3話【ヒロインとの出会い】
世界樹と別れたアルスは、言われた通りまっすぐ北を目指し、足を進めていた。その時、
「きゃー!誰かたすけてください!」
「なんだ?」
声のする方へ支線を向けると、なんと女の子がモンスターに襲われているではないか。
(なんて理想的状況なんだ…!)
ここでおさらいしよう。アルスは、重度のアニメやマンガのオタクである。だから、異世界での女の子との出会いに反応しないわけがない。
一人感動に浸っていると、
「きゃー!こないでください!」
「おっと、感動している場合ではなかった」
アルスは即座に女の子を襲っているモンスターのアングルホースの前に立ち、言い放った。
「俺のメインヒr…じゃなかった!女の子の近づくな!」
「あ、あなたは?」
「話は後だ。君は離れていて。」
言われた通り、女の子はその場を離れ、近くの木の後ろに隠れてこちらを少し覗いていた。
女の子の無事を確保したことに微かに安堵して、アングルホースに向きを切り替える。
「次はお前だ」
「ヒヒーン!!!」
そう嘶くとアングルホースはこちら目掛けて突進してきた。
それを華麗に交わすと、そのまま銅の剣で切りつけ、怯んだところに回し蹴りをかます。
「現実世界よりパワーは弱いな…」
どうやら転生したことにより、アルスのステータスは前より退化していたらしく、蹴りや剣での攻撃のパワーが落ちている。
しかし、アルスは天才的殺し屋。
そのようなハンデなど、なんの意味もない。
当然決め技の蹴りでアングルホースは戦闘不能だ。
「す、すごい…!」
血がついた剣を振るい、血を落とし、落ちているオーブの欠片を拾い上げるアルスに彼女は見惚れてしまったのだ。
「あ、あの!」
「君、怪我はないかい?」
「あ、私は大丈夫です。助けていただきありがとうございました!まるで勇者様みたいでした!」
「そ、そんな事ないよ。俺なんてまだまださ」
憧れていた展開に、ついラノベ主人公みたいな対応をしてしまうアルスに目を輝かせて感謝の言葉を告げていた。
彼女は金髪碧眼で、耳が少し鋭く尖っていた。おそらく、エルフ族だろう。
「あ、怪我してますよ」
「ホントだ。全然気づかなかった」
なにかで切ったような跡があり、血が滲んでいる。
森の中だし、そんなこともあるだろうと、特に気に止めなかった。
「ち、近くに私の住んでいる村があるので、そこで是非休んでいってください!」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」
「あ、自己紹介がまだでしたねっ!わ、私の名前は、アリアと申します!」
「アリアね。俺はアルス。よろしく頼むよ」
「は、はい!」
アリアに連れられ、アルスは村へと向かった。