とある娘から見た父
俺は好きという感情が分からない。
それは、私の父の言葉。
私の父は、比較的平凡な親であると思う。
いや、やっぱりどうだろう。
時間にルーズで、仕事を遅刻していく。
母が難病なので、父は私が小さな頃から家事をしてくれているが、同時に仕事人間でなかなか家に帰ってこない。
基本的には、「ああ。」という返事しかしない。
そのうえ、とてもわかりづらいツンデレである母の気持ちが25年経っても未だに理解できない。
いいところもある。
手先が器用で、頭が良くて、長距離を走るのが好き。
様々な学問に精通していて、好奇心も人一倍強い。
遅刻癖がなければ、人当たりも良い好中年だ。
そんな父が私は大好きで。
しかし、父は、なんの会話の時だったか、こう言った。
「俺は好きという感情が分からない。」
そんなにショックを受けた訳ではないけど、その言葉は私の心に残った。
では、母に対して、子供たちに対して、どのような気持ちを抱いているのだろう?
そう、疑問として、心の片隅にいつもあった。
ここで少し私の話を少しだけ。
私は高校時代、しかも高3の時に学校を転校しました。
原因は体調不良。
なぜか、学校に通えなくなってしまった。
仲の良い先生方や友達もいて、でも体はしんどくて動けなくて。
心療内科の先生いわく、体のエンジンが切れてしまったのでは、とのこと。
正直、人生のどん底でした。
心療内科からの帰りのある夜、私は何も言わず送り迎えをしてくれる父に思わず問いかけました。
「私はお父さんの娘でほんとに良かったの?」
父の答えは、
「君がパパの娘で良かった、大好きだよ。」
その言葉に私はただ涙が出て。
好きという感情が分からないと言った父から、
『君が大切だ。』
という気持ちが伝わってきて。
それから私はまた歩き出せたような気がします。
結局、父は今でも<好き>、という感情は会得できてないのかもしれません。
だけど、私の父は、家族が大切なことには変わらないようです。
ありがとう、お父さん。
何万回も言っているけど、もう一度心を込めて一筆いたしました。