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記憶の先に  作者: ひめここ
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三年後



第5話 三年後



あの幸せな結婚式から3年が過ぎた。

未だに記憶が戻らない。そしてもう戻らなくてもいいんじゃないか。

そんなことを思ってしまうことも度々あった。


「ねぇ、次郎…」

彼と夕食を食べながら私はある不安を口にした。

「いつになったらさ、私たちの赤ちゃんできるかな…」

「……。」

次郎は黙ったまま、ただ夕飯を口に運んでいた。

「なんで黙ってるの?…もしかして子ども嫌いなの。次郎」

「違う…別に子どもが嫌いなわけじゃない」

不愛想に答える次郎。

「なら何でそんなに不機嫌なのよ。それとも何か悪いことした?」

次郎は夕飯を食べる手を止め、顔をうつむかせた。

「なんも。悪いのはお前じゃない。俺だ」

「え…どういうこと…ねぇ…」

「俺はお前に嘘をついていることがある」



な…なに…?嘘って…


「あの事故で眠り続けていたお前が目覚めたとき、体には特に何の異常もないとそう話したよな」



聞きたくない…いやな予感しかしない…



「実はあれ嘘なんだ。本当は失ったものがある」

「やめて!聞きたくない!嫌!」

「君は…子どもを産めないんだ…」


彼の言葉を聞き、私はショックを受けた…。

「…産めない?子どもを?じゃ、私たちの赤ちゃんは?」


「…無理だ。君は…君の体はあの事故以来、生殖機能を完全に停止してしまっているそうだ。定期的に医者がきているのも、記憶を戻すための治療だけでなく、そのことについての治療や研究も含めてだった」

「…研究?何それ」

「これから先、お前と同じ症状になってしまった人のため、そして治療方法を生み出すために、いろんなデータをとっているそうだ」

あの目覚めた日から、確かに定期的に専門のお医者さまが私の治療に来ていた。特殊な機械がたくさんあったけど、記憶の治療ということで、一般の治療とは異なるのだろうと気にしていなかった。だが、今思うと治療時間はいつも長かったし、体調不良をおこしたときは一般の病院でなく、必ずその専門の医者を呼ぶようにと両親や次郎から厳しくいわれていた。

ただの風邪だったら、別に一般の医者に診せても別に問題はないはずだ。

「体調不良の原因もこれが関係してるの?」

「あぁ。おそらく。事故により何らかの変化がお前の体に起きた。今の一般的な医療だと治療が薬が効かない。だからいつも何かあれば専門の先生を呼んでいたんだ」

専門の医者でないと治せない体。しかも生殖機能が停止している。

そんな衝撃的な事実を2つも伝えられ、もうどうしたらいいか分からなかった。

「…そんな大事なこと…何で…」

次郎はうつむいたままだった。

「それに研究だって…今…今、治せなきゃ意味がないよ…」

沈黙が二人を包んだ。

「…今まで黙っていてごめん」

彼の暗く重たい声が乾いた室内に響いた。



挿絵(By みてみん)


第5話。幸せな結婚生活の中での衝撃の真実。

それはあまりに残酷で辛いものだった…。

芽衣と次郎の未来に光は訪れるのか…。

続きをご期待ください。

時をどんどん進めてまいりました。3年後の二人になります。急にシリアスな展開に突入です。

重く暗い展開を書くのは、あまり慣れていないので上手く表現できているのか不安ですが、これからも頑張って更新していこうと思います。応援よろしくお願いします。

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