結婚式
第4話 結婚式
私と彼の結婚式が始まる。
私は小さな花のモチーフがたくさんあしらわれた純白のドレスを着ていた。彼と一緒にドレスを選びに行ったときに、一番彼の反応がかわいくて、私のお気に入りになったドレスだ。
初めて彼にこのドレス姿を見せたとき、彼は耳まで顔を真っ赤にしながら目を少しそらし、
「…いや…その想像以上に…かわいい…」
その言葉と表情は今でも忘れられない。思い出すとにやけてしまいそうだ。
彼は大人っぽく見せたいとか言いながら、やっぱり黒だな!と決めた、黒いシンプルなタキシードを着ていた。
小さな教会で、私の両親と彼の友達が何人かに見守られ、神の祝福を受けた。
小規模で静かに粛々と行われた結婚式だったけど、あたたかくて和やかな素敵な式だった。
あたたかな拍手を受け、私は幸せをかみしめた。
「祝福をありがとうございます。一生の宝物になる思い出をありがとうございます。そして今まで育ててくれたお父さん、お母さん。本当に感謝しています。私は今、とても幸せです」
私は式に、結局、自分の同級生や友達を呼べなかった。
覚えていないが、昔から仲の良かった友達と会うことで、何か思い出すきっかけにもなるのではないか。それに、式には少しでも多くの人に来てほしい。そう思っていたのに。
会ったとしても、また記憶が戻らなかったら…。友達が自分のことを覚えていないことを知ったらどれほどがっかりするのだろうか。果たしてそんな状態の友達から私は祝福を受ける権利はあるのだろうか…。
そう悩んでいたあのとき…
「無理して呼ぶことないよ。俺の友達も何人か来てくれることになったし。…それとも本当はもしかして式、もっと盛大にたくさん人を呼んで挙げたいのか?」
「いやいやそんな!そういうことじゃなくて!それに小さな式にしようって言ったのは私だから!」
「じゃ、あれか。記憶を取り戻そうと思ってか?」
「うん…それに私の関係者が両親だけっていうのもなんだか申し訳ないかなぁって…」
「あのな。俺だって友達だけで両親は来られないんだからな。それにだ!俺は芽衣と最高の式を挙げたいって思ってんの。だから今は記憶取り戻さなきゃとかは一旦忘れて、楽に構えていていいから。俺、芽衣に負担とかかけたくないし」
真剣な表情で私を見つめる次郎。
「分かった。なんかごめんね。いつも…」
「そこは謝るところじゃないだろ。それに俺が芽衣のことを一番に思って行動するなんて当たり前のことだろ」
その言葉に私は少し救われた気がした。記憶を取り戻せないことをずっと負い目に感じ、いつもそのことを考えて生活してきた気がする。忘れてもいいんだといわれ、肩がなんだか軽くなった気がした。
「ありがとう。結婚式、絶対良い式にしようね」
結婚式を終えて、改めて彼と結婚できて、私は幸せ者だなぁとしみじみ感じた。
結婚式で【幸せになります。】ではなく、【幸せです】といったのは、まさに文字の通りで、現在進行形で私が幸せだったからだ。この幸せが長く続いてほしい。そう強く思った。
第4話です!いつもお読みいただきありがとうございます。
素敵な結婚式…憧れるなぁ!私もドレス着たい!
内容としては、今はまだ、大きな展開がないですが、これからどんどん面白くなっていく予定ですので最後までお付き合いをよろしくお願いします。