温泉旅行
第7話 温泉旅行
久しぶりに彼の仕事の休みが取れた。
何度も頼み込んでやっと有給が取れたと彼は言っていた。
いつぶりだろうか…二人で旅行をするのは。
この機会に私と彼は1泊2日の温泉旅行に出かけたのだった。
温泉旅館に着くまでの道中、車内で私は彼と、たわいもない話をたくさんした。
こんなに楽しいのは久しぶりだった。彼もいつもの辛そうな顔でなく、笑顔で楽しそうな表情だった。こんなに楽しいなら、いっそのこといつまでも温泉旅館につかなければいいのに。
そんなバカみたいなことを考えてしまうほどだった。
「わぁ!ここが私たちの泊まる旅館?」
「そうだよ」
旅館は伝統的な落ち着いた雰囲気のある素敵な温泉旅館だった。
周りには自然が多く、温泉も美容や健康によく効くと有名な旅館だ。
「ねぇ、部屋に着いたらさ、着替えの荷物とか置いて、ちょっと旅館の周りを散歩しない?」
「そうだな。まだ時間あるし。温泉入る前に軽く運動しておくか」
部屋に早々に着替えの荷物を置いて、私たちは散歩に出ることにした。
「ゆっくり二人で散歩するのも久しぶりだね…」
彼の手をぎゅっと繋いだ。
「そうだな」
近くに湯畑があり、湯気と硫黄の香りがする。
私たちの他にも観光客がちらほら歩いていた。
ゆっくりとした時間が流れる。こんなに落ち着いた時間を過ごしたのは今まであっただろうか。いやなかったかもしれない。
「ごめんな。いつも忙しくて…こうやって二人で過ごす時間、本当はもっと作らなきゃいけないんだろうけど…」
「いいのよ。お仕事が忙しいのは分かっているし」
手から次郎の熱が伝わってくる。あたたかい。
「でも、最近、次郎がなんだか疲れてるみたいだったから…」
次郎の手に少し力が入るのを感じた。
「…ごめん。心配かけて。でも俺は大丈夫だから」
「無理だけはしないでね。体が一番大事なんだから」
「うん。そうだな。ありがとう」
しばらく散歩して静かな時間を過ごし、私たちは旅館に戻った。
「ぷはぁ…」
ゆっくりと温泉に浸かった。全身を黄金に輝く湯が包んでいく。
流石、美容と健康によく効くと有名な温泉だ。全身の疲れが抜けていく…。
腕を触ってみる。いつもよりすべすべになっている気がした。
今頃、次郎もゆったりと温泉に浸かって疲れを癒していることだろう。
旅行に来ることができて、本当によかったなぁ。そう私は思った。
「温泉どうだったぁ~!」
部屋に戻ると次郎がすでに部屋に戻っていたので聞いてみた。
「おう。最高だった。芽衣は?」
「うん!こっちも最高だったよ!」
旅行に来る前より、次郎の顔色はすっかりよくなっていた。表情もやわらかく、何より楽しそうだった。
そのことが一番、私にとって嬉しかった。
その後は旅館の豪華な日本料理を食し、ゆったりとした時間を過ごしたあと、ふかふかのベッドに横たわり二人で深い眠りについた。
2日目はぶらぶらしながら温泉まんじゅうを食べた。今まで食べてきたおまんじゅうの中で一番おいしかった。近くにあるガラス工房でオリジナルグラスも作った。次郎は不器用だからすごく作るのに苦労していたけど、一生懸命作る姿はとても愛おしかった。私たちはその後も旅行を満喫し、帰りが遅くにならないよう、早めに帰路についた。
すごく楽しくて充実した2日間だった。また時間が作れたら二人で旅行にいきたいなとしみじみと思った。
第7話。温泉旅行回です(^^)
前回は険悪なムードだったけど、今回はあたかかく和やかな雰囲気で安心しました。
次回もこのハッピーな雰囲気が続くといいなぁ…
それから私も温泉旅行行きたい。温泉まんじゅう食べたいなぁ…。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。