黒い影・鴉の足跡
とある倉庫の一室。部屋の中は薄暗く、光源は小さなランプのみ。そこには全部で九人の人間が一人を囲んで立っている。中心にいる人物も含め、全員漆黒のマントを身に纏っていた。
中心に立っている人間の年は二十代前後といった感じである。周囲の人間も若い者が多かった。その中でも一際背の高い者が、
「Does he not come? (彼はまだ来ないのか?)」
流暢な英語でそいつは中心に立つ者に聞いた。
「そろそろ来るだろう…」
「灯蛾様を待たせるなんて最低ね」
男の肩に手を置いていた短髪の女が怒り口調で漏らす。
すると、部屋の奥にあるドアが開いて、待っていた人物が入って来た。
「どうだ、成功したか?」
中心に立っている男がそいつに聞くと、
「申し訳ありません、僕のミスで、今回の件は失敗しました」
と言って床に正座し、お辞儀をし始めた。中心の男は周りの部下を蹴散らして、そいつの前に立つと、右足をあげてそいつの頭の上に乗せ、力を入れて押さえつけた。
「おい、新入り…お前、なんで失敗した?」
そいつは両目を瞑って、痛みに耐えながら、
「すっ、すみません…まさかアイツが浄罪師の使徒だったとは知らなくて…」
男は足先に力をさらに加えた。
「ふざけるなっ!お前は俺の言う通りに動けば良いんだ」
「申し訳ございません…」
男は、そいつの頭から足をようやく退けると、そいつの髪を鷲掴みにした。
「良いか?お前の魂を救ってやれるのは俺だけだ、俺に逆らったら、直ぐにお前を殺す。そしたらお前の魂は真雛によって処分されるんだぞ?それでも良いのか?」
「それだけは…おやめください…」
「だったら、浄罪師の使徒だった頃のことは忘れて、俺の言う通りにするんだ」
「はい…そうします」
「分かったなら、次の任務で成果を出せ」
男はそう言うと、乱暴にそいつの髪を手放し、近くにあるチェアーに腰掛けた。周囲の人間は床に正座して、深々と頭を下げた。
「良いか?俺たちは死ぬ前に、必ず真雛を倒さなければいけない…そして、汚れた魂をもっと増やす必要がある」
周囲の人間は一斉に返事をして、彼に忠誠を誓った。
男の右頬には鴉の足跡があった―
次から新章に突入です!(/・ω・)/(/・ω・)/
ヘレティックや汚れた魂を持つ者との戦いはまだまだ続きます。