表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第1話  作者: Nase
1/3

プロローグ

「ご苦労。これが報酬だ」

「ああ。確かに」

依頼を完了し、依頼者から報酬の金を受け取った。

依頼と言っても、そこら辺のビジネスとは全く別次元のものだ。

殺しだ。俺は殺しをして、金を得て、この世界で生きている。

そして、俺に殺しを依頼する者は世界中に山ほどいる。

自分でも自覚している。俺がこの世界で最強の殺し屋であると。

もう何人殺しただろうか。

なぜこんな仕事を始めたかも、もうよく分からない。

「それにしても、君は仕事が早くて助かる。流石死神、といったところか」

「………………………………………………」

いつからだろうか、死神なんて呼ばれ始めたのは。

別に気に入ってる訳では無いのだが、依頼者が皆自分のことを口を揃えて死神と呼ぶので、自分でもそう名乗ることにしている。

それに、自分の本当の名前、歳、生まれた場所全てがもう自分には分からない。

親がどんな人だったかも、まるで誰かと脳を入れ替えたかのように、ごっそり抜けている。

「それではな」

「ああ」

俺としたことが、長いこと考え込んでしまった。

こんなに考えたことは、初めてかもしれない。

俺がやるべき事は、ただ殺すだけ。

もうあとには引き返せないし、引き返すつもりもない。

俺にとって、殺すことがすべてなのだから。

自分の頬を両手でパンッと喝を入れて歩き出す。

こうして依頼を終え、次の依頼者の元へと向かった。

「ここか」

依頼者との約束の場所は、とある廃ビルだった。

曇った空を見上げ、ため息を一つつくと、俺は汚く、落書きで荒れたビルの中へ入った。

「依頼人。いるか?依頼を受けた死神だ」

ビル内に響き渡った。

しかし、返事はない。

不審に思った俺は、あることに気がついた。

僅かだが、鉛の匂いが漂っていた。

それに気づいたと同時に銃声音が響き渡った。

もちろん、俺が反応しないわけがない。

こちら目掛けて迫ってきたライフル弾を軽くかわした。

そして、たまが打たれた先にいたのは、

「この俺の弾丸をよくかわしたな。流石死神、この程度の罠ではかわすことなど造作もないか」

「何者だ?」

「俺の名前は神威。お前と同じ殺し屋だ」

「聞いたことがある名前だな」

「これでも多少は名の知れた殺し屋なのだからな」

やつは神威という殺し屋。依頼の成功率は今のところ100%。

突如この業界にあらわれた新星と聞く。

「貴様を殺せと依頼されたのでな。悪いが貴様の時代はここで終わりだ」

「それはどうかな」

直後打たれたライフル弾を当然のようにかわし、俺は神威に接近する。

だが、

(なかなか近づけない………)

彼が身につけているのは、ライフルによる遠距離射撃技術だけではない。何よりこのビルの構造をよく理解し、それをうまくいかしている。

今いるこのビルのフロアには、柱など隠れる場所が少なく、ほぼ一直線上に道ができている。

つまり、デパートやショッピングモールのような構造だ。

その中で彼の射撃技術と連射能力を行使されているこの状況では、近づくことは不可能に等しい。

だが、それは最初だけであった。

(流石に慣れてきた)

その天才的センスと恵まれた視力で弾道を予測し、うまくかわしつつ、徐々に神威に接近する。

「あと15m」

「くっ…!」

歯を食いしばり、神威はライフルを投げ捨て、アサルトライフルへと切り替えた。

さらに連射能力をが増したが、焦った神威の射撃をかわすことなど、俺には目をつぶってもできることだった。

そして残り3mまで迫ったところで、俺もついに飛び出す。

この状況なら、近接攻撃でとどめを刺すのが最適だと考えたからだ。

だが、追い詰められているはずなのに、何故か神威の表情は、

「フッ…フッ…」

笑っていたのだ。

もう神威に勝ち目はない。幼稚園児が見ても分かるほどだ。

だが、神威は余裕がある表情を見せている。

(何かが来る…!!)

そう察した時にはもう遅かった。

神威はアサルトライフルを捨て、飛びかかろうとする俺に飛びついた。そのまま強く抱きしめた。

「そう言えば、言い忘れていた。これだけ言っておく。俺はお前が嫌いだ。どんな方法を使ってでも殺す。たとえ自分を犠牲にしてでもだ」

その時、俺はすべてを察した。

だが、もう遅かった。

思い切り俺にしがみついていた神威は、自分の体に巻き付けていた爆弾と共に大爆発し、その爆撃に俺も巻き込まれた。

そして骨ひとつ残らず、二人は砕け散った。

あとには、投げ捨てられた神威愛用の銃だけが残った。

こうして、二人の殺し屋としての人生は、誰の目に止まることもなく幕を閉じた。

だが、物語はここでおわりではない。

むしろ、ここからが本当の彼らの物語だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ