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浄罪師 -present generation-  作者: 弓月斜
【参章】とある少女の魂
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陰謀

 周囲がやたらと騒がしい。顔に何かが当たっている。いや、誰かにぶたれている気が…

眠い目を擦りながら、起き上がった蒼の顔面に黒羽の羽がぶち当たった。


「痛っ!」


「蒼、おぬし何やっとるんじゃ、まだ任務は終わっていないぞ」


「何がだよ…」

 

 黒羽は羽をバサバサと鳴らして、激しく暴れている。何の話かさっぱりの蒼は不機嫌そうな顔をした。いや、待てよ。昨日、あの男に…


「ここはっ!」


 勢い良く起き上がる蒼の顔面にさらに強く羽が顔にぶち当たる。殺す気ですか?ってか、生きているよ?正直、昨日殺されたかと思ったけど。

辺りを見渡してみると、ここが拝殿の前であることが判明した。生きている自分に確信を持った蒼は安堵の溜息を漏らす。


「はぁ…良かった」


 しかし、何も知らない黒羽は、


「何が、良かったんじゃ!おぬし、自分の任務をきちんと果たせぃ!」


 任務?もしかして、あの少女の件のことですか。蒼は落ち着いて考える。あの子はまだ完全に立ち直っていないのか?

 黒羽は地面に足をジタバタさせ、蒼の裾をくちばしで引っ張る。


「清水麻里の件じゃよ、このドアホが!今直ぐに、彼女の家に向かうんじゃ、でないと間に合わなくなるぞ」

間に合わなくなる。。。まだ、終わっていないのか?蒼の顔が青ざめる。


「なんだって!」


 蒼の大声で、周りで寝ていた伊吹と柏木も目を覚ました。


「蒼くん!気がついたんだね!」


「お前!やっと気がついたんか!一時はどうなるかと…」


そんな二人を差し押さえて、黒羽は言う。


「それより、任務じゃ!」


 黒羽に急かされて、三人はその後直ぐに少女の家に向かった。今回は、黒羽も一緒について来ることになった。三人の間抜けさに呆れたらしい。「吾輩がついて行かなければおぬしらは何もできないのか!」などと散々罵声を浴びせられ、挙げ句の果てに、髪を何本かむしり取られた三人は先程までの眠気もどっかにすっ飛んでいた。

 因みに昨日、蒼は鴉の足跡の男に気絶させられただけだった。そして、気を失っていた蒼を伊吹が担いで鴉ノ神社へ運んできたらしい。

あの男が母親を殺した犯人かと思うと、蒼の心の中は怒りでいっぱいになる。


(あの時、お前を殺しておけば良かった)

 

 蒼はあの男にそう思わせると心に誓った。


 そして走りながら、昨日別れた後の少女の笑顔を思い返す。あの少女の回復しきった表情。到底、これから事件が起こるようには全く思えない。

 あの後何が起きたのか…蒼は走りながら何度も考えていた。

 自殺じゃ無いよな…あの少女が殺人を犯すとも考え難い。


 3人は、誰一人として少女がまだ犯罪を起こす可能性があるとは思っていなかった。


少女は何をするつもりでしょうか。

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