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記憶の先に  作者: ひめここ
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指輪



第6話 指輪



また1年が経った。

彼との会話も一緒にいる時間もどんどん減っていった。

彼は最近仕事が更に忙しくなったらしく、帰りがいつも遅かった。

いつも疲れ切った顔で帰ってくる。どうにかして彼の疲れを癒してあげようと、お風呂に入浴剤を入れたり、料理も疲労回復によい食材を使った料理にしてみた。あとは手軽に使えるマッサージ機を買ってみたり…。

「たまには休みをとって、温泉旅行に二人でいこうよ」

という提案をしたりもした。でも彼からは

「…のんきだよなぁ…本当。こっちの気も知らないでさ」

そんな答えしか返ってこなかった。

「仕事が忙しくてイライラしているのかもしれない。ときにはそっと見守るのも妻の務めかな…」

そんなことを思いながら、彼との夫婦生活を過ごしていた。


そんな中、事件が起きた。

私はあることに気づいてしまった。

会社から帰ってきた彼の左手にあるはずの結婚指輪が、なかった。

私はすぐに彼に言った。

「ねぇ、次郎。結婚指輪…なんでしてないの?」

彼は自分の左手をみて、驚いた表情になる

「あ…」

「ねぇ!どういうことなの?」

「大丈夫。別に無くしたりしてないから」

「そういう問題じゃないでしょ!」

嫌な想像が頭をよぎった。焦りからか気づけば強い口調になっていた。

「うるっさいなぁ!!たかが指輪外してたくらいで!何なんだよ!」

ドンッ

彼に軽く肩を衝かれ、私はバランスを崩し尻もちをついた。驚いた。彼がこんなに感情的になって怒るのを初めてみた。

「…ごめんなさい」

とっさに謝ってしまった。私が悪かったのか分からないまま。

目の前の彼はとても悲しそうな顔をしていた。

「っ…ごめん。俺…そんなことするつもりじゃ…」

「大丈夫。ちょっとお尻が痛いけど…」

その言葉を聞き、すぐにどこかに電話をかける次郎。

「ちょっ…どこに電話してるの?」

「医者」

「な…尻もちついただけだよ!そんなお医者さん呼ぶなんてしなくても大丈夫だから!」

「本当に大丈夫なのか」

私が強く頷くと、彼は電話を切った。

「本当にごめん。妻に暴力振るうなんて…俺、最低だ」

「ううん。私こそ話も聞かずに次郎を責めるようなことしてごめん」


その後、彼が何故、指輪を外していたのかを聞いた。上司からの命令で指輪を外して取引先の人と会うように言われたらしい。どうもその取引先のおばさまが独身の若い男性が大好きなようで、そんなことになったらしい。その後、指輪をつけようとは思っていたが、仕事が忙しくてつける暇もなかったのだそうだ。

指輪はきちんと持っていたし、彼に嘘を言っている様子はなかったので、私は彼を信じることにした。

「心配させるようなことしてごめん。仕事も今度、休みが取れるか聞いてみるよ」

皮肉なことだが、その日、私たちはいつもよりお互いに思っていたことを話し合えた気がした。



挿絵(By みてみん)


第6話。ついに喧嘩しちゃいましたね…。

彼にもいろいろとあったのでしょう。

ということで、なんだか暗いというか、重い展開が続いておりますが、どうぞ最後までお付き合いをよろしくお願いします。

いつもお読みいただきありがとうございます。頑張ります。

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