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第一章 魔物の国 7

「痛い痛い!」



近寄ると、殴りかかってきた。


人間離れした動きは父のそれと同じだ。


とっさに彼らの言語ではない言葉を使ってしまった。



「違う違う! 話したい、だけ!」


「なに?」


「お前、なんだ」


「何をする?」



とりあえず攻撃の手が止まったようだな。


痛い。鼻が折れた気がする。今、何歳か自分でも不明だが、身長的にはまだ12そこそこのガキに殴りかかるとはなんてやつらだ。



「話したい、だけ」



俺は鼻を抑えながら土産みやげとして持ってきた獣の肉を向こうへ放った。



「なんだこれは」


「なんだこれは」



全員、同じ事を言っている。


ここはあれだな。父親の言葉を借りよう。



「肉だ」


「そうではない」



違ったらしい。



「肉を、どうする?」


「食え」


「なぜ?」



なぜって……。


説明しろと言われれば簡単だ。


話を聞くかわりに肉を持ってきたから食っていいぞ。それにお前たちの肉には興味がないぞ、という意思表示なのだが、それを言葉にするとなると、言語が少ないのでかなり難しい。



「俺、話を聞く。肉はお前たちが食え」


「なぜ?」


「わからない」


「まて、俺、わかった。俺たちの肉、交換」


「なるほど。わかった」



ん? 何か意志が伝わった気がしないのだが、話が進んだ気がする。


目の前に拳ほどの大きさの黒い獣の肉が転がってきた。


なんだこれは。



「交換、違う。話したい」


「交換、違う?」


「違った」


「わからない」



これは一苦労しそうだな……。


その後、彼らの焼いた黒い獣の肉が焦げ始めるまで、よくわからない問答が続いた。

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