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どこからでも狙い撃てる男

 

「なっ!?どこから打たれてるんだ!

 敵の位置が全く捕捉出来ないぞ!?」



 戦場に、そんな男の悲鳴に似た叫びが響き渡った


 ここは建物が乱雑に配置されている、廃ビル街の一角、そこを中心として多数対多数の殺し合いが行われる場外フィールドだ


 そして先程叫びをあげた男と、その仲間たちからは「どうする?」「どうするも何も見つけなければ」

「エリア探知の中には何の反応もないぞ!?」などの声があがる


 そうして男たちは、キョロキョロと打たれた方向、その近辺に存在するはずの敵の存在を探してみるが、やはりどこにもその反応が感じられない


「いったいどうなってやがる!」



 そんなリーダーの男の叫びが、人っけ一つない、廃ビル街の街中に響き渡ったのだった




 この世界には、3つの戦闘型が存在する

 近接戦闘型、中距離戦闘型、そして遠距離戦闘型である


 そして、複数対複数の戦いが基本であるこの世界では、近中距離からの射撃、もしくは近接攻撃が主流の戦いとなっている


 そしてそれが主流である理由は主に二つの理由が存在する

 

  一つ目は、この世界の神、いわゆる運営さまがそれを売りにして、売り出したゲームの世界だからである



 この世界、『ガンソードオンライン』は、複数対複数の大規模戦争ゲームとして売り出された

 そして、複数のプレイヤー同士で戦い、敵の残り人数がゼロになるまで戦い続け、そして制限時間の中で生き残りが多い方のチームが勝つという仕組みのゲームなのだ



 そのため、複数のプレイヤーを多く倒す方が勝利するゲームシステム、そして時間制限が存在するという理由によって、比較的早く試合が決着する近接攻撃系の戦いが主流となっているのだ


 そしてそれが運営からのゲーム方針だと言わんばかりに、近接系の武装が強く調整されているのも、現状近接戦闘が主流となっている大きな要因の一つである


 

 そしてもう一つの理由、主にそれが最もこの世界に近接系を流行らせている大きな原因である

 それは全プレイヤーのロック距離、敵を狙いやすいように自動的に視界に表示される赤ロック距離が、全キャラ共通の距離に調整されてしまっていることだ

 

 そのため、遠距離戦闘型も例に漏れず射程が近中距離型と同じに設定されているので、実質遠距離の戦闘は実現不可能とされているのだ



 一部のエンジョイ勢が、遠距離武装の運用法を試した事はあるのだが、実戦に通用するレベルのものは何一つ存在しなかった

 そもそも、赤ロックの入る距離では遠距離武装である必要がない、赤ロック外からの射撃は打てるには打てるが、とてもじゃないが赤ロックの攻撃アシストが無ければ、敵に当てることが出来ないと、散々な結果であった



 そのため、このゲームには遠距離武装が存在するにはするが、実質存在するだけで、誰も使用しないという、ゴミ武装として認知されているのだった



 しかしそんな遠距離武装が、無いものとして扱われているこのゲームには、ある噂1つの噂がプレイヤーたちの中で噂されていた



 それは・・・、『神の目を持つ男がいる』というものだ

 

 それだけを聞けば、何を意味する言葉なのか理解出来ないが、あるプレイヤーと戦闘した事のある者たちは、口を揃えてこう言うのだった


「アレに勝つことは出来ねぇ

 アイツは『神の目』を持っている」と



 そしてその噂にはもう一つ、それが本当の話ではなく、あくまで噂であると言われてしまうのには理由があった

 

 それは・・・、誰もその男のことを実際に見た者がいないということだった



 ただ、試合が始まると誰にも遭遇せずに負けてしまう、相手からの攻撃アラームが全く聞こえずに敗北だけが伝えられる



 そのような報告しか、ネット掲示板に上がっていない事から、この噂があくまで噂でしかないと言われてしまっているのだ


 だが、その男の情報を書き込むプレイヤーが後を絶たない

 そういうことからも、まさにこれぞ都市伝説と言われているのだ



 そうして今日もまた1人と、この不思議な噂をネットに書き込むプレイヤーが現れたことは言うまでもないだろう・・・









「あー、またやっちゃたなぁ

 なんか相手に全く見えない距離で当て過ぎてて

 もはや都市伝説扱いされちゃってるじゃん俺・・・」



 俺、神木かみき 宗馬そうまは、ネットカフェのパソコンの画面の前で、『ガンソードオンライン』のネット記事を見ながらそう呟いた


 本日の戦闘、その内容を対戦相手であると思われるプレイヤーに、色々書き込まれていたのだ


『敵を見つけることが出ないままに負けた』『敵からの攻撃アラームが鳴らなかった』さらには、『あれは何かのチート、不正行為だ』とまで書かれていた


「普通にノーロック狙撃を、相手に当ててるだけなんだけどなぁ

  誰もやってないから知らないみたいだけど、射程外からの射撃って相手をロックした射撃と認識されないから、射撃アラームが鳴らないだけっていう・・・」



 俺はみんなが騒いでいる「アラームが鳴らない」現象について、苦笑気味にそう呟いた


 このゲームには、プレイヤーを助けるための補助機能が数多く存在する

 その中でも戦闘に直接関わってくる補助として、敵からの攻撃をアラームによって警告してくれるという機能が、このゲームには存在するのだ


 この機能はとても戦闘に役立ち、有用なシステム的アシストなのだが・・・

 しかしこのアシストシステムには、とても致命的な欠陥が存在している


 それは・・・、このゲームでの敵からの攻撃判定は、赤ロックからの敵の補足、それからその相手への攻撃行動を行う事によって、自動的にそれがサーバー上を介して、相手へのアラーム警告の発動に繋がるというシステムなのだ


 そのため、赤ロック外からの敵の視認からの、ロック外射撃では、そのシステムが適用されず、あたかも相手はロック外から、突然攻撃されたように感じるようになってしまっているのだ



 それがこの男、プレイヤーネーム『S』をチート、不正行為だと言わせる要因を作りだしているのだ

 なので『S』こと、神木かみき 宗馬そうまは、運営にその問題を解決してもらいたいと思っているのだが・・・


「やっぱりテンプレ回答の連続か・・・」



 そう、俺は運営にこのバグのような、システム上の欠陥を何度か運営に、匿名アドレスから伝えたのだ

 

 しかし肝心の運営からの返答はというと「現在システムバランスの調整中です。詳しくは・・・」と言った定型文が送られてくるだけで、まともな回答を得られず、システムが改善される気配が一向にないのだ



 そのため、俺はネットでアレコレ言われながら、このゲームをプレイし続けているという訳だ


 それじゃあ、自分からネットの人たちに真実を伝えればいいんじゃないか?

 そう思う人がいそうだが、なんだかそれだと『戦い方が卑怯だとか』『自分だけバグで勝率上げてたのかよ』とか言われそうで、自分からではなく、運営からの改善によって、この問題の解決を図ろうとしていたのだ


「でも、運営このヤバさに気づいてないのかなぁ

 まあでも、俺は世界大会とか出てないしな」



 この『ガンソードオンライン』は世界規模のオンラインゲームで、日本だけではなく、アメリカ、中国などでも大人気だ

 そのため、世界大会なるものも存在している

 その大会に出ているようなプレイヤーは、有名プレイヤーとしてゲーム雑誌に取り上げられることがあるぐらいで、一種の芸能人のような扱いの人もいる

 そしてそんな人の発言や、世界大会でのプレイによって、運営がゲームバランスを調整しているとの噂がある程だ



 その噂が本当であれば、1プレイヤーのバランス調整の申し出など、対応してくれる訳がないのである



 しかし彼は、運営はその問題に気づいているが、全世界のこのゲームのユーザーの中で、ノーロック射撃を当てられる存在が『S』ただ1人なため、問題解決に動く事が出来ていないという事は、全く知るよしもなかったのだった



 ただ、彼も自身のプレイングを、いや彼の存在そのものを否定されるのは、思う事があるので


「まあ、都市伝説扱いされるのはアレだけど・・・

 俺にはその誤解を解いてくれる仲間や、一緒にプレイしてくれる友達とかいないしなぁ」



 現在俺は、大学生の身分なのだが・・・


 大学での友達作りに失敗し、ネットと友達状態になっているのだ

 しかし、現実で友達を作るのに失敗した俺が、ネット上で友達を作れる訳がないので、1人寂しくソロプレイヤーとして『ガンソードオンライン』をプレイしているという訳だ


 複数対複数の対戦ゲームなのだが、対戦自体はソロでも参加することは出来る

 まあ、残りのメンバーがCPUになってしまうのだが・・・


 だが、実際今までソロで戦っていて、負けたことが一度もない

 皆、アラームの鳴らないサイレント狙撃にやられて敗北していくのだ

 だから、俺個人の意見としては、このゲームはソロでも十分やっていけるゲームだと判断しているのだ



「そういえば、このゲームの開発が海外のゲーム会社と共同で、大規模アップデートを行うとか言ってたなぁ

 なんか、海外のプレイヤーとかもマッチング出来るようにするみたいなことだったか?」



 このゲームでの悲しい、俺のソロ生活は置いておいて、次のアップデートで色々な機能やシステムが追加されるようなのだ

 

 現在このゲームは、日本だけの通信環境でゲームが運営されており、海外のプレイヤーとはマッチングすることはなかった

 しかし次回のアップデートで、海外のプレイヤーとも、マッチングしたり、交流したり出来るようになるのだ



 このゲームはVRゲームの最先端を行くゲームなので、プレイヤーは直接『ガンソードオンライン』の中に入っているような感覚を楽しめる


 従来の、ゴーグルを装着し、専用のゲームコントローラを動かして、ゲーム内のキャラクターを動かすものではなく

 専用のゴーグルを装着すると、その人の脳内の思考、行動を読み取って、ゲーム内のキャラクターがその通りに動くといったものだ


 そして、次回のアップデートで、ゲームの中にいる海外の方々とも、ゲーム上ではあるが直接遭遇することになる

 そのため、ゲームのシステムアップデートで、自身が発した言葉が、全プレイヤーに理解できる共通言語として、発せられるようになるという機能が追加されるのだ



 これによって、海外との交流が増えると、ゲームプレイヤーだけではなく、日本政府も海外交流だとして喜んでいたが、俺にはあまり関係ない


 だって・・・


「そんな事しなくても、プレイヤーとの交流とか…

 俺には無理だもんなぁ」



 俺はそんな自身のボッチっぷりに苦笑しながらも、アップデートとか関係なく、強いプレイヤーと戦える機会が増えるだけと考えて、ぽちぽちと『ガンソードオンライン』の開発ページの情報を読み進めていくのだった・・・





 しかし彼、いや彼らはまだ知らなかった

 このゲームのアップデートが、とんでもない事態を引き起こすという事を・・・



プロローグの前半的な感じです


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