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ご褒美ですか。

 

 ガバリと起き上がると、いつも通りの自分の部屋だった。

 枕元のスマホをチェックをすれば、翌朝の5時半。

 体どころか一番酷かっただろう足裏も全く痛くない。スマホでニュースをチェックすれば、月がまた以前のように移動しだしたとあった。


 ホッとした。月の事もそうだが、月子の事も覚えている。


「月子……」


「は、はい!」


 物凄く近くから聞こえた声に振り返ると、隣に月子が布団をかぶっていた。力のない笑顔だが、月子だ。


「ふわあっ!?」


 奇声を上げてベッドから転がり落ちた。痛い。月子がいる、え、何で俺のベッドに!?まだファンタジー!?


「こここコータ!?大丈夫ですか!?」


 慌てた月子がベッドから見下ろしてくるその姿にまたパニックを起こす。全裸。


「な!!ななななっ!?」


 あまりの混乱に言葉にならない。でも隠して欲しくて指差す。それに気づいた月子が慌てて布団で体を隠す。ああ隠れた、でも覚えた、違う!


「あ!あっ!ああああのこここれはですね! み、ミョルニルがですね、地球の物が月にあるなら少しは『月』の気も紛れるだろうと言って、私と代わってやるからコータの元に行けと……」


 ミョルニルのやつ……粋な事するなぁ。色々ありがとう! つーか、月子のミョルニル翻訳機能が凄い。


「でも私のダメージも大きくて、服は再現できず、髪も短くなってしまいました」


 確かに足元まで届きそうだった髪は耳の下辺りまでの長さになった。手袋に穴が開いていたのに、そんなもんで済んで良かった。髪が短くても月子の可愛いさには何の影響も無さそうだし、服なんか地球にはたくさんある。色白を通り越した肌色と髪と目の色は、まあ……後で考えよう。


「そ、それで、ですね、」


 言い淀んだ月子が俺のベッドの上で布団にくるまりながら頬をピンクにしてもじもじする。うっ……厳しいなコレ……


「ほ、ほっぺに、チューを、して、いい、ですか……?」


 撃ち抜かれた。


 バダンッ!! ……ガタッ


 あまりの勢いに部屋のドアは壁にめり込んだ後に外れ、その壊した張本人が入り口に仁王立ちをしていた。

 この部屋の中を見られてはならない最たる人物、母親の姿に血の引いていく音が。


「朝っぱらから何を大騒ぎしてるのかと慌てて見に来てみれば……」


 仁王様の平坦な口調に体がガタガタ震え出す。言い訳の声も出ない。父親は仁王様の足元から手を合わせて拝んでいる。タスケテ……


「どこのお嬢さんと何プレイしとんじゃコラアアアッ!!!」




 ほっぺにチューは元柔道強化選手渾身の右ストレートとなり、奥歯が2本欠けた。




 その後、月子の丁寧な説明によりこの状況を両親(主に母親)はどうにか納得してくれたようで、俺は無罪放免となった。


 月子は好きなだけ居候を許され、その可愛さは仁王を菩薩に変えた。それは月子限定だが、そのスペックは凄い。


 家に帰ると「お帰りなさい」と玄関まで迎えに出てくれる。

 妹と言うより新妻を連想する俺は健全な高校生だ。


 家族一丸となって月子を構う事になったが、毎日が楽しい。出かけたりゲームをしたり、次は何がしたい?と俺たちが月子に聞くのが夕飯時の習慣になったある日。

 遠慮しいの月子はいつも答えるまでもじもじとするが、今夜はピンクになる程だ。何がそんなに恥ずかしいやら。


「……こ……孝汰のお嫁さんになりたい……です……」


 飲んでいた味噌汁を噴いた。




 その日の満月には金槌の影が大きく見えた。気がした。






 終



お読みいただきまして、ありがとうございました。



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