崩れゆく「友情」ー忍び寄る「孤独」
学生証を機械に通した少女は、校門を抜けて、学内に着いた。
外の世界と完全に断絶された学校は、身の安全は保証せれているが、決して気分が良いものではなかった。この学校の半数以上の生徒が不快感を抱いていることだろう。
しかし、彼女はそんな学校が大好きだ。唯一、心から楽しいと思える場所。友達と笑ったり、はしゃいだり…そんな事が出来る学校は彼女にとって『生きがい』だった。
教室に行けば、笑顔で迎えてくれる友達、先生がいる。彼女は外の世界とは絶たれた学校の中でだけ幸せを見つけることができた。
なぜなら、外の世界は彼女にとっては地獄でしかないのだから…
少女はいつも通り、思いっきり前向きな気持ちで、教室のドアを開けた。
教室の中には、彼女を待っている友達がいる…はずだった。
しかし、いつも賑やかな教室とは打って変わり、ドアを開けた途端、冷気のような感覚に襲われた。教室にいる誰もが皆、無言であった。普段彼女といる友達も彼女と目も合わせようとしない。
「みんな…どうしちゃったの」
すると、一番仲が良かった親友の直美が近づいて来た。長くて清楚な髪、上品な顔立ち、高級感溢れる服
を身にまとった彼女は、公立高校にしては珍しい。しかし、そんな彼女の顔は怒りや憎しみといったもの
によって、台無しになっていた。
「あんたさ、私の財布と携帯取ったでしょ?」
言っている言葉の意味が分からなかった。少女には全く見覚えが無い…
「何言っているの?私がそんなことする訳ないじゃん」
直美のことだから、またつまらない冗談でも言っているのかと、考えた少女は、呆れ声で言った。
「とぼけないで、証拠はあるんだから」
今までに見たことも無い直美の鋭い顔つきに、少女は思わず怯んでしまった。
「そんなことしないよっ」
すると、直美の友達が携帯電話を手にとり、電話をかけ始めた。
その後間も無く、着信ベルが鳴り出し…
「ほらね」
信じられないことに、着信ベルは少女の机の中から鳴り出していた。
少女は慌てて机の中を覗き込む、すると、そこには直美の携帯と財布が入っていた。
「私、知らない…」
「惚けないでっ、初めから金が目的で私と友達になったんでしょ、あんた、貧乏人だから」
今まで培ってきた、『友情』というものが、今、簡単に崩れ去って行った。それはあまりに突然で、脆
かった。友情ってこんなものですか?私のことそんな風に思っていたんですか?少女の頭の中は真っ白に
なった。
「だか…ら、私、違う…」
直美は今にも泣き出しそうな少女の胸倉を掴んで、
「貧乏人のくせに裏切りやがって」
「酷いよ…」
せっかく自分の場所を見つけたのに…どうして私の居場所を奪うの…一体誰が…
周囲の生徒の顔を見渡すが、全く検討がつかない。
溢れ出してくる涙を止めることができず、少女の視界はどんどん滲んでいった。もはや生徒たちの顔を認
識することもできない…時間とともに上昇していく心拍数に耐えられなくなり、直美の手を振り払って、と
うとう教室を飛び出した。
(´・ω・`)