浄罪師
私は、浄罪師。
人間でもなく、鳥でも魚でも植物でもなんでもない。
私はとんでも無いことをしてしまった。
とある少年の魂を生かしてしまった。
どうしても処分することが出来なかったのだ。
傷ついた私を救ってくれた優しい少年…
その瞳は純粋そのものだった。
少年の純粋な魂に執着心を持ってしまった。
あんなことになって少年の魂が汚れていくのを私は見てられなかった。
だから人間なんかと交流してはいけなかったんだ。
そうすれば、汚れた魂を再利用しようと思わなかったはずだ。
私はその少年の魂を何年もかけて磨き上げた。時間をかければ汚れが無くなると思ったのだ。生まれ変わった少年の魂は監視の意味も含めて、私の支配下に置いた。
使徒として、生まれ変わらせたのだ。
最初のうちは、順調だった。殺人する兆候も見当たらず。濁りも一切見られなかった。
けれど、長い月日が流れ、少年の魂に異変が起きた。
任務中に相手の人間を殺そうとしてしまったのだ。一度暴走した少年の魂はおさまらず、私は渋々、少年を殺そうと決心した。
しかし、いざ少年を殺そうとすると、何故だか手が動かなかった。少年はそんな私に牙を向き、私の懐に刀を差し込んだ…裏切られたとでも思ったのだろうか。
私はそれを避けることくらい容易かった。けれど、不思議なことに少年の刀を避けることが出来なかった。体が思うように動かなかったのだ。
深手を負った私はその場に倒れ込んだ。少年は自分の服に着いた私の血痕をしばらく見つめた後、大声を上げた。私は少年の叫び声を聞きながら地面に蹲った。
しばらくすると、少年の声はぴたりと止み、心配に思った私は顔を上げた。
すると、目の前に少年の遺体が転がっていたのだ。
そして私の目の前に灯蛾が現れた。数年前に私を裏切った灯蛾…
彼は不気味に笑い、こう言った。
「お前の力は俺が頂く…」
と同時に、背中に激痛が走った。灯蛾が剣を私の背中に突き刺したようだ。激痛に飲む込まれた私は、そのまま意識を失い、闇に沈んで行った。
私の脳裏に最後に映ったのは、あの時の純粋な少年の姿であった。
(/・ω・)/




