寝坊
頬に爽やかな風が流れる。拝殿の中に差し込む日光が目に入って、目が覚めた。
そして辺りを見回す。既に伊吹の姿は無かった。
ところで今何時だ?蒼の頭の中に疑問が浮かび、急いで外へ出る。
既に日は昇りきっていて、空全体が眩しかった。二度寝の恐ろしさを痛感する蒼…
すると、後ろから柏木の声がした。
「蒼くん、おはよう」
「おはよう…」
「あのさ、今何時だと思う?」
先程までの笑顔とは打って変わって、真面目な顔つきで聞いてくる柏木…
「七時…くらいかな、多分」
後ずさりながら、控えめな声でそう言う蒼に、
「十一時ですけど!しかも、本日の任務一つ、既に終了していますけど?」
十一時?蒼はぼんやりする頭で考えていた。え?十一時だと?しかも任務が終了って…
「七時頃に黒羽が起こしに行ったのに、全然起きる気配がなくてね、急な任務だったからそのまま置いて行ったって訳よっ!」
その直後、左足に激痛が走る。柏木に回し蹴りを食らった蒼はそのまま、地面に蹲る。
「情けないわね…」
月日が流れるに連れて、柏木はどんどんサド化していった。まぁ、初めからそんな性格だということは知っていたが…黙っていれば美人なのに…勿体無い!
「で…今日の任務はどうだったの」
呑気に聞く蒼に呆れ顔の柏木は、
「今日は飛び降り自殺志願者の撤退だったわよ」
「飛び降り自殺志願者の撤退…」
いったい何人目だろうか、殺人の多いこの時代の中では自殺率も当然高いのだ。毎日の様に死にたがる人が出現する。何処からともなく、毎日、毎日…蒼は溜息をついた。
「今日の任務はまだまだあるわよ~黒羽が呼んでいるからこっち来て」
蒼の右手首を掴んだ柏木は、強引に神殿の方へと引っ張っていった。
(/・ω・)/




