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スルーできませんか。

秋月 忍さま主催の『夜語り』企画参加作品です。



 

 月が3日間同じ場所にあるとのNASAの発表に、世界は大騒ぎになった。


 と言っても、満潮干潮が固定された以外の被害はまだ無いようだ。連日メディアでは色んなコメンテーターが色んな事を言ってはいるが、日本社会は海関係の業種以外はだいたいが通常営業で学校も通常登校だ。


 通常、なのだが。俺はこの3日間、夢とも言えない夢を見ている。


 ―――タス、ケ、テ―――


 暗闇の中でそんな単語が聞こえるだけの夢。


 ―――助けて―――


 部屋のカーテンを開け、目が溶けるんじゃないかと思う朝日に手を合わせて拝むのも3日目。


 だんだんと発音がはっきりして来たな……


 ホラーは勘弁してくれよと思いながら、母親の「起きろー!」の目覚まし声に返事をする。

 ただの夢。

 体調が崩れる事もないし、眠れないとか昼間に幻聴もない。月のニュースだけが非日常。


 連日、昼はメディアが月を映し、夜は肉眼で確認する。

 クラスでも夢を見るとか誰も言わないので、非日常への個人的ストレスだと思う事にした。自分でそんな繊細なところがあるとは信じられなかったが。


 そしてその日の夜。


 ―――助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて~、助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてたす「うううるせえええええっ!!」


 カッ!と目を開けたら、目の前の夜空にドンと地球が見えました。


「……は?」


 映画なんかでよく見る映像。月の地平線の向こうに夜に輝く青と緑と白でできたでかい星。テレビの枠は無い。

 そしてベッドに入ったはずが、立っている。


「…………ぇ?ぇ?ぇ……?……ぐふぉっ!?」


 星空に圧倒され次は混乱期に入ろうとしたところで腹に何かが突進してきた。一応は剣道部だが普通高校生には耐えられず、その何かと一緒に倒れた。


「やっと来たぁぁぁ!遅いぃぃぃい!!」


 咄嗟に後頭部を手で守ったが、背中と腹への衝撃はなかなかで声が出せない。そのまま俺の腹に乗って泣き喚いてる白い物体をどかせたかったが、痛みでどうしようもない。食われるわけではなさそうなので痛みが収まるまで涙目で夜空を見ていた。


 ……すげぇ星の数……数っていうか……これが宇宙か……


 非現実なはずなのに痛みはあるし夢じゃないらしい。だからと見ているものが本物とは限らないが。だって宇宙空間だとしても俺はパジャマ替わりのスウェットのままだ。普通に呼吸もしている。背中が痛いって事は重力も違和感がないし、この感触は地面よりも体育館の床のようだ。現実じゃない。

 どうなってんだよ……


「うぅっ、お、ひぐっ、お待ち、ぐふっ、して、ふぇっ、おり、おりました」


 遅い遅いと喚いていた白い物体は少し落ち着いたのか、何か喋りだした。これだって日本語だ。日本語というだけで少し安心した俺の危機管理も問題だが、とりあえず落ち着けよと思いながら手を頭から外して白い物体をポンポンとした。


 愕然とした。

 縫いぐるみみたいな何かと思ってたら人だった。ちょっと触れただけでも分かるほどに華奢で、子供か?と思った瞬間に白い物体はその顔を上げた。


 白い物体と判断したのは輝く白髪で、ギリシャ漫画のキャラみたいなゆったりしたこれまた真っ白な服。太めのベルトがあるそのウエストはだいぶ細い。肌も白人よりも白く見えてアニメみたいな肌色だ。

 一番の特徴である大きめの目は緑と青の色違いで、白いまつ毛がまた長い。目が合うと頬がほんのりピンクになって、生き物だと認識できた。これはヤバい。可愛い。いやそうでなくて。


「誰!?」


「月です!」


 高い声が似合…………いや、そうでなくて。






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