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doll 人形

作者: 林朔良


伯父が亡くなった。


もう、ずいぶんと会っていなかった。

僕が小さい頃には、夏休みになると親戚一同が婆ちゃん家に集まり、もちろん、そこには伯父もいた。


伯父は変わり者で有名だったが、人当たりは良く、特に甥や姪の中でも僕を可愛がってくれていたように思う。


夏祭りの夜、伯父は祭りで好きなものでも買いなさい、と僕に5千円握らせた。さすがに5千円は多すぎると返そうとしたが、伯父は笑顔で、去っていった。


僕は、そのお金で伯父が喜びそうな屋台の品を買い、親戚から少し離れた場所で酒を飲んでいる伯父に渡した。


イカ焼き、糸ひき飴、そしてスーパーボウル。


伯父は、それを見てニッコリ笑い、ことのほかスーパーボウルが気に入ったらしく、ずっと手のなかで転がしながら酒を飲んでいた。


丸まった伯父の背中に、少しばかり哀愁があり、僕はいつも伯父を気にしていたように思う。








婆ちゃんが亡くなってからは親戚は集まらなくなり、僕も伯父とは疎遠になっていた。

大学を卒業して入社し、特別彼女なども居ない僕は、至って普通の毎日を過ごしていた。


そこへ、伯母から一報がきた。



伯父が亡くなったと。




伯父の事など、記憶からすっぽり抜けていた僕は、久しぶりにあの祭りの夜を思い出した。

スーパーボウルの伯父の事を。




久しぶりに会う親戚は皆、すっかり歳をとっていたが、それぞれに元気だった。

「おー、祐也お前、おっきくなったなぁ」

伯父の弟である辰巳おじさんが、僕の肩を叩きながら笑った。


葬式だというのに、誰ひとり悲しい顔をする人がいない。

若干の違和感を感じた。


伯父は、心筋梗塞だったらしい。

倒れてから見つかるまで1週間。腐敗が進んでいた。


僕が着いた頃にはもう伯父は灰になっていて、最後の顔を見ることはできなかった。


ただ、僕が呼ばれたのには理由があり、伯父が生前に書き残した遺書が見つかったということだった。


「伯父さんが住んどった古い洋館があったやろう?祐也は覚えとるかの?」

「ああ、山の上に建っとった、あの?」

「それじゃ、その洋館を祐也に譲りたい書いてある」


遺書を見て、僕は驚いた。


そこには紛れもなく、僕の名前が書いてあった。






「ここを真っ直ぐでいいんか?祐也?」


くねくねした山道がずっと続いている。

友人の淳一が、親に買ってもらったというセリカを、この日のために披露してくれた。


「ああ、この道をずっと真っ直ぐ」


真っ昼間だというのに山は薄暗く、葉と葉の擦れあう音だけが聞こえる。なんとなく不気味だった。


大きく曲がりくねったカーブの先に、その洋館は、ある。

地元の人でも知らない人が多いのじゃないだろうか。


鬱蒼とした密林のように辺り一面、木々に覆われている。

そして、昼間なのに、暗すぎるのだ。




「やべぇ、やべぇな、ここ」

車から先に降りた淳一が目の前の洋館を見上げて言った。


僕がまだ幼かった頃の洋館の面影はもはや無かった。

真っ白だった外壁には緑色の蔦が巻き付き、庭にある噴水にはカビの匂いが立ちこめている。


とても、正気の者には近付ける建物ではない。




「これ、もらったところで」

淳一の言葉に、僕は深く頷く。

「な、どうするよ?」


とりあえず、預かってきた鍵をポケットから取り出す。

以前は綺麗な金色だったであろう鍵穴に鍵を差し込む。


ゆっくりと右へ回すと、


ガチャッ


鈍く開く音がした。

ギィー。


白いドアがゆっくりと開いた。


大理石のエントランス。

所々に埃が舞っている。


「やっぱり酷いな、埃が」

淳一が咳き込んだ。


伯父が、どのくらいこの洋館に暮らしていたのかはわからない。

見た限りでは掃除など全くしていないようだった。

「ひでぇ」


淳一が窓を1つずつ開けていく。

その度に舞う埃が、キラキラと光る。


「とりあえず、2階も見てみるか」

僕よりも淳一のほうが遥かにこの状況を楽しんでいた。


まるでお化け屋敷にでもいるような。



白い螺旋階段が2階まで続く。

足を乗せて体重をかけると、ギィーギィーときしむ音がする。

昼間とは思えないほど、2階も暗く、先に歩いていた淳一の姿がもう見えない。


階段を上りきった時、暗闇の奥から淳一の声がした。

「うわぁぁぁ~!!」


「淳一?どうした?」

「ちょ、こっち来いよ!すげーのあるから!」


僕は淳一の声のほうへ急いだ。


暗い廊下に光が漏れている。

淳一が部屋の窓を全開にしていた。

僕が部屋の中を覗くと、そこに突っ立ったままの淳一と、それがいた。


淳一は、しばらくそれに見とれていたが、僕の気配で振り返る。

その、淳一の表情は上気だっていた。

目は爛々として、口元は笑い出しそうに歪んでいる。頬は真っ赤に染まっていた。


「見てみろよ、これ」


淳一がそれを指差す。



僕は目を疑った。

髪の長い女性だった。


正確には、

揺り椅子に腰をかけている女性の、人形だった。

「これ、人形だよなぁ」

淳一が、揺り椅子に手をかけて、揺らした。


ギィーと音をたてて前後に揺れる。

僕は、しゃがんで人形と目線を合わせた。


不思議な感じがする。

ゆっくりと、椅子の動きに合わせて人形も揺れるのだが、関節が柔らかいのか、首や、腕が、カクカクと人間のように動くのだ。

窓から入ってくる風が、その人形の肩まである黒髪をなびかせているのが、またリアルだった。


淳一が笑いを堪えて言った。

「おい、お前の伯父さんってヤバい人だったんじゃね?こんなのどこで買うんだよ?どんな趣味だよ、これ」


僕は

「ほんとになぁ」

と、人形を見つめた。


「しっかし」

と淳一は、人形の着ている紺色のメイド服のスカートをたくしあげて、

「おいー、この綺麗な脚見てみろよ、本物みたいに白いぞ」

「やめろよ」

僕は、淳一の手をスカートから剥がした。

「ただの人形だろ?何ムキになってんの」

淳一は、つまらなそうに言って、

「夕飯の食い物買ってくるよ、今夜泊まるんだろ?ここに」

と、階段を下りていった。


僕は、人間と等身大の、その人形に心を奪われていた。

歳は18歳くらいだろうか。

人形とは思えないくらい肌には透明感がある。

大きな瞳は褐色で黒く長い睫毛が、妙に色っぽい。

今にもしゃべり出しそうな桜色の唇。


僕は、ドキドキしていた。

彼女のあまりの美しさに。




僕は、彼女のいる部屋から掃除を始めた。

部屋を見渡してみる。驚くほど何も無い。

窓が8つもある。広さは20畳くらいだろうか。

その、ガランとした空間の真ん中に、揺り椅子に座った彼女がいるのだ。


伯父は、何を思って彼女を購入したのだろう。

そして、何故この部屋に。


床の水拭きを終えた頃、淳一が戻ってきた。

「弁当と、アルコール買ってきたぞ」

「ありがとう。今この部屋だけ掃除終わったとこ」

「だいぶ綺麗になったな。ここで寝るか、今日は」

「そうだな」

部屋の空気が違う。

ずいぶん長い間、換気できてなかったのだろう。


「あっ」

淳一が指を指した。

窓からの風に煽られて、彼女の頭に乗せてあった白いレースの飾りがヒラヒラと飛んだのだ。

ヘアーバンドのように頭を固定していたのが、外れたせいで、彼女の長い黒髪が風になびいて、くしゃくしゃになった。

「あーあ、せっかくの美人が」

淳一が笑いながら、彼女に近寄る。

「ブラッシングしてやれよ、祐也」

床に落ちたレースの飾りを拾って振り向くと、淳一が彼女の髪を撫でていた。

僕は、なんだか嫌な気持ちになった。


「持ってねぇよ、ブラシなんて」

そう言って、彼女の髪に指を通してみた。

驚くほど、髪の毛が細くて柔らかい。


これが、人形の髪の毛なのか?

人間と変わらないくらいの触り心地だ。


僕は自分の指を櫛のように立てて、彼女の髪を、何度も何度もといてみる。

その度に、僕の指と指の間を柔らかく艶のある髪の毛が、まるで川の流れのように滑らかにすべっていくのだ。

あることか、僕は興奮していた。


淳一がスマホで動画を観て笑っている後姿を確認して、僕は、彼女の髪の毛をそっと彼女の耳にかけた。

彼女の耳は、小さくて愛らしく、ほのかにピンク色に染まっていた。

僕は、彼女の耳たぶを人さし指で撫でた。

小さく揺れる。

指の動きに合わせて前後に耳たぶが揺れた。

光に反射して、耳全体にうっすら産毛が光っていた。

角度を変えて中を覗く。

耳の穴には外からは想像つかないほど、びっしりと毛が生え揃っていた。


僕は、なんだか身体が熱くなってムズムズしてきた。

淳一を横目で見る。

寝そべって弁当を食べながら、相変わらず動画を観ていた。


耳たぶを触っていた指を、そっと下にずらしていく。


顎のライン、首、喉仏。

指が、白い襟元に触れる。真珠のような光沢の丸いボタンが並んでいる。真っ白なレースに縁取られたドレスのようなブラウスだ。

彼女の華奢な身体のラインに沿って、ピッタリなサイズで作ってあるようなブラウスだった。


襟元と、ウェストが細く絞られているが、胸だけはそうではなかった。


僕は、彼女を見た時からずっと、その豊かな膨らみに目を奪われている。白いレースに縁取られた膨らみ。

幼さが残る彼女の顔とは裏腹に、豊かすぎる胸のかたち。


僕は息が荒くなった。

今すぐにでも、彼女に覆い被さりたい。

この、大切に、綺麗に守られている絹の衣を、この手で引きちぎりたい。


指先が、震え出す。

淳一の背中を確認しながら、指を彼女の膨らみの頂点に当てた。


ピクンッ。



彼女の肩が揺れた。


えっ、、、。




僕は、何が何だかわからなくて、もう一度触ってみた。


ピクンッ。


い、生きてるのか!?


淳一を見る。彼は気づいていない。

彼女は、まっすぐ前を見据えたまま微動だにしない。


どういうことなんだよ、、、。


僕は何とか淳一を街へ返せないものかと考え始めていた。




「おお、わかった。今から行くから」

淳一が心配そうに電話をきった。

「どうした?」

「お母さんが倒れたって。今病院、悪いけど、祐也」

「大丈夫、行ってあげて」

「悪いな。数日分の食料、適当に買って置いてあるから」

「ありがとうな」


淳一の買ったばかりのセリカが山を下っていく。



僕の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。







2階へ向かう。

胸がドキドキする。

部屋に入ると、椅子が揺れている。


彼女がいない。



え、、、?




「ふふ、、、」

後ろで笑い声がした。

背筋が凍る。


振り向こうとすると、

「見ないで」

と若い女性の声で静止された。


僕の背後に人の気配がする。

背中に、女性らしき手が触れた。

僕はピクンッと肩が揺れた。


「ふふ、さっきとは逆ね」

細い指の感触。


背骨を行ったり来たりする指。

やがて、うなじから耳に。


僕は震えた。


「可愛い」

彼女は呟いて、僕の耳たぶを優しく撫でる。

撫でながら、僕の前に回り込んだ。


人間だった。


紛れもない、生身の人間だ。


先程とは明らかに違う。正気が宿っている。

大きな瞳が、生きた人間のそれだ。


「君はなぜこんな」

僕の問いに彼女は微笑んだ。







[2日目]


寒くて目が覚めた。

白々と夜が明けていく。部屋が青白い。

白いカーテンがはためく。


見ると、床にブルゾンをひいて、その上で寝てしまったらしい。

身体が痛い。


揺り椅子を見る。


はためくカーテンの間に、彼女がいた。

この洋館へ来た時と同じ位置に、同じ格好で座っている。

僕は彼女の前にしゃがんだ。


あれ?動かない?


僕は、そっと彼女の手に触れる。

ひんやりと冷たい。

昨日は確か温かかったのに。


瞳が、人間のものではなく、ビー玉のような冷たい光を放っている。

昨日のあれは何だったのか。夢?

僕は狐に摘ままれたような不思議な感覚で窓を閉めた。



僕は一階に下り、その埃と蜘蛛の巣の多さに閉口した。

一階のすべての窓を開けて回る。

それにしても広い家だ。

伯父は、たった一人でよくこんな広い家に住んでいたものだ、と思う。

たった一人、ではないか。


僕は二階に居る彼女を思った。


ひとつ気づいたことがある。

一階の掃き掃除を終え、庭に出て折れた木の枝を集めていた時、何気なく庭から二階を見上げた。


彼女が、こちらを見ているのだ。


いや、実際には見てはいないのだが、揺り椅子の角度と彼女の向き、目線が、まるでカーテンの隙間から彼女が庭を見下ろしているように感じるのだ。


僕は、はっとした。


伯父は計算ずくだったんじゃないかと。


あらかじめ、彼女が庭を見下ろしているかのように、彼女の椅子や角度を調整していたのでは。

伯父もこうして、今の僕のように庭を手入れしながら、合間に彼女を見上げて、、、。


その時だった。


彼女が、笑った。



にっこりと笑って、揺り椅子から立ちあがり、こちらに手を振った。確実に僕が見えている。


僕が呆気に取られていると、彼女が窓を開け、身を乗り出して言った。


「お昼のお食事は、私が作りますわ」


山風が、彼女の長い髪の一本一本をなびかせる。

波のように、さらさらと。


僕は、呆然として言った。

「ああ、うん」

彼女がまた笑った。



キッチンへ向かう廊下で、いい匂いがしてきた。

肉が焼ける匂い。美味しそうな野菜の煮込んだ匂い。


キッチンのドアを開けると、薄いブルーを基調とした明るいキッチンに、メイド姿の彼女の後ろ姿があった。


僕の気配に気づいたのか、彼女が振り返る。

「座ってて下さい。もう少し時間がかかるので」

「あ、うん」

僕はキッチンの真ん中にあるテーブルの奥の席に座った。

そこに座ると、キッチン全体が見渡せる。


作業台と流しの前にある大きな窓からは、昼間の太陽が容赦なく彼女に照りつける。

白いまな板にはピンク色の鯛が横たわり、彼女のあざやかな包丁さばきで今、三枚に分けられた。

そこへ、塩とコショウをかけて、熱したフライパンに皮目から焼き始める。

途端に香ばしい匂いが立ち上る。

僕はお腹が鳴りそうなのを我慢した。


「お待たせしました」

彼女は微笑みながら野菜のスープ煮をテーブルまで運んできた。

「あと、お肉とお魚のコースになりますので、先にお召し上がりくださいね」

「あ、では、いただきます」

目の前に、それは美味しそうな旬の野菜が、色彩あざやかなまま煮込まれていて、まるで高級料理屋にでも来たみたいだった。

僕は、スープをひとくち味わった。


ああ、うまいな、、、。


そう言おうとして、記憶が遠のいた。





[3日目]


喉の奥に何かが詰まった気がして、僕はむせた。

「ゲホッゲホッ」

目が覚める。


真っ暗な中に、光る丸い物体。

目を凝らして見る。


それは、満月だった。


僕は、真っ暗なキッチンのテーブルにうつ伏せで寝てしまったらしい。大きな窓からは月が爛々と照らしてくれている。


彼女は、どこに。


僕はスマホの灯りで辺りを照らした。

驚いた。

彼女どころか、そこは僕と淳一が初めてこの洋館に来たあの時のままだったのだ。


ひとつも片付いてなどいない。

何年も、誰も使った形跡のないシンクに白い埃がたまっていた。


おかしい。

昨日の、あの料理の数々はなんだったのだろう?

あの香ばしい匂い。

彼女の優しい声。


僕は、僕は、、、。


いったいどうしてしまったんだ?




スマホの灯りだけを頼りに、彼女のいるはずの2階へ行く。

暗闇に浮かぶ螺旋階段は酷く不気味で、僕は少しためらったが、意を決して階段を一歩一歩踏みしめて上がる。


奥の部屋。

ギィー、、、。

ドアを開ける。


満月が、彼女の輪郭をしっかりと暗闇に浮かび上がらせていた。


揺り椅子に腰かける、ただの人形がそこにいた。


「なんで?なんでだよ」

僕は、何が何だかわからないまま、微動だにしない彼女に言った。

「なんのつもりだよ?あの料理は何なんだよ?あれは、あれも、夢だったのか?」


彼女から返事はない。


「なんで、僕の記憶は、いつもここに戻るんだよ?君は何か知ってるんだろ?教えてくれよ?」


彼女の手を握る。

ひんやりと冷たい。


まるで死人のように。


僕は、そのまま、揺り椅子に座る彼女の腰に手を回した。

彼女のお腹に頭を埋めて、泣いた。


「もう一度、出てきてくれ」


そのまま、また眠りに落ちた。



誰かが、そっと口づける。

唇の柔らかい感触が、僕の頬に。

「やっと目が覚めましたか」

彼女が、いた。


揺り椅子を前後に揺らしながら、彼女が微笑む。

僕は思わず彼女の手を掴んだ。

彼女が、僕の手の上に自分の手を重ねる。

「お願いがあるの」

そう言いながら、彼女は胸元のボタンを外し始めた。

にっこりと笑う。

「ずっと同じ服だから、そろそろ新しいメイド服が着たくて」



僕は街へ向かっていた。

タクシーは街へ出るまで時間も金も相当かかるが、彼女の頼みなら致し方ない。


メイド服がありそうな店に片っ端から入る。

その度に店員がギョッとした目で見た。

僕は片っ端からメイド服を買い漁った。


とんぼ返りで洋館に戻る。



彼女が、いた。


すべてを脱いで、待っていたのだ。


「着替えさせて。祐也さん」




[1ヶ月後]



淳一が祐也に連絡がつかなくなって、1ヶ月がたつ。

祐也の伯父の洋館にも行ってみたが、鍵が閉まっており、中には入れなかった。


心配になった淳一は警察に相談してみたが、年間でも相当な数の行方不明者がいるとのことで、祐也だけを特別に探してもらうのは不可能だった。


祐也は、いったいどこに消えたのか。




淳一は、もう一度洋館へ行ってみた。

相変わらず薄暗く、気持ちが悪い。

庭は荒れていて、使われていない噴水の辺りはカビ臭い。


淳一は、ふと視線を感じて、洋館の2階を見上げた。


目が、合った。


揺り椅子に座っているあの人形が、こちらを見ている。


狐に摘ままれたような気分で、淳一は人形を見つめる。



彼女が立ち上がった。

そして、驚きを隠せない淳一に向かって、言った。



「お待ちしてましたわ」


















































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― 新着の感想 ―
[良い点] 静かで妖しい雰囲気が好みです。描写もほどよく丁寧で読みやすかった。裕也がどうなってしまったのか気になりますね。
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