我が国へ
王子脱出から10年が経つ。
王子には下男として身を隠してもらい、俺は傭兵として各国を渡った。
様々な国で兵力や情勢の情報を得るとともに、自らの力も増やすことができた。
元より国から出土した鉱石を使って覚えた索敵に加え、3原素の魔法を覚える事に成功。
3原素は他国では比較的安価で売られており、火の玉を飛ばす火弾、上位の炎弾。火の壁を作り出す火壁、上位の炎壁。
水の玉を飛ばす水弾、上位の水縮弾。水の壁を作り出す水壁、上位の洪水壁。
風の刃を飛ばす風刃、上位の多風刃。風の壁を作り出す風壁、上位の圧風壁。
このあたりは、金さえ出せばどの国でも手に入れることのできるものだった。
そして、いかに我が国が弱小であったのかも思いしった。
それすらも、我が国ではなかったのだから。
傭兵の仕事をこなしながら、魔法の技術を磨いていった。
俺は自国をもう一度取り戻し、その王の座に王子を置くべく、危険すぎる場所へは絶対に赴かずに戦果もほどほどしか上げない、を繰り返した。
傭兵の仕事をしていると、よく黒い仕事が回ってくる。
所謂、犯罪がらみの仕事である。
最初は全て断っていた。
まだ、どこかに近衛としてのプライドがあったのかもしれない。
犯罪といっても色々ある。
暗殺なんかももちろんあるが、密漁や盗掘、空き巣の類いや人拐いまであるのだ。
中堅どころが集まっての盗掘は鉱山を違法で掘ろうというもので、誰かが依頼の達成資金をくれるわけではなく、採掘した分が全て報酬になるというものだ。
リスクは高い。
だが、背に腹は変えられなかった。
そこで、それほど珍しいものではないが、軽い怪我を直せる治癒と軽い毒の症状を緩和させる解毒の魔法を手に入れる。
もちろん、戦闘にはなんの役にも立たない。戦闘中に回復や解毒している時間などないのだから。
色々な国で盗掘に参加して小さな静電気を起こす小雷、周囲の狭い範囲の気温を僅かに上げ下げできる、寒暖、僅かに疲労を抑える体力上昇、僅かに力が上がる加力を手に入れるに至った。
あまり戦闘には使えないものの、小雷は珍しいものだ。大雷や大多雷を手に入れるために鉱山に入ったので失敗ではあるのだが、そんなものそうそう手に入れることができるはすがないのだ。
各国を渡った際に、とにかく仲間を集めた。
国の名前は避け、大量の金が手に入ると噂を流し、集まる時期を伝えた。
仕事の内容は傭兵の仕事と変わらない。
その伝えた時期はもうすぐそこまで来ていた。
高鳴る心臓を抑え、俺は王子を連れて国へと戻ったのだ。