沈む夕日、浮かぶ殺意
拝島は少女と共に、住宅街を歩いていく。辺りには夕日が差し込み、橙色の町並みとなっていた。少女は相変わらず無邪気に笑っている。そんな少女を横目で見つつ、拝島も微笑んだ。
しかし、その時の拝島の微笑みは、非常に不自然であった。
数十分後、ようやく少女の家の前に着いたが、その途端に、少女から笑顔が消えた。
「わざわざ送ってくれて、ありがとう…お兄ちゃん」
そう言うと、少女は玄関へ向かおうとし、拝島に背を向けた。
その時、拝島は少女の右腕を掴み、自分のもとへ手繰り寄せた。
「君、さっき見せてくれた痣、あれは母親がやったんだろう?」
少女の耳元でそう囁いた拝島は先程までの穏やかな彼とは打って変わって、別人の様になっていた。
少女は、恐怖と混乱で震えるばかりである。
「どうして分かるの…」
すると、拝島は驚く程恐ろしい顔で、
「僕…君の家族事情、全部知っているんだよね」
「え…」
「君、お母さんに虐待されていて、母親が憎いと思ったことはないのかい?」
少女は、かっと目を見開いて、
「私が全部いけないの…妹より劣等だから」
ふうん、と鼻で笑う拝島。
「全部自分が悪いと?」
「だって、勉強も運動もろくにできないし…きっとお母さんは私が娘だから…自分の娘だから…もっと完璧に
なって欲しいって思っているだけなのよ」
拝島は少女の言葉を聞くなり高笑いし始めた。
「痛い、痛すぎるよ…じゃあ、そのお母さんが本当の母親じゃなかったらどうするの」
「そんなことはないわ」
「じゃあ、これでもかい?」
そう言って、拝島はパーカーの裏ポケットから、一枚の用紙を取り出した。その用紙は、戸籍謄本であっ
た。
少女はそれを見ると、蒼白し、その場で崩れ落ちた。
「どうして、『母』の所に知らない人の名前が書いてあるの…?」
少女の母親は安美という名前だが、戸籍には、里子と記されていた。
そう、少女の母親は実の母親ではなかったのだ。
「君の母親はな、君が一歳の頃に家を出ていったんだよ、君は捨てられたんだ。それで、父親は今の君の母親と再婚した」
「嘘…そんなの嘘よ、じゃあ、私は今まで他人から殴られていたの」
「そうだ。他人から虐待されていたんだ」
「いやああああああああああああああああああ」
少女は我を失い、奇声を上げてながら地面に蹲った。拝島はゆっくりと腰を下ろすと、体を激しく痙攣させている少女の耳元に顔を近づけ、こう言った。
「なぁ?僕に良い考えがあるんだけど…聞いてくれるかい?」
すると、少女は涙でびしょ濡れになった顔を拝島に向けた。
拝島の正体は。。。。?




