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僕らにどうか青い鳥を!!!  作者: 汐音凛子
付き人① 秋野みすず編
10/15

青天の霹靂

今日は梅雨なのに珍しく快晴だ。こんな時間にぽつぽつ歩いているのは、1限が必修ばかりの法学部の新入生くらいだろう。



キャンパスへの近道である、大きな川沿いの土手を歩く。道端には、誰が育てているかも知れない花が咲いている。



あれはカタバミで、向こうのがクチナシ。芝桜はもう時期外れか・・・



以前はまったく気にしていなかった植物たちが、近頃やけに目につくようになった。


俺はそんな乙女な自分の一面に困惑して首をふる。




秋野さんのとこでインターンするようになって、今日で1週間が経とうとしている。初日は辛かった早起きも、最近は板についてきた。



気がついたことは、お客さんに配達がある朝晩以外はわりかし暇だということ。


二人きりで店番をしてくると、秋野さんはしょっちゅう花の名前当てクイズをしかけてくる。(それが原因に違いない。)



遠くから何か叫び声が聞こえる。

たくましく咲き誇っている花々から向こうのグラウンドへと目を移すと、何かスポーツの試合のようなものをしているのがわかった。



川縁のグラウンドの手前の芝生に、見覚えのある後ろ姿を発見してしまった。



ここからでも目に飛び込んでくるような濃いピンクのTシャツ。高めのツインテールをぴょこぴょこさせながら応援にいそしんでいる。



「おーい!!!はよーーー!!!今日航試合なのか?」



俺が近づきながら声をかけると、メガホンを口につけて腰をかがんだポーズのまま、愛理がくるりとこちらを振り返る。



「ウソーーー⁉ゆっくーーーん!!!なんで今日はそんな早起きなの⁉」



メガホンのままデカイ声を出すから俺は思わず怯んだ。試合中の選手たちまでこちらを気にしているではないか・・・

恥ずかし過ぎる。



「ちょっと新しくバイト始めて。朝早いから、1日が長くて・・・二度寝できねぇから、大学の図書館通ってんだ。」



また叫ばれないよう、メガホンを両手で塞ぐと俺は応えた。



「うひょ~!相変わらず真面目さんだねぇ!!!感心感心。」



人をおちょくったようなリアクションの小動物は、すぐに向きを変えて応援を再開した。


「わったーーーん!!!き・あ・い!!入れて!!!ファイオー!!!」



航のラグビーの試合にはいつでもかけつける愛理だが、今日はまた一段と気合いが入っているように見える。(普段はさすがにメガホンは不使用である)



「今日はなんか大事な試合なの?」



仕方なく隣に立って俺も航を探す。がたいの良い選手ばかりで、なかなか見つけられない。



「そう!!!今日は選手の引き抜きがある、伝統的な試合なんだよ!!!ほら、あれ見てよ。社会人スポーツ選手の推薦で来てる会社の監督だよ。」



傾斜のある芝生に立ったまま、望遠鏡を覗くおじさん達の集団がいる。ラグビーの強い会社っていうと、結構そうそうたる企業の関係者、ってことか。



愛理の指差す方に注目していると、けたたましいホイッスルの音が鳴り響く。





二人同時にグラウンドに向き直ると、人の群れの中に誰かが倒れこんでいるのが見える。


審判は凄まじい叫び声で、担架を持ってくるよう指示している。


両チームの監督・応援に精を出していた周りの控え選手たちも、皆一様に静まり返り、不安そうに顔をしかめている。




俺はラグビーについてあまり詳しい方ではないので、とりあえず愛理の顔を見つめる。



「うそ・・・倒れたの、わったんだ。」



青白い顔のまま、薄い唇を噛みながら愛理は呆然とそう呟いた。



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