかな応援だよ」
ニカさんはそう言うと、机の上にちょっと短めのナイフ、どちらかというとダガーのようなものを俺に差し出してきた
俺は思わず「えっ?」と呟き、訳がわからずニカさんの顔を伺うと
「受け取りな、これは今からアンタのものだよ
あたしは昔から色んな冒険者たちを見てきてるが、アンタほど落ち着いた目をしているのは初めてだよ
だがまあ、アンタが冒険者初心者であることは変わりがないからね…
身を守るためにも、このダガーを持っておいき。
ちゃんとそれを持って生きて帰ってくるんだよ。」
ニカさんは、本当に心配してくれているようで、俺の装備が少ないことに不安を覚えたのか、このようにダガーを無償で与えてくれた
こんなことって…
そのゲームの中とは思えない、人間味あふれる行動に衝撃を受けた俺だったが…
このまま黙っているのは申し訳ないと思った俺は、そのダガーをありがたく受け取って、ニカさんに感謝を伝える
「あ、ありがとうございます!ニカさん!
こちら(の世界)に来て、ちょっと不安だったんですが、ニカさんみたいな優しい方もいらっしゃるって知って、とても安心しました!
まだ初心者かもしれませんが、俺の出来る限りで頑張っていきます!」
俺が今言える出来る限りの誠意を込めてそうニカさんに伝えると…
ニカさんはその名と同じ、ニカッと笑顔を見せると、「よし!いい顔だ」と言い
「頑張りな!そしてこれが初心者にオススメの依頼だ『ゴブリン討伐』これをしっかりこなして来な」
そう言うと、わざわざ俺のために見つけてくれていた、初心者向けの依頼の紙を渡してくれる
俺も最初は簡単なものから始めようと思っていたし、何よりニカさんからの物なので…
俺は快くそれを承諾し、その依頼を受けようとその紙に手を伸ばした
そのとき!
「きゃあ!物盗りよ!誰かそいつを止めてぇ!」
ギルドの建物の外の方、ちょうど俺の席から見えていた場所で、女の人のカバンを中年ほどの男が持ち去り、走って行くのが目に映った
だが、その女性の声が比較的近くから聞こえたため、誰かがそれを止めるだろう…と、その様子を眺めていると
あろうことか、外にいる人たちは何やら眺めているだけで、誰もその男を捕まえようとする者はいなかった
はぁ、しょうがない
俺はその事件がたまたま俺の見える位置で起きたという事と、なおかつその男まで人だかりが綺麗に割れていて、見晴らしがいいという条件から…
背中に背負ったスナイパーライフルを軽く両手で体の前に構え、その照準を男が走り去る少し前方、何もない地面に向けて構える
この距離ならギリギリロック範囲の少し外、いつも敵を狙い撃っている距離の5分の1ほどの間合いだ
銃口を男の走り去る前の地面、いつも通り狙い撃つだけだ
俺はシステム的アシストの届かない、赤ロックにならない間合いからの射撃を放つ
「お、おい!君は何を…」「狙い撃つ」
一瞬誰かの声が聞こえたような気がしたが、目標を狙い撃つ態勢に入った俺には何も届かない
バシュ!!!「うおぉ!?」
そうして、俺が打った1発の弾丸は吸い込まれるように、例の男が走り去ろうとしていた先の地面に綺麗に着弾し、その衝撃によって男が転倒したため、ハッと我に帰った周囲の人たちによってその男は取り押さえられていた
シーン…
ギルド内は先程の俺の射撃で何やら静まり返っているが、まあ冒険者ならよくあることだろうと、特には気にせず、俺が正面の方に顔を戻すと…
ポカーン
そんな表現が似合うような顔で、ニカさんがボーっとしたような、そんな変な顔でこちらを見ていた
俺はそんな表情するなんて何かあったのか?っと少し不安になって
「ど、どうかしましたか?何か変なことでも…」
と、若干キョドってそうニカさんに問いかける
すると、間髪入れずに…
「「変なことばかりだよ(さ)!!」」
前からはニカさん、後ろからは謎のプレートの騎士、男が女かわからない、くぐもった声をした甲冑姿の方に全力で突っ込まれた
っていうか、この騎士誰だよ!
俺は振り返ると、そこに佇んでいる騎士を見て、全力でそう思った
こうして俺はギルド加入初日から、変なフルプレート騎士に絡まれることになってしまったのだった…
ちなみに、物取りの男は警備兵に受け渡され、取られたものを取り返すことが出来た女性が、後日冒険者ギルド宛に感謝の手紙を送ったのは、また別のお話…
この段階で、ソウマのチートっぷりが露呈?
とりあえず次から、冒険パート入ります
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