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浄罪師 -present generation-  作者: 弓月斜
【壱章】殺人者が蔓延る世界
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浄罪師の使徒

「本題に入るのじゃが…」


それからしばらく経った後、鴉が話し始めた。


「なんだぁよ」


伊吹は、思い出を吹っ切ったのか、いつもの伊吹に戻っていた。


「実はのぉ…おぬしらが記憶を今まで受け継げずに生まれ変わっていたのには訳があるんじゃ」


「あの、それって…」


「実は、真雛様は封印されていて、ずばりそのせいでおぬしらに与えられた能力も巻き添えを食らったということなんじゃ」


真雛様…浄罪師の真雛様、先程から何度か耳にしていたが、実際、どんな人なのか蒼たちには分からなかった。そもそも人間なのかさえ分からない。


「その真雛って奴は今どこにいるんだぁよ?」


「真雛様はこの壁に埋まっているんじゃよ」


 そこの壁に埋まっている?それは紛れもなく、今蒼の目の前にある、人が埋まっている壁であった。この人が真雛様と呼ばれる浄罪師なのか…灰色の粘土のような皮膚、それはまるで、人間に泥パックをしたような姿のままで、体半分が壁からはみ出ていた。


そして、鴉は続ける。


「真雛様は今から約300年前にある者によって封印されたんじゃ。まぁ、今おぬしらの記憶には真雛様が封印された時以降の記憶しか無いようじゃが…」


 蒼と伊吹が先ほど思い出したのはその後の人生。つまり、浄罪師が封印された後の世界の記憶だけは思い出せたということである。


「ある者?」


「ある者とは、『ヘレティック』浄罪師の敵じゃ、彼らは異端者でな、ずっと真雛様を狙っておったんじゃよ」


「大体、敵とか言われてもさっぱりなんですけど?」


そんな伊吹の質問に鴉は、


「まずは浄罪師についての説明が先じゃったな、浄罪師の仕事は主に、『魂を洗うこと』じゃよ、要するに、魂を洗って輪廻転生の流れに贈るんじゃ。しかし、ただ単に死んだ者の魂を洗って罪を無にする訳ではない」


(魂を洗う…?)


蒼の頭の中はハテナでいっぱいになった。魂がどうしたって?その後も鴉は続ける。


「浄罪師は『共食い・同種の殺害以外の罪』を取り消すことができるのじゃ」


「人殺しの罪はどうなるんだ?」


「人殺しの罪は一生洗い流すことなどできんのだよ」


「じゃあ、その魂はどうすんだよ?」


鴉は一瞬戸惑ったような顔をしたが、真面目な表情になり、


「排気処分じゃ」


そう言って、羽を広げたかと思うと青ざめた伊吹の肩の上にとまった。


「はっ排気処分?」


「ああ、そうじゃよ。さすがの浄罪師もこればかりは無理なのじゃ」


そこで、蒼はあることに疑問を持った。魂が排気処分され続けたら…


「それじゃあ、魂はどんどん減っていっちゃうよね?」

鴉は蒼の質問を聞くなり、黒い羽をバサバサと広げて興奮し始めた。


「蒼、おぬし、いいところに気がついたのぉ!」


そう言うと、鴉は蒼の頭の上にいきなり飛んできてとまった。


「蒼の言うとおり、このままでは魂がどんどん減っていってしまうのじゃ、そこで、おぬしらには今日から昔のように浄罪師の助手ってものをしてもらいたい」


そこで、伊吹が床を叩いた。


「おいおい、助手って…そんなん無理だろ!大体何すんだよ」


「助手のやることは、ただ単に殺人事件を阻止することじゃ」


鴉は如何にも簡単そうに言ったが、殺人事件を阻止する?果たしてそんな事をどうやってするんだろうか、と蒼は疑問に思った。


「あの…俺たちには予知能力なんか無いし、無理ですよ」


「そこんとこは安心せい。吾輩にはいつどこで殺人が起こるか大体分かるんじゃ」


蒼と伊吹は口を半開きにした状態で、鴉の話を聞いていた。


「…はい?」


「まぁ、正確には分からんが、実は吾輩には魂の濁りが見えてな、それで殺人事件の起こる可能性まで分かるんじゃよ」


「でもよ、こんだけ犯罪が多い世の中の殺人の一つや二つを阻止したところで何が変わるんだよ」


伊吹が呆れ顔でそう言うと、鴉は下を向いて話し始めた。


「実は、真雛様が封印されてからというものの、魂を浄罪する者が居なくなってな…それで、人殺しをした者の魂も排気処分されることなく、世に出されるようになってしまったんじゃ、そのせいで、今の世の中のように殺人事件などが頻繁に起こるようになってしまった。一度汚れてしまった魂はな、いくら体が代わって生まれ変わっても最後には必ず殺人をまた犯すんじゃ、だからこのままだと、どんどん殺人や犯罪が増えていってしまう…そこでこれ以上魂の汚れを出さないために、まだ世の中に残っている清らかな魂の保存をする必要があるんじゃ、清らかな魂とは勿論、前世に一度も人殺しをしていない魂のことじゃ」


「それを俺たちに協力させるってわけか?」


「その通りじゃ、おぬし達には吾輩が予知した人物の監視をしてもらって、その人物が犯罪をしそうになったら、止めてもらう」


犯罪を止める…果たして自分なんかがそんなことをする事ができるのか、と蒼の頭の中は不安と恐怖でいっぱいになっていた。しかも蒼と伊吹がどんなに頑張ってもこの広い世界の一部の魂を救ったところでやはり、無意味なのではないか…

蒼は鴉に向かって、


「でも、俺たちがいくら頑張って魂が汚れるのを阻止したとしても、雀の涙だと思うんだけど」


すると、肩に乗っていた鴉は床に降りた。


「実は、浄罪師の助手はおぬしら以外にもいるんじゃ、この世に200人はいるはずじゃ」


「に…200人?」


二人は慌てて床に立っている鴉のもとに駆け寄った。


「そろそろ、彼ら達の記憶も戻るだろうな…なんだって真雛様の封印がそろそろ解ける時期じゃからの」


「おい、真雛ってやつは、復活するってことか?」


伊吹が床に顔を近づけた状態でそう言うと、


「そうじゃ、だからおぬしらの記憶も戻ったのだろう?」


「……、それっていつだよ」


「吾輩の予感によると、明日あたりじゃな」


「明日っ!?」


(/・ω・)/

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