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浄罪師 -present generation-  作者: 弓月斜
【伍章】光に向かう蛾と闇に向かう真実
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お前も同類なんだよ

「灯蛾、お前の相手は俺がする」


蒼は真雛と灯蛾の間に入り込むと、刀を灯蛾の首筋に充てがった。


「蒼…あなたは下がっていなさい」


そんな真雛の言葉を無視した蒼は話を続ける。


「真雛様を守るのが、俺たち使徒の務めだ」


そう言って、蒼は刀を振り切る。


灯蛾は瞬時に体をくねらせて、蒼の攻撃を交わす…


「どうした?この刀は人を斬れないんだぞ?なぜ避けるんだ!」


当たってもプラスティックほどの威力にしかならない刃から必死で逃げようとする灯蛾に疑問を持った蒼

は問いかける。


「それはそうだな。でもな…」


すると、灯蛾は剣を思いっきり振った。その途端、炎が蒼に襲いかかってくる。


慌てて炎を刀で振り切ると、蒼はひとまず、横へずれた。


「お前は俺に傷一つ付けられない…ほんの少しもだっ!」


灯蛾は続けて、蒼に向けて炎の塊を放つ。空中に放たれた炎は形を自由自在に変えて、蒼を飲み込むかの

ように取り囲む。


「くそ、前が見えない」


周囲を炎に包まれた蒼は、刀で振り切りながら抜け道を探す。


熱風が押し寄せる中、蒼の前に黒い影が現れた。


「深い闇に消え失せろ」


その声がした瞬間、蒼の太腿に激痛が走った。炎の壁から突き出してきたのは、灯蛾の持つ剣だった。


「……、」


勢い良く刺さって、直ぐに抜かれた後、蒼の太腿から大量の血が溢れ出した。


「やべ…」


周囲の壁が消えて、灯蛾の姿が現れると、彼は蒼を見て可笑しそうに笑っていた。


「恥ずかしいねぇ…俺に傷一つ付けられないくせに、もう終わりかい?」


「まだ…終わってなんか…」


蒼は痛みに堪ながら、刀を再び構えなおす。


「お前の敵はその者ではなく、我です」


そう言った真雛は、灯蛾に向けて閃光を放った。灯蛾は閃光を交わそうと、剣を盾にするが、全く意味を

なしていなかった。


「何っ!」


閃光を直に食らった灯蛾はその威力に吹き飛ばされる。


「傷が…」


真雛は蒼の元に近寄り、手を傷ついた太腿に乗せ、何やら呟き始めた。


すると、みるみる内に痛みが消え、パックリ開いていた傷口が完全に塞がったのだ。


「真雛様…」


「これで、大丈夫です」


そう言うと、真雛は灯蛾に向き直り両手を構えた。


「浄罪師の力さえ全て手に入ったら…」


灯蛾は剣を振り回しながら、真雛に向かって走り出す。


真雛は自らの周りにバリアを張って、灯蛾の侵入を防ぐ。バリアと剣の擦れる音が周囲に響き渡りだし

た。灯蛾は全力でバリアを壊そうとする。


お互い一歩も譲らない状態が続く…


時間と共に真雛のバリアにヒビが入っていき、今にも割れてしまいそうであった。


蒼は真雛の危険を感じ、灯蛾に向かって、刀を突き刺そうと走り出した。


灯蛾は、真雛に夢中で蒼の存在に気づいていない。


せめて時間稼ぎにでもなれば、と蒼は勢い良く灯蛾の背中に刀を突き立てる。


「あああああああ」


その刃は刺さるはず無かった。人間を刺せないはずだった。


けれど…


灯蛾の背中の中央に突き刺さった刀はズブズブと音を立てて深く刺さっていく。


蒼は初めて知るその感覚に手に入れていた力を弱める。


「お前。良くも俺の体に傷を…」


灯蛾は蒼を見るなり持っていた剣を振り切った。


慌てて、避けた蒼は血だらけの灯蛾を見て、絶句する。


刀が背中から腹部にかけて見事に串刺しになっている灯蛾はそれでも尚、動いていた。


「どうして、だって…人間は斬れないはずだろ」


すると灯蛾は、


「どうやら、俺は純粋な人間じゃなくなったようだな…半分悪魔にでもなったか」


物を斬った時よりは斬れ味が良くなかった。


それは、灯蛾にまだ少し人間の性質が残っているということだ。では、灯蛾を殺したら、それは殺人にな

るのだろうか…蒼の足はガクガクと震えた。

そんな蒼とは対称的に、自分に刺さっている刀を引き抜き、放り投げた灯蛾は少しも苦しそうな顔をせ

ず、蒼を見据えていた。


「やはり俺は悪魔になったみたいだ…」


すると、真雛は灯蛾の肩を掴んで思いっきりねじ伏せた。


「お前…一体、何人の人間を殺した?」


へらへら笑っている灯蛾に真雛は怒りをぶつける。


「さあな、数え切れねぇよ」


「この悪魔がっ!」


「お前だって、俺と同類じゃねぇか?あんな奴の為に世界を犠牲にしたんだからよ」


真雛は灯蛾の言葉を聞くと、一気に顔色を悪くして、


「黙りなさい!」


「鞍月蒼、お前のせいで世界はこうなったんだよ」


蒼は灯蛾の言っている意味が分からず、その場に立ち尽くす。


「…どういう意味だ」


「止めなさい!」


大声で叫ぶ真雛を差し置いて、灯蛾は続ける。


「この浄罪師はな、殺人を犯したお前の魂を捨てきれないで再利用したんだ」


誰かに胸をぐっと掴まれたような感覚が蒼を襲った。


「俺の魂…?」


「蒼、この者の言うことは全て嘘です!」


必死に取り繕う真雛に蒼は、


「真雛様…?俺は殺人者なのですか?」


蒼白とした表情で問いかけた。


「違います!」


「いいや、お前は人を殺した」


灯蛾は、真雛に押さえつけられながら、蒼を見上げる。


「俺は…俺…は」


「そして真雛は、浄罪師の使徒としてお前を迎え入れたんだよ」


真雛はその場に泣き崩れた。

「でも、一度殺人を犯したお前の魂は、再び過ちを繰り返そうとした」


「繰り返そうとした?」


「そうだ。それで真雛が…」


すると、真雛はよろよろと立ち上がって、蒼に歩み寄った。


「もういいです、灯蛾。蒼の記憶を全て戻します」


そう言って、真雛は蒼の額に手を置いた。


「これで全て思い出します…」


真雛が言葉を放った直後、額に熱いものが流れ込んできてあの時の記憶が映し出され…




蒼の過去とは。。。

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