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浄罪師 -present generation-  作者: 弓月斜
【参章】とある少女の魂
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新任務始動

「ところで、俺の武器は?」


大惨事の後、真雛の持つ上下セットの服を貸してもらい、ようやく落ち着いた伊吹は真雛に武器に関して

聞き始めた。因みに真雛が貸した服は、相変わらす白と黒の2カラーでできたTシャツと半ズボンだっ

た。真雛の着ている袴と同じで、左が白で右が黒である。


 刀が蒼の物だということは、残った武器は…


「伊吹、お前はこの手袋です」


 真雛が伊吹に差し出したのは、黒色の指抜き手袋だった。素材は革で、腕まで少し掛かる程度の長さがあり、如何にも忍者が付けていそうなやつである。


「これで何をしろと?」


 ぶつぶつ言いながら伊吹は手袋を両手にはめた。


「この手袋をはめてこれから生活してもらうだけです」


「は?」


「その手袋さえはめていれば、お前はどんな事をしても殺生ができません」


 蒼の刀に続いて、伊吹の手袋にも不殺生の呪いが掛かっているようだ。これで真雛は安心して蒼たちに任務や護衛を頼めるということか、


「おい、俺は殺人なんかしないぜ?」


「念には念を、です」


 真雛はそう言うと伊吹に刃渡り十五センチ程の短剣を渡して、


「その手でこれを持って、私の喉に刺しなさい」


 突然意味不明なことを言いだした真雛に伊吹は困惑した。


「…本当に殺生は出来ないんだろうな」


 真雛は風に羽毛でできた長い髪を靡かせながら、にっこり笑って言った。


「もちろんです」


 しばらく考えた後、伊吹は真雛の言葉を信じ、短剣を受け取ると、間一髪入れずに刃先を真雛の喉元に突き刺した。


「なんで…」


 真雛の喉元から短剣を抜き取った伊吹は震える声を漏らした。刃先を見ると赤いものが少し付着してい

た。それは紛れもなく真雛の血液であった。真雛の首からは赤い線が一筋流れている。


「おい、真雛!大丈夫かよ」


 心配そうに尋ねる伊吹に真雛は優しく答えた。


「大丈夫です。傷はとても浅いので」


 よく考えてみると、不自然であった。と言うのも、伊吹は勢い良く短剣を刺したが、刃先が真雛の喉を

掻っ切ることはなく、僅かに刺さっただけなのだ。普通ならもっと深く刺さるはずである。


「言ったでしょう?その手袋をはめたままではどんな生物の命も奪えないと」


 喉元に手を当てながら、真雛は苦しそうな素振りも見せずに付け加えた。


「その短剣は特別に使用を許可します」


 成程、喉元を狙わせたのは、深く刺さらないようにする為だったのか。傷は付けられるが致命傷は与えられないという…蒼は伊吹の方が自分より戦闘能力は上だと思った。人を全く斬れない刀と致命傷以外は傷付けられる伊吹では、誰がどう考えても、伊吹の方が有利である。




こうして武器を与えられた蒼たちは、さっそく本日の任務を黒羽から言い渡された。


「では、今日の任務について話すかのう」


 相変わらず呑気に黒羽は話し始めた。


「今日から監視する人間の名は、清水麻里、歳は十三。南中学校に通う中学二年生じゃ」


 中学二年生の女の子が殺人…しかし、黒羽が言った事は90%の確率で当たるので、今はそれを信じるしか術がない。


「中学二年生…」


 伊吹の表情が突然曇った。恐らく、同じ年の妹の事を思っているのだろう。表向きは回復したように見える伊吹だが、心の中ではまだ、現実を整理出来ていないはずだ。


「十三歳の子が殺人なんて本当にするの?」


 疑いの目で見る柏木に黒羽は、


「まぁ、この二日間、彼女の様子を監視し続ければ、いずれ、そうなるじゃろう」


「二日間も監視するんですか?」


 二日間もかかる任務があるとは知らなかった蒼は、驚きを隠せない。


「彼女から感じられる魂の濁り具合を見ると、今日、明日のどちらかって感じじゃ」


 すると、真雛が蒼に近づいて来た。


「必ず彼女の魂を救ってあげなさい」


 真雛のアメジスト色の瞳は、蒼を真っ直ぐに見据えていた。人の魂をこれ以上汚れさせたくない真雛…この時、蒼はそんな彼女の期待に応えなくてはいけないと本気で思った。




黒羽と白羽は世界中の浄罪師の使徒に指示を出しに行く為、その後直ぐに、何処かへ行ってしまった。真

雛も浄罪の仕事がまだ残っていると、神殿へ帰ってしまった。




そんな訳で、蒼、伊吹、柏木は黒羽に説明された通り、その少女の家へ行くことになった。伊吹の手袋は

良いとして、蒼と柏木の持つ武器は、人目につくと良くないので、それぞれ黒布に包み、背中に縛り付け

た。蒼の刀は長さがあるため、遠くから見ると、釣り竿か弓を背負っている様にも見えた。








中学生の犯罪者とは。。。。(/・ω・)/

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