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第一章 魔物の国 2

赤子だと気づいて数ヶ月が経っただろうか。


俺はようやっと立って歩くことができるようになった。


自分の頭がこれほど重いということは、赤子になってみないとわからないことだろう。


時々、獣を狩ってくる男が俺の父親みたいだ。


両親共に肌は薄汚れていて、筋肉質ではあるが飯を食えないためか、かなりのやせ形だ。


俺が立って歩いているのを見て、大変驚いているようだったが、当然だ。生まれて数ヶ月で歩けるようになる赤子など聞いたことがない。


ただ、俺には意識があった。


手を握ったり閉じたり、手足をよく動かしているうちに歩けるようになっただけなのだが、これで自由とはほど遠いものの歩き回れるようになった。


何度も話しかけてきてくれているので理解しようと勤めるが、まだ言語は理解できない。


何語なのだろうか。父親の狩ってくる獣も見たことがないものだ。


俺の身に何が起こったのだろう。


考える時間は無限とあったので、最近はよくこの事ばかりを考えていた。


何かの呪いなのだろうか。死んだ俺の魂が近くの赤子に宿ってしまったのだろうか。


わからない。ただ、死んだはずの俺は生きている。王子も救えずに、のうのうと母親の乳を飲んでいるのだ。いっそ、新しい人生としてこの生を受け入れようかとも思った。


だが、あの豚商人の顔が俺の脳裏に甦る。


やつだけは、生かしておけない。


そのために、俺は歩けるようになったのだ。


両親には申し訳ないが、しばらくこの赤子の体を借りようと考えている。


まず、この場所がどこかだ。


なぜ、両親はずっと森の中で生活しているのだろうか。


基本的には一定の場所には半日も留まらない。


直ぐに別の場所へ移動して、屋根の作成作業をしている。


よたよたと歩けるようにはなったが、手はまだ器用に動かせない。手伝えるのは当分先になるだろうな。


母親が何かの作業を始めたので、こっそりと屋根の外へ出る。


元々、壁がないので屋根の外へ出たところで風景に何かしらの変化があるわけではないが、俺にとっては数ヶ月ぶりの変化だ。


生き物の気配すらしない。


両親の行動パターンからして、父親がかなり安全が確保された場所へ探して移動しているようだ。どこかに目的地があるのだろうか。


それにしても、色々疑問だな。


なぜ、二人とも素手、なんだろうか……。

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