その後
あれから何時間が経ったのだろうか、蒼は目蓋を少しずつ開けた。ぼやけている視界がやがてはっきりとして、ここが鴉ノ神社の拝殿前だということが分かった。
「蒼くん、やっと気がついたんだね」
体を起こして見ると、柏木が目の前にいた。
「俺…あの後…」
「気絶した蒼くんを伊吹くんがここまで運んできたんだよ。あの後、黒羽が私たちの鎖をほどいてくれてね」
「黒羽は?」
蒼は拝島を追っていった黒羽が気になった。黒羽は無事なのだろうか。
「吾輩がどうしたんじゃって?」
声と同時に上から黒羽が舞い降りてきた。予想外の展開に腰を抜かす蒼。
「くっ…黒羽!無事だったんだ!拝島は?あの子はどうなったんだ?」
「あの少女に関しては心配するな。少女の実の母親が見つかったんじゃよ。その母親と一緒に暮らすことになりそうじゃよ。実は帰って来た父親に聞いたら母親は水谷病院で入院しているらしくてな。あの父親…少女の実の母親が病気にかかったという理由で別れたそうじゃ。幸い、病気の方は一年程で治り今は退院しているそうじゃ。にしても…あの父親…最低な男だったわい…全て伊吹と柏木がその後のやり取りをしてくれた訳じゃが…目ん玉をくり抜いてやろうかと思ったわい」
すると、いきなり黒羽は下を向いて、
「それと、拝島は行方不明じゃ」
「拝島…」
蒼は信じたくなかった…拝島に人殺し経験があることを…
「あいつは何か勘違いしとる…」
え?と蒼は黒羽を見返す。勘違いしている?拝島が?
「どういう意味ですか?」
黒羽の黒い瞳を喰いるように見つめる蒼…そんな蒼に黒羽はきっぱりと言い放った。
「あいつは人殺しなんかしておらん」
次回、新章です。




